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本陣殺人事件--止むを得ざる密室(6)

时间: 2023-11-22    进入日语论坛
核心提示:「恐ろしいことですね。それが計画に計画されたものだけにいっそう恐ろしい気がしますね。賢蔵氏はあの水車が回転しはじめるまで
(单词翻译:双击或拖选)

「恐ろしいことですね。それが計画に計画されたものだけにいっそう恐ろしい気がします

ね。賢蔵氏はあの水車が回転しはじめるまで、じっと寝床のなかで待っていたんです。そ

してその音がきこえはじめた瞬間むっくり起き上がると、便所へいくふりをして、押し入

れのなかから抜き身をさげて来る。克子さんをズタズタに斬り殺す。琴爪をはめて琴をひ

く、屛風に血にそまった琴爪の跡をのこす。この琴爪の跡をのこしたということは、私に

もちょっと、愉快なんですよ。それは賢蔵氏自身の指紋を、かくすためというよりも、む

しろ、あの人の、几帳面さを現わしているんじゃないかと思う。すでにして琴糸と琴柱を

使った。あに琴爪を使わざるべけんや、そういう気持ちじゃなかったでしょうかねえ。さ

て、それから琴爪を手洗い場へ捨て、そのついでに、欄間のところまで引いてあった琴糸

をひっぱって来て、そこでいま私が実験してお眼にかけたような方法で自殺した。そして

首尾よくここに奇怪な本陣殺人事件が出来上がったわけですよ」

 一同はシーンと黙りこんでいた。寒さが急に身にしみて私は思わず身み顫ぶるいした。

するとほかの人たちも、それが感染したのか、いちように肩をすぼめて体を顫わせた。だ

がその時、隆二さんがふとこんなことをいったのである。

「だが、兄はなぜ雨戸をあけておかなかったのだろう。そとから犯人が入ったと思わせる

には、その方がしぜんだったろうに」

 隆二さんのその呟きをきいたとたんである。金田一君が実に、実に猛烈にもじゃもじゃ

頭をかきまわしたのは。──そしてまた恐ろしく吃りながら、こんなことをいったのであ

る。

「そ、そ、そ、それですよ。わ、わ、わ、私がいちばんこの事件に興味をかんじているの

……」

 それからあわてて冷え切った茶をのむと、いくらか落ち着いた口調になり、

「賢蔵さんもむろん、そのつもりだったんですよ。ところが思いがけない事態が起こっ

て、賢蔵氏の計画が無茶苦茶になってしまったんです。思いがけない事態というのは、ほ

かでもない、あの雪ですよ。ねえ、おわかりですか、あの人は、玄関につけたと同じ靴跡

を、西側の庭にもつけておいたんです。そこから犯人が逃げたと思わせるように。ところ

が雪がすっかりその靴跡を埋めてしまった。では、改めて靴跡をつけようか。いや、それ

は不可能です。なぜって、あのボロ靴は御用ずみとばかりに、炭焼きがまの煙突のなかへ

突っ込んでしまったのですからね。すでにして雪の上に足跡なし、雨戸をあけておいたと

ころで、それなんの意味をなさんや。ええいっ、いっそ密室の殺人にしてしまえ──と、

思ったかどうかわかりませんが、それが、雨戸をあけておかなかった原因だろうと思うの

です。つまりこれは犯人が計画した密室の殺人ではなく、犯人にとってはまことに不本意

ながら、密室の殺人にせざるを得なかった事件なのです」

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