日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 江户川乱步 » 镜地狱 » 正文

镜地狱(10)

时间: 2021-10-08    进入日语论坛
核心提示: 技師は大分以前から、三分ほどの厚みを持った、直径四尺ほどの、中空のガラス玉を作ることを命じられ、秘密のうちに作業を急い
(单词翻译:双击或拖选)

 技師は大分以前から、三分ほどの厚みを持った、直径四尺ほどの、中空のガラス玉を作ることを命じられ、秘密のうちに作業を急いで、それがゆうべ遅くやっとできあがったのでした。技師たちはもちろんその用途を知るべくもありませんが、玉の外側に水銀を塗って、その内側を一面の鏡にすること、内部には数カ所に強い光の小電灯を装置し、玉の一カ所に人の出入りできるほどの(とびら)を設けること、というような不思議な命令に従って、その通りのものを作ったのです。できあがると、夜中にそれを実験室に運び、小電灯のコードには室内灯の線を連結して、それを主人に引き渡したまま帰宅したのだと申します。それ以上のことは、技師にはまるでわからないのでした。
 私は技師を帰し、狂人は召使いたちに看護を頼んでおいて、その辺に散乱した不思議なガラス玉の破片を眺めながら、どうかして、この異様な出来事の(なぞ)を解こうと(もだ)えました。長いあいだ、ガラス玉との(にら)めっこでした。が、やがて、ふと気づいたのは、彼は、彼の智力の及ぶ限りの鏡装置を試みつくし、楽しみつくして、最後に、このガラス玉を考案したのではあるまいか。そして、自からその中にはいって、そこに映るであろう不思議な影像を、眺めようと試みたのではあるまいかということでした。
 が、彼が何故(なぜ)発狂しなければならなかったか。いや、それよりも、彼はガラス玉の内部で何を見たか。一体全体、何を見たのか。そこまで考えた私は、その刹那(せつな)脊髄(せきずい)の中心を、氷の棒で貫かれた感じで、その、世の常ならぬ恐怖のために、心の臓まで冷たくなるのを覚えました。彼はガラス玉の中にはいって、ギラギラした小電灯の光で、彼自身の影像をひと目見るなり、発狂したのか、それともまた、玉の中を逃げ出そうとして、誤まって扉の取手を折り、出るに出られず、狭い球体の中で死の苦しみをもがきながら、ついに発狂したのか、そのいずれかではなかったでしょうか。では、何物がそれほどまでに彼を恐怖せしめたのか。
 それは、到底人間の想像を許さぬところです。球体の鏡の中心にはいった人が、かつて一人だってこの世にあったでしょうか。その球壁に、どのような影が映るものか、物理学者とて、これを算出することは不可能でありましょう。それは、ひょっとしたら、われわれには、夢想することも許されぬ、恐怖と戦慄(せんりつ)人外境(にんがいきょう)ではなかったのでしょうか。世にも恐るべき悪魔の世界ではなかったのでしょうか。そこには彼の姿が彼としては映らないで、もっと別のもの、それがどんな形相を示したかは想像のほかですけれども、ともかく、人間を発狂させないではおかぬほどの、あるものが、彼の限界、彼の宇宙を覆いつくして映し出されたのではありますまいか。
 ただ、われわれにかろうじてできることは、球体の一部であるところの、凹面鏡の恐怖を、球体にまで延長してみるほかにはありません。あなた方は定めし、凹面鏡の恐怖なれば、御存じでありましょう。あの自分自身を顕微鏡にかけて覗いて見るような、悪夢の世界、球体の鏡はその凹面鏡が果てしもなく連なって、われわれの全身を包むのと同じわけなのです。それだけでも、単なる凹面鏡の恐怖の幾層倍、幾十層倍に当たります。そのように想像したばかりで、われわれはもう身の毛もよだつではありませんか。それは凹面鏡によって囲まれた小宇宙なのです。われわれのこの世界ではありません。もっと別の、おそらく狂人の国に違いないのです。
 私の不幸な友だちは、そうして、彼のレンズ狂、鏡気ちがいの最端をきわめようとして、きわめてはならぬところを極めようとして、神の怒りにふれたのか、悪魔の誘いに敗れたのか、遂に彼自身を(ほろ)ぼさねばならなかったのでありましょう。
 彼はその後、狂ったままこの世を去ってしまいましたので、事の真相を確かむべきよすがとてもありませんが、でも、少なくとも私だけは、彼は鏡の玉の内部を冒したばっかりに、ついにその身を亡ぼしたのだという想像を、今に至るまでも捨て兼ねているのであります。

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: