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回復

时间: 2017-12-30    进入日语论坛
核心提示: 意識がもどってきた。しかし、いまどこにいるのか、すぐにはわからなかった。なにも見えなかった。おれの目がなにかでおおわれ
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 意識がもどってきた。しかし、いまどこにいるのか、すぐにはわからなかった。なにも見えなかった。おれの目がなにかでおおわれているからだった。
 ここはどこなのだろう。そう考えはじめようとしたが、だめだった。からだじゅうの痛みが思考をさまたげたのだ。からだの内部も痛かった。外側も痛かった。身もだえをしようとしたが、それもできなかった。おれは急に不安になり、うめき声をあげた。
「うう……」
 声はちゃんと出てくれた。だれかこれを聞きつけてくれ。心からそう祈った。しばらくして返事があった。
「意識を回復なさったようですわね」
 若い女の声だった。親切な口調。おれはほっとし、すがりつくように言った。
「ここはどこです。あなたは……」
「病院ですわ。あたしは看護婦。あなたは入院なさっておいでなのです」
 呼吸をすると、消毒薬のにおいがかすかに感じられた。あたりは静かで、病室にいるらしいと想像できた。
「そうだったのか。しかし、なぜ入院するようなことに……」
「交通事故ですわ。車を運転なさっていて、道ばたの電柱に衝突なさった。車は火災をおこし、あなたは全身にひどいやけど。骨折もあります。通りかかった人がかけつけて救出してくれたのです。それがもう少しおそかったら、助からなかったかもしれません」
「ずっと気を失っていたんですね」
「ここへ入院後も、何度も危篤におちいりました。しかし、あらゆる最新の治療をほどこしたので、なんとかそれを切抜けたというわけです。あなたは本当に運がいい」
「そうでしたか。ありがとう。助かってよかった。死んではすべておしまいですからね。しかし、この目はどうなんです。見えるようになるんでしょうか」
「ご心配なく、目の包帯は二、三日中にとれます。そのつぎには火傷のための包帯をとることになります。それから骨折と内臓のぐあいを調べ、問題がなければ退院です。ふたたび健康体にもどれるというわけですわ」
「よかった……」
 それからおれは痛みを訴えた。看護婦は鎮痛剤を包帯のあいだから口に入れてくれた。痛みはやわらいでいった。
 事情がわかり、おれは安心し、ひとりで回復にひたることができた。しだいに思い出してきた。あの時に事故を起したんだな。おれは軽く口笛を吹きながら運転していた。すべてがうまく片づいたからだ。心のなかに長いあいだただよっていた黒い雲が、突風によって吹飛んでしまったような気分。雲の消えたあとには、圭子の美しい顔があった。おれに笑いかけている、うれしさにみちた表情の顔が……。
 
 圭子は若く美しく、おとなしい性格の女。生活に困らず、上品で、おれを心から愛してくれている。おれもまた若く、自分で言うのもなんだが外見はスマートなほうで、圭子を心から愛している。
 だが、問題がないわけではなかった。ただひとつ、それも、どうにもならないやっかいな点があった。おれたちは、どんなにそれをのろったことか。
 圭子には亭主があった。それがいやな人物だったのだ。二人の愛の障害だからでもあるが、そうでなく、街ですれちがうだけだとしても、おれにとって胸がむかつくタイプだった。
 五十歳ぐらいの年齢だった。精力的に金をかせぎ、金銭の万能を信じている。背は低くふとっていた。唇が厚く、毛虫のような|眉《まゆ》で、ほおに傷あとがあった。目尻のしわもいやらしく、頭に描いただけでぞっとする顔だ。不潔なにおいさえ立ちのぼってくるよう。
 圭子もやはりそう感じていた。おれとのあいびきの時に、ふるえながら言うのだった。
「毎日がいやでいやでたまらないの。あの人にはお金の世話になり、その義理で結婚しちゃったんだけど。どうしてもなれることができないわ。あたしの生活は、希望のない地獄そのものなのよ」
「そうだろうなあ。あいつ、いいかげんで死んでくれればいいんだが」
「あのようすじゃあ、当分は死なないわよ。あたしのほうが耐えられなくなって、先に死にそう。ねえ、あたしといっしょに逃げてよ。どこか遠くの土地へ行って、二人だけの生活をしましょうよ」
「もちろん、そうしたいよ。だが、うまく逃げきれるか。ご亭主はきみにご執心だ。金にあかせて人をやとい、さがしにかかるだろう。たちまち見つけられてしまう」
「じゃあ、どうすればいいのよ……」
 圭子はいつも涙声で言い、おれはいつもここでだまってしまう。手のつけようのないことなのだ。彼女の心はおれのものとはいえ、それ以上に少しも進展しない。圭子は泣いて訴え、おれは自分のふがいなさをじっとかみしめる。このくりかえしだった。
 彼女とおれとのことは、亭主もいくらか感づいているらしい。亭主はそのうっぷんを圭子ではらし、いやがらせを言ったりいじめたりする。彼女はなぐさめを求めて、おれに泣きつく。悪循環は回転しながら、どうしようもなく進みつづけた。
 そして、ある夜。
 おれが眠りにつこうとしていた時、電話が鳴った。圭子の興奮した声。
「ねえ、大変なことになっちゃったの」
 激しい息づかいまで伝わってくる。
「どうしたんだ。わけを話してごらん」
「亭主が酔って帰ってきて、あたしをさんざんいじめたの。ずっとがまんしていたんだけど、とうとう、かっとなって突きとばしちゃったのよ。そしたら……」
「どうなったんだ」
「ねえ、早く来てちょうだい。あたしの家へ……」
 彼女はそれをくりかえすばかり。おれは車を運転し、圭子の家へ急いだ。小さいがしゃれた住宅。ベルを押すと、青ざめた顔の圭子が、|呆《ぼう》|然《ぜん》とおれを迎えた。おれは聞く。
「どうなったんです」
「ああなっちゃったの」
 と彼女はとなりの室を顔をそむけながら指さした。そこには亭主が倒れている。だらしなく床にのび、眠っているブタを思わせた。
「死んでいるのか」
 と聞くと、圭子はわからないと首をふった。調べるのがこわいのだろう。おれは身をかがめて、手をふれてみた。いい気持ちではなかった。つめたくはなく、手首をにぎると脈がかすかにあった。
「まだ死んでいない。倒れた時に頭を打って気を失っているのだろう。すぐ医者を呼べば助かるかもしれない」
「いやよ、いや……」
 圭子は激しく叫んで泣き、身をふるわせた。亭主が息をふきかえせば、事態はさらにひどくなるにきまっている。いじめられかたは一段と高まり、終りのない不幸の日々がまたはじまるのだ。それを考えると絶望で半狂乱になるのもむりはなかった。
 彼女のためになにかしなければならない。その思いにかられ、おれは夢中でやってしまった。亭主の顔にやわらかい枕を押しつけ、力をこめていた。しばらくしてまた脈をみると、こんどはとまっていた。
「死んでしまった」
 おれは言った。恐怖も反省もなく、奇妙なあっけなさのような感じだけがあった。
「やっと、あたし自由になれたわ」
 彼女はほっとした声で言い、うれしそうだった。だが、このままではすまない。おれは考えながら言った。
「このままにしておくわけにはいかないよ。きみが疑われる。きみが頭をなぐりつけて殺したと思われてしまう。事故ということになるにしても、世間はきみを犯罪者あつかいするかもしれない」
 彼女も冷静になり、あとしまつがやっかいなのに気づいた。あわてた声で言う。
「どうしたらいいの。逃げようかしら」
「そんなことしたら、なお疑われる。といって、ぼくとの言い争いのあげくこうなったことにもできない。さらに嫌疑が濃くなる」
「ねえ、どうしたらいいの。あたし、どうなるの。なんとか考えてよ。あたしはもう、あなたのものなのよ」
 圭子は、たよりはあなた一人という目つきでおれを見あげた。おれにとって絶対的な命令だった。また、おれだって彼女のためにできるだけのことをするつもりだった。
「死体をどこか、べつなところへ運んでしまおうか。そうすれば、変なうわさもたたず、ただの事故となってしまうだろう」
「いい考えだわ。ほんとうにいい考えよ、そうしちゃってよ」
 彼女はおれへの尊敬の念のこもった口調で言った。おれもそう悪い考えではないと思った。あたりには血も流れていず、ここで死んだことを示すものはないのだ。
 二人で死体をおれの車に運んだ。夜はふけていて、だれにも見られなかった。圭子はまたふるえ、心細い声で言った。
「すぐ戻ってきてね。あたし心配なの」
「いや、それはいけない。ほとぼりがさめるまで、すこし会うのをがまんしよう。他人の目というものもある。ぶじに片づいたそのあとは、二人でずっといっしょにいられるんだ。きみはだれに聞かれても、なにも知らないと言いはらなくちゃだめだよ。しっかりたのむよ」
「ええ」
 おれたちはかたく手をにぎりあった。愛の交流電気が強く流れた。二人にとっての長かった悪夢。それがまもなく終るのだ。死体を片づける作業など、気持ちのいいことではない。だが、悪夢の幕切れと思えば、なんとかそれもがまんできた。
 おれは車を走らせた。時どき、そばの死体がなにか言うのではないかと思い、背すじにつめたいものを感じたりした。
 人かげのないところで車をとめ、おれは死体をそとへ運び出した。なにも遠くへ捨てることはないのだ。林の奥などへかくしたら、かえって問題がこじれてしまう。酔って歩いていてころんで頭をうった、乱暴なやつと争ってなぐられた。そんなふうに、さりげなくおいておけばいいのだ。おれは念のために脈をもう一回みた。それはなく、つめたくなりかけていた。
 また車を走らせる。すんだという安心感とともに、ちょっと恐怖がこみあげてきた。早く立去ろうと、車のスピードをあげた。
 自分に言いきかせる。これでいいのだ。二人のあいだの障害物はこれでなくなったのだ。これからは圭子とだれに気がねすることもなく会え、話し、愛しあえるのだ。
 楽しさが胸にわきあがってきた。おれは口笛を吹き、またスピードをあげた。なにもかも軽くなったようで……。
 
 そこで事故をおこしたのだ。おれは意識を失い、いま気がついたのだ。死んだ亭主ののろいが、おれを事故にみちびいたのだろうか。おれは病室のベッドの上で、そんなことをふと思った。
 だが、いずれにせよ、おれは生命をとりとめたのだ。のろいがあったにしろ、それをはねかえすことができた。圭子との愛の力のほうが強かったのだろう。
 すぐにも彼女と会いたかった。しかし、急ぐべきではない。約束したことだし、彼女も取調べやなにかで疲れているだろう。もうすこしたってからのほうがいい。また、おれもいまはからだをなおすのが第一なのだ。
 数日がたち、おれの回復は順調だった。看護婦が言っていたとおり、目の包帯が取除かれた。
 しかし、ほかの部分は全身包帯姿。足や手はギプスでかためられ、からだの動かしようがなかった。おれはテレビをながめることでかすかに心をなぐさめ、そうでない時は、目をつぶって圭子のことを思ってすごした。
 骨折の痛みも、皮膚の痛みもやわらいでいった。鎮痛剤の量もへっていった。担当の医師もなおりが早いと言ってくれた。事実、体力の回復してゆくのが自分でもよくわかった。
 それとともに、圭子に会いたいとの思いがつのってきた。押えきれないほどになった。入院してから日数もかなりたった。もう会ってもいいんじゃないかな。おれは圭子に電話してくれるよう、看護婦にたのんだ。
 圭子はすぐにやってきてくれた。病室で二人きりになると、彼女は熱っぽく言った。
「あなたに早く会いたいと、毎日そればかり思いつづけだったわ。でも、おけがなさったなんて、知らなかったわ。知ってたら、もっと早くおみまいに……」
「いいんだよ。それより、きみのほうはどうだった。怪しまれたりしなかったかい」
「大丈夫よ。敵が多い人だったから、それが原因じゃないかとされているようよ。保険金はおりたし、財産の相続もすんだわ。あとやるべきことは、あなたとの生活だけ……」
「事件が片づいたら、きみはぼくのことを忘れちゃうんじゃないかと、時どき不安になったよ」
「そんなこと、あるわけないじゃないの」
 圭子はむきになった。たしかに、あるわけはないのだ。二人のあいだには共犯という秘密があり、それが結びつきをさらに強くしていた。
「どんなに会いたかったことか」
「あたしもあなたの声を早く聞きたくて」
 彼女はおれの手をにぎり、顔を近づけた。しかし、そのあいだには包帯があり、肌のふれあいをさまたげていた。圭子はそれをもどかしがり、おれもまた同様だった。
 その時、医師が看護婦を連れて入ってきて言った。
「包帯をとってもいい時期になりました。さっそくとりかかりましょう。おみまいのかたは、むこうの室でお待ちになって下さい」
 そう告げられたが、圭子は強く主張した。
「ここにいてもいいでしょう。なおった姿を早く見たいの」
 医師は承知し、おれの頭部を巻いた包帯にハサミを入れた。それは少しずつはずされていった。
 圭子は愛と期待にみちた目でおれを見つめていた。その表情は好ましいもので、おれもまたうれしかった。
 しかし、やがて圭子は不審な表情になり、おれの包帯がさらにはずされると、その目は大きく見開かれ、焦点のさだまらないものとなった。鋭い悲鳴を彼女はあげた。
「まさか、ここで使われたなんて……」
 わけのわからない言葉であり、そのわめき声はとめどなくつづいた。狂ったようだった。病院の人が彼女をかかえて連れていった。
 おれは不安になって医師に聞く。
「どうしたんです。ぼくの治療が失敗だったんじゃないんですか」
「とんでもありません。うまくいきました。みごとな成功というべきですよ」
「じゃあ、早く鏡をのぞかせて下さい」
 看護婦が鏡をおれの目の前に持ってきた。だが、そこに自分はうつっていなかった。そこにいるのは、厚い唇の、毛虫のような眉の、ほおに傷のあるいやらしい五十男の顔。おれが車で運び、道ばたに捨てたあの男の顔があった。
 まったく信じられなかった。夢か幻覚だろうと思った。そうにきまっているさ。むりをして、おれは笑ってみた。すると、鏡のなかの、あの死んだはずの男の顔も、こちらにむかって笑いかけて……。
 おれは絶叫し、あばれたにちがいない。まわりのようすがわかってきたのは、鎮静剤の注射がききはじめてから。医師がこんなことを言っていた。
「あなたは大やけどをし、顔がめちゃめちゃになったのです。われわれは顔の皮膚の移植にとりかかったのです。ちょうどよく、その時に顔の皮膚の供給がありました。道ばたで死んでいた男で、未亡人に連絡したらすぐ承知してくれました……」
 鎮静剤のききめのなかで、おれはぼんやりと考えた。圭子もまさかこう使われるとは思いもしなかったのだろうな。医師は移植手術の成功を誇りながら、まだしゃべっている。
「……この移植をやらなかったら、あなたの顔は手のほどこしようのない、ひどいものとなったでしょう。あなたは運がいい。もちろん、うまれつきの自分の顔でなくなったのですから、いい気分ではないでしょう。しかし、これなら人なかへ出ても、いやなみじめな思いをしなくてもすむのです。この運命になれるようにつとめなさい。そして、人生を楽しむようにするのです。そのうちにはなれて、生きていてよかったと思うようになりますよ……」
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