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四 前代未聞の大事件(4)_失われた世界(失落的世界)_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:「さきほどの絵と同じ場所のようですね」「おおせの通りだよ」教授は答えた。「わしは画家が野営した跡を発見した。さて、今度は
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「さきほどの絵と同じ場所のようですね」
「おおせの通りだよ」教授は答えた。「わしは画家が野営した跡を発見した。さて、今度はこれだが」 それは同じ場所をずっと近くから撮とったものだったが、画面はやはりひどく不鮮明だった。それでも断崖から孤立した、てっぺんに木の生えている例のピラミッド状の岩がはっきり見分けられた。
「これはもう疑う余地がありません」
「よろしい、きみも多少は進歩してくれたようだな。だれでも進歩はする、そうではないかな? いいかね、この三角岩の頂上を見てくれたまえ。何か目につく物はないかね?」「大きな木があります」「その木に何が見える?」
「大きな鳥です」
 教授は拡大鏡を貸してくれた。
「ええ、大きな鳥がとまっています」わたしは拡大鏡をのぞきながら言った。「すごいくちばしをしていますよ。まるでペリカンのようだな」「どうもきみの目はあまりよくないらしい。これはペリカンでもなければ鳥でもない。わしがこの動物を仕止めることに成功したといったらどうだ、興味は湧かんかね? わしの異常な体験で、持ち帰ることのできる唯一の証拠物件がそれだった」「では、それは今もあるんですね?」ついに目に見える証拠をたずね当てたのだ。
「かつてはあった。写真をだめにしてしまった例の転覆事故で、ほかの多くのものと一緒に不幸にも見失ってしまったのだ。ただ、急流の渦にのみこまれる寸前に、わしがそいつにしがみついたおかげで、羽の一部が手に残った。わしはそれっきり意識を失って岸に打ち上げられたらしいが、このすばらしい標本のみじめったらしい切れはしは無事手に残っていた。今それをお目にかけよう」 教授はひきだしの中から、わたしには巨大なこうもりの翼の上部としか見えないものをとりだした。長さが少なくとも二フィートはあり、彎曲した骨の下に膜のようなものがくっついていた。
「ものすごく大きなこうもりですね!」
「そんなものではない」教授はきっぱりと言った。「わしのように高級な学問的雰囲気の中で暮らしていると、動物学の初歩でさえも一般にはこのように知られていないということが思いもよらないのだ。鳥の翼は実際には前肢だが、こうもりの翼は膜のある三本の細長い指から成っているといった、比較解剖学の初歩的事実だって、きみはおそらく知らんのだろうね。さて、この場合、骨は明らかに前肢のそれではないし、一本の骨に一本の膜がかぶさっているだけだから、こうもりの翼ではありえないことも見ればわかるだろう。
だが鳥でもないこうもりでもないとしたら、これはいったい何かね?」 わたしのわずかばかりの知識はもう種切れだった。
「さあ、わかりませんね」
 彼はさきほどの手引書を開いて、ある怪鳥の絵を指さした。
「これがダイモルフォドン、あるいはプテロダクティルと呼ばれるジュラ紀の空飛ぶ爬虫類はちゅうるいの正確な復元図だ。つぎのページにその翼の構造の図解が出ている。それをきみの手にある標本とくらべてみたまえ」 見ているうちに驚きが全身を包んだ。もはや一点の疑いもなかった。わたしはすっかりとりこになってしまった。スケッチ、写真、教授の話、そして今実物見本――こうしてつぎつぎと証拠を積み重ねられてみると、圧倒されないわけにはいかない。わたしはそう告白した――心をこめてそう告白した。なぜなら、教授は不当な扱いを受けた人間であることがはっきりしたからだ。彼は椅子の背にもたれかかって、目をとろんとさせ、寛大な微笑を浮かべながら、突然さしてきた陽の光に心ゆくまでひたっていた。
「まったく前代未聞の大事件です!」とわたしは叫んだが、これはどちらかといえば科学的な興奮というよりもジャーナリスト的な興奮から発した叫びだった。「実に偉大な事件です。あなたは失われた世界を発見した科学の領域のコロンブスです。あなたを疑っていたように見えたとしたら心からお詫わびします。なにしろ想像もできないことだったもんですから。しかしこの証拠が本物だということはわたしにもわかりますし、おそらくだれだってあなたの話を信じないわけにはいかないでしょう」 教授は満足そうに喉を鳴らした。
「で、つぎにどうなすったんですか?」
「ちょうど雨期だったし、それに食糧もつきてしまったのだよ、マローン君。わしはこの大断崖を何か所か調べてみたが、どうしても登り口を見つけることができなかった。木の上に翼手竜プロテダクティルがとまっているのを見つけて射ちおとしたあのピラミッド状の岩のほうは、それにくらべればまだしも近寄りやすかった。わしも岩登りにかけては腕に覚えのあるほうだから、なんとかまん中ほどまで登ってみたのだ。その高さからだと、断崖の上の台地のようすがもっとよくわかった。そこはきわめて広いらしく、西を見ても東を見ても緑におおわれた台地におわりがないのだ。下はじめじめしたジャングルになっていて、蛇や虫や熱病の巣だ。つまりこのふしぎな世界を外界から護る自然の防壁になっているんだね」「ほかに何か生き物は見ませんでしたか?」
「いや、見なかった。ただ、崖の下で一週間野営している間に、上のほうからたいそう奇妙な物音が聞こえてきたがね」「しかし、アメリカ人が描いたあの動物は? あれをどう説明します?」「彼はあの崖を上まで登って、そこであの動物を見たとしか考えられん。したがって、どこかに道があるはずだ。また、それが非常にけわしい道だとも考えられる。さもないと上から動物たちが降りてきて、あの辺を荒らしまわるはずだからね。そこまでは確実だと思わんか?」「しかし、彼らはそもそもなぜそこにいるんでしょう?」「それはさしてむずかしい質問だとは思わん。答えは一つしかない。きみも聞いたことがあるかもしれんが、南アメリカは花崗岩の大陸だ。内陸のこの地方に限って、はるか大昔に、突然大規模な火山性の隆起がおこった。この断崖は玄武岩らしいから、つまるところ火成岩だ。おそらくサセックス州ほどの地域が、そこに棲んでいた生物もろとも持ちあげられ、浸蝕にもびくともしない硬さをもつ垂直の絶壁によって、大陸のほかの部分から切りはなされてしまったのだ。結果はどうなったか? 一般的な自然法則は停止した。ふつうの世界で生存競争に影響をおよぼすさまざまな制限は、すべて無力になるか性質を変えた。かくてふつうならば消滅するはずの生物が生き残る。翼手竜も剣竜もともにジュラ紀の動物だから、大昔の生物だ。それが偶然の条件によって自然に逆らって生き残ったというわけだ」「しかしあなたが握っている証拠は決定的です。あとはそれをしかるべき権威たちの前に示すだけでいい」「わしも一度は単純にもそう思いこんだ」教授は苦々しげに言った。「ところが事実はそうではなかった。わしは事あるごとに無知と嫉妬心から生じる不信に直面しなければならなかった。なにせ人に頭を下げたり、自分の言葉が疑われているのにある事実を証明しようとするのは、わしの性に合わんことでね。だから最初に疑いの目で見られてからというもの、これだけ確かな証拠だが人に見てくれと頼むことはいっさいしなかった。問題そのものに厭気がさしてしまって、話をする気にもなれなかった。大衆のばかげた好奇心を代表するきみのような連中が、わしの生活を乱しにやってくると、もう穏かに応待することはできないのだ。正直言って生まれつき激しい気性のところへもってきて、腹が立つとすぐ暴力をふるう傾向がある。おそらくきみも気がついているだろうがね」 わたしは片目をこすっただけで黙っていた。
 
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