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八 新世界の監視人(2)

时间: 2024-07-30    进入日语论坛
核心提示: しかしこれほど奥深い秘境にいてさえ、それほど遠くない場所に人間が住んでいると思わせることがおこった。三日目の明け方、リ
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 しかしこれほど奥深い秘境にいてさえ、それほど遠くない場所に人間が住んでいると思わせることがおこった。三日目の明け方、リズミカルで重々しい、妙にこもったような音が空気をふるわすのを聞いた。それは切れぎれに朝の間中続いていた。最初その音が聞こえたとき、二隻のカヌーは数ヤードの間隔で進んでいたが、インディアンたちが突然化石したように体の動きをとめて、恐怖の表情を浮かべながらじっと耳を傾けた。
「なんの音だろう?」と、わたしがたずねた。
「太鼓だよ」ジョン卿が平然と答えた。「戦士の太鼓さ。前にも聞いたことがある」「はい、戦士の太鼓です」混血のゴメスが言った。「野蛮なインディアンです。兇暴な連中で、おとなしいやつらとちがう。一マイルごとに見張っていて、すきがあれば殺します」「どうやって見張るのかな?」わたしは暗いしずまりかえった空間をみつめながらたずねた。
 混血は幅の広い肩をすくめた。
「やつらは方法を知っています。自分たちだけの方法を。見張っていることは確かです。
太鼓で通信するんです。すきがあれば殺しますよ」 その日の午後になると――ポケット日記を見たら、八月十八日火曜日だった――少なくとも六つか七つの太鼓の音がさまざまな方角から聞こえてくるようになった。時には急調子で、時にはゆっくりと鳴り響き、遠く東のほうでかん高く、断続的に鳴るかと思うと、しばらく間をおいて北のほうからどろどろとこもったような音が聞こえるといった具合で、明らかに双方で連絡をとり合っていると思われることもあった。その絶え間ない響きの中に、うまく言いあらわせないが妙に神経をいらだたせる威嚇的な何かがあって、「すきがあったら殺す、すきがあったら殺す」と、ゴメスの言葉をそのままいつ果てるともなくくりかえしているかのようだった。静まりかえった森の中に人の気配はない。穏かな大自然の平和と慰めが、暗い樹木のカーテンのこちら側にある。しかしその向こうからは、一つの人間の意志が伝わってくる。「すきがあれば殺す」と、東のほうの人間が言う。
「すきがあれば殺す」と、北のほうの人間が答える。
 太鼓の音は一日中強く弱く鳴りつづけ、黒人従者たちの顔に恐怖の表情を植えつけた。
向こう見ずで鼻柱の強い混血までがおびえているようだった。しかしながら、この日におよんで、わたしはサマリーとチャレンジャーが第一級の勇敢さ、つまり科学精神にもとづく勇敢さの持主であることを知った。これこそダーウィンがアルゼンチンのあらくれ牧童ガウチョの間で、ウォレスがマラヤの首狩族の間で示した勇気と同じものだった。慈悲深い造物主は、同時に二つのことを考えられないように人間の頭脳を作りたもうたから、科学への関心が心を占めているとき、身の安全に関する考慮が入りこむ余地はないらしい。
一日中絶えない不気味な威嚇の太鼓を聞きながらも、二人の教授は飛ぶ鳥や川岸の茂みの観察に余念がなかった。チャレンジャーが地響きのするような咆え声をあげると、すかさずサマリーが牙をむいてとびかかるといった具合で、絶え間のない論争はあいかわらずだったが、二人ともセント?ジェームズ?ストリートのロイヤル?ソサエティ?クラブの喫煙室にでもいるかのように、危険などいっこうに感じないらしく、インディアンの太鼓のことを全然口にも出さなかった。もっとも一度だけ二人がそれを話題にしたことがある。
「ミラナ族かアマファカ族の人食いどもだろう」と、チャレンジャーが森にこだまする太鼓の音を指して言った。
「いかにも」と、サマリーが応じた。「原始的な種族にはよくある例だが、この連中も抱合的ポリシンセティック言語を持つモンゴリアン系らしい」「抱合的は確かだが」と、チャレンジャーが珍しく寛大なところを見せた。「わしの知るかぎり、この大陸の言語はみなそのタイプに属するようだ。百種以上もノートにとった結果だから、まずまちがいはない。それにモンゴリアン系というのはどうかな」「比較解剖学のごく限られた知識でも、そのことは証明できるはずだよ」と、サマリーが苦りきって答えた。
 チャレンジャーが喧嘩腰であごを突きだしたので、顔がひげと帽子の縁の間に隠れてしまった。「もちろん、限られた知識ではそうなっても仕方ない。深い知識があれば別の結論も出ようというものだが」二人はたがいにすごい権幕でにらみ合った。おりから、遠くの太鼓がひときわ高く、「殺すぞ――すきがあれば殺すぞ」と鳴り響いた。
 夜に入ると、われわれは錨いかりがわりの重い石で川の中央にカヌーをもやって、インディアンの襲撃にそなえた。しかし何事もおこらず、夜明けと同時に出発し、太鼓の音もしだいに背後に遠ざかっていった。午後三時ごろ、一行は一マイル以上におよぶ急流にさしかかった。これこそチャレンジャー教授が前回の旅行で災難にあった場所である。正直なところ、わたしはこれを見たとたんに安心した。ささやかなものとはいえ、教授の話の正しさを示す最初の直接証拠がこれだったからである。インディアンたちがこのあたりの深い茂みをかきわけて、まずカヌーを、つづいて荷物を運ぶ間、われわれ四人はライフルをかついで、森からやってくるかもしれない危険から彼らを護るために、間に立って進んだ。夕方までにこの急流を越えて、なお十マイルほど先きへ進んだところでカヌーをもやった。わたしの計算では、これで支流に入ってから百マイルは進んだことになる。
 翌朝は早いうちに出発した。チャレンジャー教授は明け方からひどくそわそわしながら、絶えず川岸に目を配っていた。やがて突然満足そうな叫びを発したかと思うと、妙な角度で川の上に突き出ている一本の木を指さした。
「あの木はなんだと思う?」と、彼はたずねた。
「アサイヤシだな」と、サマリー。
「その通り。わしが目印にしておいたアサイヤシだ。秘密の入口はここから半マイルほど上流の対岸にある。ほかの場所は森に切れ目がない。それが不思議なところだ。あすこの大きなワタの木の間に、濃緑の下ばえがとぎれて薄緑のイグサがはえている場所が見えるが、あれが未知の世界への秘密の入口だ。まあ先きへ進めばよくわかる」 それはまことに不思議な場所だった。薄緑のイグサが目印の地点に達したのち、われわれはカヌーに棹さおさして数ヤード進み、やがて静かな浅い流れにたどりついた。川底は砂地で、水はきれいに澄んでいた。川幅はおよそ二十ヤードぐらいで、両岸は深い森だった。しばらくの間灌木がアシの茂みに変わったことに気がつかなかった人にとって、こんな流れと、その向こうにおとぎの国があることなど思いもよらなかったろう。
 
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