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十三 忘れえぬ光景(3)

时间: 2024-07-30    进入日语论坛
核心提示: ところがわれわれの番じゃなかった。連中は今日の分に六人のインディアンを残しておいたらしく、われわれはとっておきの花形役
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 ところがわれわれの番じゃなかった。連中は今日の分に六人のインディアンを残しておいたらしく、われわれはとっておきの花形役者ということらしいんだ。チャレンジャーは助かるかもしれないが、サマリーとぼくはどうやら処刑リストに載っている。連中の言葉は手まねが半分以上だから、それほど苦労しなくても意味はわかる。だから今逃げなければ危いと判断したんだ。前からその計画をたてていて、一つ二つはっきりしていることもあった。ただサマリーは物の役に立たないし、チャレンジャーも似たりよったりだから、ぼく一人でなんとかしなければならない。顔を合わせれば議論をおっぱじめる始末だ。われわれをつかまえた赤毛の猿人の分類に関してご両人の意見が対立してしまってね。一方がジャワのドリァ≡テクスだと言い、もう一方はピテカントロプスだと主張する。ぼくに言わせれば二人とも気ちがいだね。とにかく役に立ちそうなことが二つばかりあった。一つはこの連中が空地では人間ほど速く走れないということだ。足は短くがにまたで、体が重いときている。チャレンジャーだって、連中の一番速いやつと競争しても百ヤード走って数ヤードは差をつけるだろうし、きみやぼくにかかっては全然問題にもならない。もう一つは彼らが銃を知らないということだ。おそらくぼくに射たれたやつがなぜ怪我をしたかさえわかっていないと思う。だから銃さえあればこっちのもんだ。そこで今朝見張りのポンポンを蹴とばしてのしてしまい、キャンプまでとんで帰って今ここにいるわけだ」「しかし、教授たちが!」と、わたしは驚いて叫んだ。
「これから戻って彼らを救いださなきゃならん。さっきはとても無理だった。チャレンジャーは木の上だし、サマリーはとても逃げられる状態ではなかった。もちろん復讐のために二人を殺すということも考えられる。チャレンジャーにはおそらく指一本ふれるまいが、サマリーとなると断言はできん。いずれにしても殺したがっていることは間違いない。だからぼくが逃げなくても結局は同じことだったんだ。ただもう一度戻って彼らを救いだすか、少なくとも成行きを見とどける義務がある。いずれ夕方までにはっきりするだろうから、きみも肚はらをきめておきたまえ」 わたしはジョン卿のなかばユーモラスでなかば向こう見ずな、きびきびした話し方や短く力強い言葉の調子を、なるべく忠実に再現しようとつとめた。しかし彼は生まれながらの指導者だった。危険が増すにつれて陽気な態度がいっそう強く現われ、話し方は活気づき、冷静な目が熱っぽい輝きをおび、ドン?キホーテのようなひげがうれしさでぴーんとはりつめるのだ。危険を愛する心、冒険のドラマに対する熱意――それは抑えられれば抑えられるほど強くなる――人生の危険はすべて一種のスポーツであり、運命との死を賭した戦いであるという持論が、このように重大な局面にのぞんだとき、彼を得がたい相棒にする。かりに教授たちの身の上に関する心配がなかったとしたら、彼のような男と一緒にこんな事件にとびこんでゆくのはさぞ楽しいことだったに違いない。茂みの中の隠れ場所から立ちあがったとき、突然彼が腕をつかんで引きとめた。
「ちくしょう! やつらがやってくるぞ!」
 われわれのいる場所から、緑のアーチの下を木の幹と枝でできた褐色の通り道が見えた。この道を猿人の一行が通って行く。がにまたで猫背の一列が時おり地面に手を触れながら、左右に首をふり向けて急ぎ足で歩いて行くのだ。うずくまるような歩き方がいくぶん背丈を低く見せているにしても、せいぜい五フィートそこそこというところだろう。手が長く、胸がものすごく厚い。ほとんどのものが手に棍棒を持っており、遠くから見ると毛むくじゃらのぶざまな人間の列のようだ。一瞬はっきり姿が見えたが、間もなく茂みの中に隠れてしまった。
「今はよそう」と、ライフルに手をかけていたジョン卿が言った。「一番いいのは連中が捜索をあきらめるまでじっと静かにしていることだ。それから彼らの村へ行って、大打撃を与えられそうかどうか様子を見るのだ。一時間の猶予を与えて、それから進撃だ」 われわれは罐詰をあけて朝の腹ごしらえをしながら時間をつぶした。ジョン卿は前日の朝からわずかな果物以外何も食べていなかったので、まるで飢えた人間のようにむさぼり食った。それから、ポケットを薬莢でふくらませ、両手にライフルを持って、両教授救出の旅に出発した。出発する前に、ふたたびそこが必要になった場合にそなえて、茂みの中の小さな隠れ場所に目印をつけ、チャレンジャー砦の方角をしるしておいた。無言で茂みをかきわけて進むうちに、やがて最初のキャンプ跡に近い崖のふちに出た。そこでいったん立ちどまり、ジョン卿が自分の計画を語った。
「深い森の中にいるかぎりは、連中にかないっこない。だが空地なら話は別だ。われわれのほうが連中より速く動ける。だからできるだけ空地からはなれないことだ。台地の外縁は内部よりも大きな木が少ないから、そこがわれわれの前線だ。目をよく開いて、ライフルの用意をしながらゆっくり進むんだぞ。特に薬莢が残っているうちに彼らの捕虜にならないことだ――これがぼくの最後の注意だよ、マローン君」 崖のふちまでたどりついて見おろすと、忠実な黒人のサンボが下の岩の上に坐って煙草を吸っていた。彼に呼びかけて、今自分のおかれた立場を話せるなら、何物も惜しくない心境だったが、残念ながら敵に聞きつけられる危険があった。林の中はどこもかしこも猿人でいっぱいらしい。彼らの奇妙な騒々しい話し声を何度も聞いた。そんなときは手近かの茂みに身をひそめて、話し声が遠ざかるまで息を殺して待った。そんなわけでわれわれの歩みはのろく、ジョン卿の用心深い身ぶりによって目的地に近づいたことがわかるまで、少なくとも二時間はたっていたに違いない。彼はじっとしていろと合図して、自分だけ這って前へ進んだ。一分もすると戻ってきたが、顔が興奮でふるえていた。
「さあ、急げ! 手遅れじゃないといいんだが」
 わたしは神経質にぶるぶる興奮しながら這い進み、ジョン卿のそばで横になって茂みごしに目の前に拡がる空地を眺めた。
 目の前には死ぬまで忘れられないような光景があった――そのぞっとするような、ありえない眺めを、筆でどうやって伝えていいかわからないし、もしこの先きふたたびサヴィジ?クラブの談話室に坐ってくすんだエンバンクメント(テムズ川の河岸通り)を眺めるような機会があったとしても、数年後にはわたし自身自分で見たことが信じられなくなってしまうだろう。そのときは悪い夢か熱にうかされた妄想のように思えるに違いない。だがとにかく記憶が色あせないうちに、そして、少なくともわたしのそばで濡れた草に腹這いになっている一人の男が、わたしが嘘をついているのではないことを知っている間に、そのことを書きとめておこう。
 
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