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十五 この目で驚異を見た(4)

时间: 2024-07-30    进入日语论坛
核心提示:「すばらしい!」負けずぎらいのチャレンジャーがすりむいた腕をさすりながら叫んだ。「満足すべき完璧な実験だった! わしもこ
(单词翻译:双击或拖选)
「すばらしい!」負けずぎらいのチャレンジャーがすりむいた腕をさすりながら叫んだ。
「満足すべき完璧な実験だった! わしもこれほどの成功は期待していなかった。諸君、わたしは一週間以内に新しい気球を作ることを約束する。安全かつ快適に帰国の第一歩を踏みだすことをあてにしてくださって結構だ」 これまでは過去の出来事をおこった順に書いてきた。今わたしは、サンボが長いこと待っていてくれた最初の野営地で報告の仕上げにとりかかっている。あれほどの困難や危険も、頭上にそびえる赤味がかった絶壁の上に残してきて、今ではまるで夢の中の出来事としか思えない。われわれはまったく予想もしなかった方法によって、ともかくも無事下界へ降りることができたのだ。四人ともみな元気である。一か月半か二か月後にはロンドンに帰っているだろうから、この手紙よりさほど遅くなることはないだろう。われわれの心はすでに偉大な故郷の町へ飛んでいる。われわれにとって何物にも変えがたいものを多く持つ偉大なるロンドンへ。
 チャレンジャー教授手製の気球で命がけの冒険をした日の夜、運命の転機が訪れた。脱出計画に同情を示した人間が一人いたことは前にも述べた。われわれが救った例の酋長の息子である。彼だけはわれわれの意志に反して異郷に引きとめておくことを望まなかったのだ。身ぶり手真似で結構話は通じていた。その夜日が暮れてから、われわれの小さなキャンプにやってきて、わたしに(どういうわけか彼はいつもわたしにばかり関心を示した。おそらく年齢が一番近かったせいなのだろう)木の皮を丸めた小さな筒を渡し、厳粛な顔で頭上の洞窟群を指さしてから、これは内緒だというしるしに唇に指をあて、それからこっそり仲間のところへ帰って行った。
 わたしがその樹皮を焚火の明りにかざして、みんなでそれを調べてみた。拡げるとちょうど一フィート四方ほどの大きさで、内側に奇妙な線が描かれている。まっ白な表面に木炭できちんと描かれたもので、一見簡単な楽符か何かのように思えた。
「なんだかわからないけれど、われわれにとって重要なものに違いありません」と、わたしが言った。「これを渡すときの彼の表情からそう感じたんです」「冗談好きの原始人に出会ったのでなければね」と、サマリーが言った。「冗談というのは人間の最も初歩的な発達段階に現われる現象の一つと考えていいものだ」「いや、これはある種の文書に違いない」と、チャレンジャーが言った。
「一ギニー?パズルの問題のようでもあるな」ジョン卿が首をのばしてのぞきこみながら言った。それから急に手をのばしてパズルをつかんだ。
「しめた! 答が出たようだぞ! マローン君の言う通りだ。これですよ! 線が何本あります? 十八本でしょう。ところで頭の上の崖には洞窟の入口が十八ありますよ」「彼はこれを渡すとき洞窟のほうを指さしましたよ」と、わたしが言った。
「それで間違いない。これは洞窟の配置図なんだ。ほら、十八の洞窟が一列に並んでいて、あるものは浅く、あるものは深く、二叉に別れているものもある。われわれが見た通りだ。これは間違いなく地図です。ここに?印があるが、これはなんの意味だろう? 一番奥行きの深い洞窟に印がついているが」「それがトンネルですよ」と、わたし。
「マローン君が謎を解いたようだな」と、チャレンジャーが言った。「もしこの洞窟がトンネルになっていないとしたら、われわれに好意を持っていいはずのあの男が、それに注意をひきつけようとした理由がわからなくなる。反対にこれがトンネルで反対側に出口があるとしたら、あとはせいぜい百フィートも崖をくだればいいはずだ」「百フィートだと!」と、サマリーが不満の声をあげた。
「ロープはまだ百フィート以上あります」とわたしが叫んだ。「だからかならず降りられますよ」「洞窟の中のインディアンをどうするつもりかね?」と、サマリーがやりかえした。
「頭の上の洞窟には一人もいませんよ。ここのはみな物置に使われているんです。今からすぐにのぼって行って様子を見てはどうですか?」 台地には乾燥したやに??を含む木があって――植物学者に言わせるとナンヨウスギというのだそうだが――インディアンがそれをたいまつに使っている。われわれは一人ずつその木を束ねたものを手に持って、地図で?印のついている洞窟の、草におおわれた石段をのぼって行った。わたしが言った通り内部は空っぽで、われわれの頭上を無数のこうもりが飛びまわっているだけだった。インディアンにかんづかれたくなかったので、何度か曲り角を曲がって洞窟のかなり奥へ入りこむまで、暗闇の中を手探りで進んで行った。それからようやくたいまつに火をともした。そこは乾燥したりっぱなトンネルになっていて、なめらかな灰色の壁には土人の記号がたくさん描かれている。頭上はアーチ型の天井で、足もとは白っぽく光る砂だった。急ぎ足で進んで行くと、やがて行きどまりになったので、一同失望のうめき声を洩らした。鼠一匹通る隙間もない岩の壁が行手をさえぎっていたのである。出口はどこにもなかった。
 われわれはこの思いもかけなかった障害物を眺めながら、苦々しい気持で立っていた。
登りのトンネルと違って、地震でふさがったのではない。もともと行きどまりキュル?
ド?サックなのだ。
「心配はいらんよ、諸君」と、不屈のチャレンジャーが言った。「前にも約束した通りわしの気球という手がある」 サマリーがうなった。
「洞窟を間違えたのかな?」と、わたし。
「そんなことはないさ」ジョン卿が地図をさしながら言った。右から十二番目、左からは二番目、この洞窟に間違いない」 わたしは彼がさしている印を見て、思わず歓声を発した。
「わかったぞ! こっちだ! こっちですよ!」
 わたしはたいまつをかざしながら、急いで今来た道を戻りはじめた。そして、地面に落ちているマッチを示しながら、「ほら、ここでたいまつに火をつけたんです」「その通りだ」「地図によると、この洞窟は二叉になっている、われわれはたいまつに火をつける前に分れ道を通りすぎてしまったんですよ。さっきの入口に向かって右のほうに、もっと奥行きの深い道があるはずです」 わたしの予想は当たっていた。三十ヤードも行かないうちに、右手の壁に黒い穴がぽっかり口をあけた。その枝道にそって息を切らしながら何百ヤードも進んだ。やがて、突然、前方の暗いアーチの中に、薄暗い赤い光がさしこんできた。われわれは茫然としてその光を見つめた。焔の壁が行手をさえぎっているように見えた。急いで近寄ってみると、音も熱もなく、そよとも動く気配はないが、依然大きな光のカーテンが前方で輝いている。洞窟の内部は銀色に輝き、足もとの砂は宝石の粒をばらまいたようにこうこうと輝いている。さらに近づいてよく見ると、丸味をおびた縁が見えてきた。
「こいつは驚いた、あれは月だぞ!」とジョン卿が叫んだ。「外へ出られたんだ、外へ!」 それは崖の上の出口からまっすぐさしこんでくる満月の明りだった。出口といってもせいぜい窓ぐらいの大きさしかない岩の裂け目だが、それでもわれわれの目的には十分だった。外に首を突きだしてみると、下降はさほど難しいとも見えず、下の地面は思ったより近いところにあった。下からこの裂け目が見えなかったのも無理はない。ちょうどその上で崖がオーヴァーハングしていて、登はん不可能に見えたものだから、ろくに調べもしなかったのだ。手持ちのロープで下まで降りられることがわかったのですっかり安心して、翌晩にそなえるため喜び勇んでキャンプに戻った。
 どたん場でインディアンに引きとめられる恐れがあるので、行動は迅速かつ隠密を要した。銃と弾薬を除いて、荷物はすべて置き去りにすることに決めた。ところが、内容は伏せておくが、チャレンジャーがある厄介な品物をどうしても持ち帰ると言いはったため、これにはひどく骨折った。その一日の長かったこと、だが日が暮れるとともに、出発準備はすべてととのっていた。骨折って石段の上まで荷物を運びあげ、それからふりかえって、この秘境にしばし別れを惜しんだ。ここも間もなく狩猟家や鉱山師やましに荒らされて俗化してしまうかもしれない。しかしわれわれ四人にとっては多くの冒険をし、困難を味わい、そして多くを学んだ魅惑とロマンスの夢の国だ――これからは親しみをこめて、われわれの国と呼ぶことにしよう。われわれの左手では、近くの洞窟の一つ一つが、暗闇に赤く気持のよい焚火の明りを放っていた。下の斜面からはインディアンたちの笑い、歌う声が聞こえてくる。その向こうは一面の森で、中央に、闇を通してにぶい銀色に輝く、怪獣たちの母とも言うべき湖が見えている。そうしている間にも不気味な動物の鳴き声が闇をつんざいて響きわたった。それはメイプル?ホワイト台地がわれわれに別れを告げる声だった。われわれはまわれ右をして、祖国へ通じる洞窟への第一歩を踏みだした。
 二時間後、荷物や持物はすべて崖下に運びおろされていた。チャレンジャーのお荷物を除けば、全然手間はかからなかった。荷物をその場に置いたまま、われわれはただちにサンボのキャンプに向かって出発した。明け方キャンプに近づいてみると、驚いたことに、火が何か所にも焚かれていた。救助隊が到着したのだ。川からやってきたインディアンがおよそ二十人ばかりいて、棒だとかロープだとか、岩の割れ目に橋を架けるのに役立ちそうなものがすべてそろっていた。これで、明朝アマゾンへ向けて出発するとき、もはや荷物運びを心配する必要もなくなったわけだ。
 というわけで、わたしはけいけんな感謝の気持でこの報告書の筆をおく。われわれはこの目で驚異を見、数々の試練を克服することによって魂を洗われた。各人それなりに人間として向上した。パラに到着したら衣服を整えるために一時滞在するかもしれない。その場合はこの手紙を先きに郵送しよう。もし滞在しなければ、わたし自身これをたずさえてロンドンに到着するわけだ。いずれにしても、親愛なるマッカードル氏よ、あなたと握手をかわす日が待ちどおしくてならない。
 
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