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十六 行進! 行進!(2)

时间: 2024-07-30    进入日语论坛
核心提示:「サマリー教授が立ちあがると同時に、またもや異様な熱狂がおこり、彼の演説のあいだ一定の間隔をおいてくりかえされた。演説内
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「サマリー教授が立ちあがると同時に、またもや異様な熱狂がおこり、彼の演説のあいだ一定の間隔をおいてくりかえされた。演説内容の詳細は、ここでは割愛する。探検の詳報がわが社特派員のペンによって、付録として発行される予定だからである。したがってここではごく一般的な方向を示すだけにとどめておく。教授はまず最初にこの探検旅行のそもそもの発端を語り、友人のチャレンジャー教授に対して、今や完全に正しいと証明された彼の発言を、はじめは不信をもって迎えたことを謝罪するとともに、美しい賛辞を捧げた。ついで一般大衆がこの驚くべき台地の所在をつきとめようとする試みを阻止するために、手がかりになるようなことを用心深く隠しながら、実際にたどった旅の道筋を明らかにした。川から断崖の下にたどりつくまでの道中を漠然と説明したのち、崖をのぼろうとしては何度も失敗した苦心談で聴衆の心をとらえておいて、献身的な二人の混血土人の命とひきかえにようやく登はんに成功した事情を語った」(わが友マックがこのように意外な解釈をおこなったのは、サマリーが会場で疑問を呼びおこすようなことがあってはならないと配慮した結果である)「かくして聴衆を想像上の台地まで導きあげ、橋の墜落によって彼らをそこに足どめしたのち、教授はこの驚くべき土地の恐怖と魅力の描写にとりかかった。個人的な冒険については多くを語らなかったが、台地上の不思議な野獣、鳥類、昆虫、植物などの観察によって得られた科学上の収穫を大いに力説した。と り わ け 鞘翅しょうし類と鱗翅りんし類の収穫がめざましく、四週間の間に前者については四十六種、後者については九十四種の新種を採集したということである。しかしながら聴衆の関心が集中したのは、言うまでもなくより大きな動物――とりわけはるか昔に絶滅したと信じられている大動物であった。教授はそれについてもかなりの数をかぞえあげたが、台地をより綿密に調査すれば、疑いもなくさらに多くの種類が発見されるであろうと語った。一行はほとんどがはなれた場所からだが、現存するいかなる動物とも一致しないものを少なくとも十二種は見たということである。これらの動物はいずれしかるべく分類され調査されるであろう。例えばぬけがらが濃い紫色で、長さが五十一フィートもある蛇や、暗闇の中で燐光を発する哺乳類らしき白い動物や、インディアンの間で猛毒を持つと信じられている巨大な黒色の蛾などである。こうしたまったく新しい動物を別にしても、台地には、ジュラ紀のはじめごろ生存していたものも含めて、よく知られている先史動物が多数棲息していたということである。
その中には、最初にこの未知の国へ足を踏み入れたアメリカ人冒険家のスケッチブックに描かれていた巨大でグロテスクな剣竜もいて、これはマローン記者が湖の岸の水飲み場で姿を見かけたという。教授はまた一行が最初にめぐり合った不思議な動物、禽竜イグアノドンと翼手竜についても語った。ついで彼は、一度ならず一行中のメンバーを襲った最も兇暴な肉食性の恐竜に関する説明で、聴衆の胆を冷やした。巨大な猛禽、フォロラクスや、今もなお台地上に生存しているァ 》カについても語った。しかしながら、会場の熱狂が最高調に達したのは、教授が中央湖の神秘を生々しく描いたときである。この正気で冷静な教授が、魔法の湖に棲む奇怪な三つ目の魚とかげや巨大な水蛇の話を、冷静に言葉を選んで語るとき、人々は夢でもみているのではないかとわが身をつねってみずにはいられなかった。つぎの話題はインディアンと、驚くべき猿人の村である。後者はジャワ猿人の進化したもの、したがって現に知られている動物の中では、人類学上の仮説であるミッシング?リンクに最も近い存在と考えられるものだという。最後に教授は、チャレンジャー教授による天才的ではあるがきわめて危険な空飛ぶ発明を披露して満場の笑いを誘い、この忘れがたい演説を、一行がようやく文明世界に帰ることのできた方法の説明でしめくくった。
 報告はここで終わり、ウプサラ大学のセルジウス教授提案の感謝と祝辞の動議が、当然会場の支持を得て実行されるものと期待されたが、事実はそれほどスムーズに運ばないことが間もなく明らかになった。反対の気配はそもそものはじめからはっきり感じられたのだが、いよいよエジンバラのジェームズ?イリングワース博士がホールの中央で立ちあがった。決議の前に修正がおこなわれるべきではないかと、博士は質問したのである。
議長『修正の要があれば、もちろんです』
イリングワース博士『議長閣下、その必要があります』議長『ではただちに採択に移ります』チャレンジャー教授(さっと立ちあがって)『議長閣下、この人物は『科学クォータリー』誌上で深海動物の性質について論争をして以来、ずっとわたしの個人的な敵であります』議長『議長としては個人的問題に立ち入ることをさし控えなければなりません。どうぞつづけてください』 探検隊に同情する人々の強い反対の声にかき消されたせいもあって、イリングワース博士の発言はところどころしか聞きとれなかった。彼を力ずくで坐らせようとするものもあったほどである。しかしながら、雲つくような大男で、大きな声の持主でもある博士は、なんとか騒ぎをおししずめて最後まで話し終わった。彼が立ちあがった瞬間から、聴衆全体から見れば少数派ではあるにしても、かなりの味方や同調者がいることは明らかであった。多数派の聴衆の態度は、いわば中立の立場で成行きを見守るというところであった。
 イリングワース博士はまずチャレンジャー、サマリー両教授の科学的業績を高く評価することからはじめた。それから、純粋に科学的真理の探求という欲求にもとづく自分の発言が、個人の偏見のあらわれと解釈されるのはまことに遺憾であると述べた。自分の立場は、この前の集会でサマリー教授がとったところと実質的に同じものである。あのときはチャレンジャー教授の発言に対して、サマリー教授が疑義をさしはさんだ。今教授はかつてのチャレンジャー教授とまったく同じ内容の発言をおこなっておきながら、それがなんの疑問も招かないことを期待するとしたら、はたしてこれを道理と言えるであろうか?
(『賛成』『反対』という叫び声で、発言がかなり長い間中断される。その間議長に向かってイリングワース博士を外の通りにほうり出す許可を求めるチャレンジャー教授の声が、新聞記者席まで聞こえてきた)一年前ある一人の人物があることを語った。今は四人の人物がほかのよりいっそう驚くべきことを語っている。そのことだけで、この革命的とも言うべき信じがたい事柄が事実であるという決定的な証拠になるのだろうか? 旅行者が未知の世界から持ち帰った話を、いとも簡単に信じてしまう例が、最近まま見受けられるが、ロンドン動物学会もそのような態度をとろうとするのであろうか? 委員会のメンバーがそれぞれ立派な人格者であることは認めるが、人間性とは本来複雑なものである。
たとえ教授たちといえども、名誉欲に駆られて道を誤るというのはありえないことではない。人間はみな蛾と同じようなもので、明りの中で飛びまわることに喜びを感じるのだ。
 
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