フジテレビが開局55周年を記念しておくる「若者たち2014」は、1966年に大ヒットした伝説のドラマをベースに、豪華実力派俳優が競演する青春群像劇。1つ屋根の下で暮らす5人の兄弟と、彼らに深く関わる人物たちが笑いあり、涙ありで織り成す物語は、世代を超えた多くの人々が共感するはずだ。本作の見どころについて、5人兄弟を演じる俳優陣に語ってもらった。
- 妻夫木聡(以下、妻夫木):まだ出演を迷っていたときに杉田成道監督と一度お会いすることになったんです。そこで杉田さんの熱の入った作品に対する思いみたいなのをぶつけられて、これはすごいものが出来るんじゃないかという確信めいたものを感じ、その場でやりたい思いが芽生えました。
瑛太:20歳前半ぐらいから共演させてもらっている妻夫木(聡)くんが数年ドラマに出ていなかったので、ついにやってくれるのか…と楽しみに思いました。また他のキャストの皆さんと、監督が杉田さんだと聞いて、「これは刺激的なドラマになる」とワクワクしました。
満島ひかり(以下、満島):本作のプロデューサーでもある石井浩二さんとは、ドラマ「それでも、生きてゆく」(2011年)でいい出会いをしていたので、「また一緒にやりたい」と思っていました。「それでも~」で共演した瑛太くんが今度はお兄さんで。3度目の共演になる妻夫木さんも――いつも私は妻夫木さんをいじめる役しかなかったんですが(笑)――お兄さんとのことで、とても新鮮に感じました。そこに佑くんと野村くんもやってきて、心強くなりました。
柄本佑(以下、柄本):妻夫木さん、瑛太さんは過去に共演したことがあり、この映画のようなキャストの中で監督が杉田さんと聞いて「すごいドラマにお声掛けいただいちゃった」と(笑)。もちろんやりたかったのですが「大丈夫か僕!?」というのが正直なところでした(笑)。
野村周平(以下、野村):この素晴らしいキャストの中に入っていることに不安もありましたが、石井プロデューサーから「自分らしくやれば大丈夫だよ」と言っていただいたので、それを勇気に演じています。 - 妻夫木:一つ一つをじっくりやられる方ですね。撮影前にリハーサルに一週間費やしたり。ここ最近、ここまでの会話劇ってなかったんじゃないでしょうか。その代わり、いつも喉が…(笑)。
満島:枯れてくる(笑)。
妻夫木:ええ。お陰で、充実した毎日を過ごしているという実感がありますね。
瑛太:ドラマの撮影ってどうしても時間が迫ってくるからテンポよく進めていかなければいけないけれど、杉田さんは一人一人、入念に演出される姿が印象的です。
満島:何度も同じ場面を繰り返すんです。演出とカメラのポジション、役者陣の息が合ったところ、色んなことを調整しながら本番を繰り返すので、たまに何をやっているのかわからなくなる時もありますが、杉田さんの世界を楽しめたらいいです。
柄本:ハッキリと意見を言っていただけるのが、考えるきっかけにも繋がりますし、本当にありがたいですね。雰囲気やニュアンスだけではなく、相手のセリフに間髪入れずにトントンとダイレクトに返していく会話劇が求められているように感じます。
野村:とても気さくな方です。「こう演じてね」と指導いただいたので「こうですか?」と演じてみたら、「ハハハッ!」と満足そうに笑ってその場を去って行くので「今のでよかったのかな?」と不安になるときもありますが(笑)。
満島:吉岡秀隆さんに聞いてみたら、監督のそういう部分は“天然”らしいですよ(笑)。
野村:そうでしたか(笑)。カットがまだ掛かっていないのに大笑いされている声が聞こえたりするなどおおらかな方なので、現場で過ごす時間も楽しいですよね。
- 妻夫木:旭は、小さい頃に両親がなくなってから「働ける自分が高校中退して働いて支えなきゃいけない」ってことで家族を背負ってきたんでしょうね。頭で考えるよりも先に行動が出るような、愛にあふれたバカな男です(笑)。何に対しても真正面からぶつかり、みんなが悩んで立ち止まっているところを無理にでも連れ出しちゃうような無鉄砲さ、空気の読めなさなどがあり、そんな真っ直ぐさに憧れます。
瑛太:暁(さとる)は厄介者ですね。「次男として兄貴とこの家族を支えていかなければ」という意識はありますが、とあることがあり、人を騙してでもお金を手に入れて生きていかなければいけない…。「ダマされる方が悪い」という価値観が芽生えています。屈折していますが、暁なりに誠実さみたいなものはあるんです。旭に言うセリフにもありますが、「世の中にはいろんな側面があるんだから色眼鏡を外して、この世知辛い世の中見てみろ!」と、多面的な自分でいることも癖になっています。
満島:ひかりは、なんとなくお兄ちゃんに伝えたいことは話しますけど、自分の気持ちをあまり言いません。弱い人です。女の子1人なので、お母さんがいなくて、言えなかったこともいっぱいあるのでしょうが、言葉にするのに時間がかかるのかな。弟たちとはほのぼのと子供みたいに遊んでいます。我慢することが多い子供時代をおくっているから、下の2人とは「そういうこと忘れて楽しく行こうよ」って肩の力を抜いているのかもしれない。でも、お兄ちゃんといると心強い反面、自分のダメさがあぶり出されるようで緊張してしまう。「私はちゃんとしなくてごめんなさい」って…。
柄本:陽(はる)は大学で演劇をやっていて、夢を持って理想論を語りがちな男です。夢や理想に重きを置きすぎて、生活や日常を考えていないかもしれませんね。ただやっぱり、お金などの現実的な問題があり、それがいつ自分に押し寄せてくるのか漠然とした不安はあります。
野村:旦(ただし)は親の顔も知りませんし、兄が親代わりでたくさん愛情を注いでくれたと思うんです。でも、それがあまり伝わっていないのかもしれません。家では強がっていても、いざ問題が起きると、いつもは威張っていたのに「兄が対処してくれる」と頼りきっている男です。
- 妻夫木:お互いダメなところがあるから、喧嘩も起こるし衝突もあったりするんですが、だからこそ支えられることもあるんでしょうね。それぞれが問題を抱え、うまく言葉で表現することもできずにいる状況にありながらも、兄弟だからこそわかってやれるときもあるし、言葉で励ますだけじゃなく、誰かや何かを通じて助けてあげられることもある。殴りあって表現するときもあるだろうし、いろんな形が見えてくると思うんです。…ただ兄弟の物語というよりは人間ドラマなので、家族という大枠以上のものが伝わるはずです。
瑛太:5人に血が繋がっていることを強く感じます。序盤はぶつかることが多いんですけど、やはり、それぞれがそれぞれのことを好きなんじゃないですかね。でも物語が進むに連れて、「繋がっているからこそも照れ臭さ」が見えて来ます。
満島:私は4人兄弟ですが、経験では、下の子が生まれるたびに兄弟の立ち位置というか社会性が変わっていくように思うんです。弟や妹が生まれると、姉にならざるを得ないというか。人と一緒にいるところに妹がやってくると、「あ、お姉さんの顔に変わったね」なんて言われることもあります。なんだか、役割のようなものが意識的にも無意識的にも家族や兄弟には与えられるのではないでしょうか。…この兄弟を見ていると、男の兄弟が4人も集まると、こんなにかわいい掛け合いになるんだ!って思います(笑)。
柄本:僕は3人兄弟の真ん中なのですが、比較的上も下も互いが互いに関心がないんですね(笑)。ですがこの5人兄弟って、1つの家を支えあっている姿がとても魅力的です。主張や衝突をすることがあっても、それは家族で一緒にいたいがためであって。
野村:僕も兄が1人いるんですけど、確かにこんなに喋ったりはしていない。本作の兄弟は、旭(妻夫木)兄貴を小馬鹿にしながらも、結局のところは慕っている。皆さんもおっしゃいましたが、みんながみんなを愛している雰囲気が素敵ですね。 - 妻夫木:簡単な一言ですませたくないものが、このドラマにはあると思うんです。杉田監督も、きっと“生きているもの”を撮りたいんだと感じています。本番ではなかなか一発でOKが出ないのも、今の芝居のもっと先にあるなにか…人間の言葉で表せない感情みたいなものを映像に映したいんだと思っています。なんとなく当たり前に過ごしている中で、忘れてしまっている大切なもの…それが愛なのかわかりませんが、そういったものを気付かせてくれる作品になっているはずなので、楽しみにしていてください!
インタビュー中は笑いが絶えず、5人の結束も固い印象があった。現場にお邪魔すると、程良い緊張感の中での撮影ではあるが、例えば、瑛太演じる暁が下の兄弟たちを投げ飛ばす芝居のリハーサルでは、あまりに勢い良く転がった柄本や野村を見た妻夫木が思わず吹き出してしまうなど、丁々発止のやり取りに笑いの渦が起こっている光景がよく見られた。妻夫木らが語るように、そんな現場の雰囲気は画面に映し出されているはず。実力派たちが計算しつつも体当たりで演じるリアルな人間のドラマが今夏、お茶の間を熱くしそうだ。
(本文转自yahoo)