大量絶滅を引き起こした要因として最も有力なのが、メキシコ・ユカタン半島に落下した小惑星原因説。だが、小惑星の衝突と気候変動の因果関係を巡っては、巻き上げられた「ちり」が太陽光を遮って起きた地表寒冷化、大量発生した酸性雨による海水の酸性化など諸説ある。
東北大の海保邦夫教授(有機地球化学)らは、カリブ海のハイチとスペインで小惑星衝突後に堆積した地層からすすを採取し、成分を分析。炭化水素の一種「コロネン」の含有率が高いことを突き止めた。
コロネンは超高温で有機質が焼けた場合に限って含有率が高くなる性質があり、小惑星衝突の熱で生成されたと結論付けた。
コンピューターで当時の気象変動を再現すると、舞い上がった大量のすすが上空約10~50キロの成層圏に7~8年とどまり続けて太陽光を吸収。気温が低下して海水の蒸発量が減り、降水量が激減したために植物が枯れて食物連鎖が崩れた。
ちりの飛散は、短期間で収まって大きな気候変動には至らないという。海保教授は「もし、小惑星の衝突地点が海だったら、恐竜は絶滅しなかったかもしれない」と話している。
【コロネン coronene】六苯并苯