指の関節がポキッと鳴る原因は一体何か。科学者らが100年以上頭を悩ませ続けてきたこの謎の解明に成功したとみられる研究結果が発表された。
好きか嫌いかはさておき、非常によく耳にする指の関節音については、指の全ての関節を鳴らせるわけではないこと、一度鳴らした関節については20分待たないと鳴らせないことなどが、過去の研究で立証されていた。
だが、音の発生源については謎のままだった。
指関節の「ポキッ」という破裂音はまさしく文字通りの現象であることを明らかにした研究論文が29日、発表された。この特徴的な音は、手の関節液の微小な気泡が崩壊することで発生するのだという。
仏エコール・ポリテクニーク(Ecole Polytechnique)と米スタンフォード大学(Stanford University)の研究チームは、幾何学的に表現した関節と数理モデルを用いて、関節音の発生に至る現象のシミュレーションを行った。
エコール・ポリテクニークのアブドゥル・バラカト(Abdul Barakat)教授は「指関節を鳴らした時に生じる音の原因は、関節内の液体中にあるキャビテーション気泡の部分的な崩壊だ」と説明する。
バラカト教授はAFPの電話取材に「気泡が複数の可能性もあるが、あの特徴的な音を発生させるには気泡1個の崩壊で十分であることが、今回の研究で明らかになった」と語った。
指関節が鳴る音と気泡の崩壊の関連性が最初に指摘されたのは1971年発表の研究にさかのぼるが、指関節を鳴らした後にもまだ関節液中に気泡が残っていることがその後の研究で判明したため、結果が疑問視されていた。
■数学的調査が謎解明の鍵
この明らかな矛盾は、音が部分的な崩壊で生じる可能性があることが今回の数理モデルで示されたことにより、解決されたと考えられる。
超音波を用いた過去の研究でも、音が関節液内の圧力変化に関連しているという同様の結論に到達していた。
だが、2015年に発表された論文では、特徴的な関節音の原因は気泡の崩壊ではなく、気泡の形成であることが示唆された。
バラカト教授は「過去の研究は全て観察や画像化に基づくものだったので、今回の研究ではこの音を数学的に調べることを目指し、これを支配する物理現象を記述する数理モデルの構築を試みた」と話す。
「崩壊によってまさにあの特徴的な音が発生することが、今回の研究で分かった」
これで論争が完全に決着するわけではないかもしれないが、今回の研究が、指関節をポキッと鳴らしたくなる無意識の衝動を誘発することは確かだ。
「この論文を発表した後、娘が試しに関節を鳴らしてみたのだが、今ではすっかり指鳴らしの癖がついてしまった」と話すバラカト教授自身も、指関節鳴らしの癖がある。
これまでのところ、指関節鳴らしが有益か有害かについてはまだ明らかになっていない。医師らによれば、広く信じられているうわさに反して、関節炎の原因にはならないという。