詩を作らせて歌に合はせ侍りしに、水郷春望といふことを
25 三島江や霜もまだひぬ蘆の葉に角ぐむほどの春風ぞ吹く\左衛門督通光
【通釈】
25 三島江には、霜もまだ乾かない蘆の枯葉に若芽が芽ぐむほどの春風が吹いている。本歌「三島江に角ぐみわたる蘆の根のひとよのほどに春めきにけり」(後拾遺?春上?曾禰好忠)。○詩を作らせて…… 元久二年(一二〇五)六月十五日の元久詩歌合。○水郷春望水辺の地の春の眺望。○三島江や 「三島江」は摂津国の歌枕。現在の大阪府高槻市から摂津市にかけての淀川西岸一帯。「や」は間投助詞で詠嘆を表す。○角ぐむ 角のような芽を出す。蘆の芽はとがっているので錐や動物の角に喩えられる。▽初句で「水郷」を大きく提示、二句以下で近景を写し出す。寂蓮の「村雨の露もまだひぬ真木の葉に霧立ちのぼる秋の夕暮れ」(四九一)を意識するか。