春歌とて
27 降りつみし高たか嶺ねのみ雪とけにけり清滝川の水の白波\西行法師
【通釈】
27 降り積もっていた高嶺の深雪が解けたのだな。清滝川の水は白波を立ててみなぎり流れている。○一?二句 「降り積みし雪は見えねど吉野山滝の音こそ春は知りけれ」(永承六年一月六条斎院歌合?左衛門)、「小塩山梢も見えず降り積みしそのすべらきのみゆきなりけむ」(後拾遺?雑五?少将井尼)。○清滝川 山城国の歌枕。京都市北区の山岳部に発し、周山街道に沿って流れ、右京区の栂尾、槇尾、高雄、愛宕山南麓を経て保津川に注ぐ清流。「清滝の瀬々の白糸繰りためて山分け衣織りて着ましを」(古今?雑上?神退)。○水の白波 雪解けで増水した川が白波を立てているさまをいう。「石間ゆく水の白波立ち返りかくこそは見め飽かずもあるかな」(古今?恋四?読人しらず)。「消えはてぬ雪かとぞ見る谷川の岩間を分ける水の白波」(赤染衛門集)。▽西行上人集。御裳濯河歌合の藤原俊成評「姿おもしろく見ゆ」。