当然のごとく、こんな村にノンスモーキングのレストランもクリーンなレストランも無い。もちろん、地元の方々はクリーンにしようと努めてらっしゃるのであろうが、我々の基準でクリーンなレストランなど無い(断言)。
まあまあ通訳の人がそれなりのところを見つけてくれ、それでも気が進まない様子でユダヤ人カップルは席に着いたのだが、注文をする時も通訳を通してこまごまと食材を指定し、ベジタリアン用のメニューをオーダーしていた。さらに、米は食えないということで、3人ともオリジナルの野菜入り中華麺をシェフに無理やり作らせるのであった。
もちろんオレは肉食。一人でバリバリの回鍋肉定食を堪能していた。
奥の2人がわがままツートップ。いかにもわがままそうな顔をしているでしょう。
「あの皆さんちょっと聞きたいことがあるんですけど」
「なんだ?」
「そもそもベジタリアンの上に食堂の人とコミュニケーションが出来ないのに、今まで食事の時はどうしてたのよあんたたち? どのようにして中国を旅して来れたの? そんな横暴なのに」
「別に難しくないぜ。中国でもだいたいツーリストが行くところには、英語メニューの置いてあるレストランがあるんだ。そんでパスタとかピザが頼めるからな」
「なにーーーっっ!!! じゃあ、中国にいる間中パスタとかピザを食ってたのわがままなあんたらは!」
「そうだぜ」
なんて野郎どもだ。中国に来て今日まで一度も中華料理を食っていないとは。……じゃあ逆に問いたいが、中華料理以外になんか中国に魅力があるのか?? おおっと。口が滑った。
それにしても中華料理が嫌いなのに中国を旅しているなんて、むしろあんたたちの方がオレよりよっぽど中国を愛してるよな。実は中国人とウマがあうんだろ? たしかに似てるよな……チベット情勢とパレスチナ情勢……
「よし、食った食った。じゃあオレはもう頭痛がひどくてたまらんから、ホテルに帰る。あとは、明日のことは明日の朝集まって決めよう」
「はーい。オレも疲れた。あんたらと1日一緒にいて非常に疲れた」
ここで本日は一旦解散とし、オレと一人だけ話のわかるメガネのいい奴·エヤルは安宿に戻り、ノートパソコンを使って母国の音楽のMP3の交換などをするのであった。華原朋美とか。