本書をお使いになる方々へ
1 本書の特徴と方針
[意味による分類]
本書は、1994年に国際交流基金・日本国際教育協会(当時)から発表された(2002年改
訂)日本語能力試験(文法)の出題基準サンプル(文法的な〈機能語〉の類)を参考に
し、そのほかに、数種類の教科書(参考文献参照)の中で重要学習項目として取り上げら
れているもの、これまで能力試験に出題されたものなどを整理して編集された。
執筆者らは、2010年から改訂された日本語能力試験のレベル(N5~N1)を考慮し、こ
れらの項目を独自の判断でレベル分けして本書に掲載した。
学習者が文法形式をまとめて勉強しようとするとき、さまざまなものが脈絡なく次々と
出てくるよりは、何かのまとまりをもって体系的に提出されている方が学習の助けになる
と考え、文法形式を意味によって分類して1つの課を構成した。各課の題はその課の項目
の代表的な意味機能を考えて付けたが、その用語(例:7付帯・非付帯 など)について
は、ご批判を仰ぎたい。
1つの文法形式の意味・機能は1つではない。例えば、「~ながら」は、初級の学習項
目である「同時進行」と、中級の学習項目である「逆接」の2つの意味・機能を持つ。し
かし、この2つの意味は孤立して存在しているのではなく、連続的にその意味をカバーし
ている。
また、「~にきまっている」は、確信に近い推量を表す文法形式であるとともに、断定
的発言を表すものとも考えられる。「~はずがない」は「推量」と分類した方がいいの
か、「否定」と分類した方がいいのか、どこで線を引いて分類するのかは極めて難しい問
題である。しかし、執筆者らの立場としては、学習者が学習する際に取っ付きやすく、わ
かりやすいようにということを第一に考え、あえて分類を試みた。そのため学習者の混乱
を招かないように配慮し、それぞれの典型的な例を出して分類するという方法を取った。
1つの文法形式が複数の意味・機能を持つ場合は、それぞれのグループに収めた。例え
ば、「~によって」は、次の3つの課に収めた。
・話し合いによって解決する。 手段 2課Ⅱ・1
・その日の気分によって服を変える。 関連 13課1
・津波によって大きな被害が出た 原因 19課Ⅰ・1
[文法的性質についての記述]
文法形式を学習する上で必要なことは、まず、意味と機能を理解することである。さら
に、自分で使えるようになるためには、それを使う場面・接続のしかた・使われる動詞の
種類などについての知識を持ち、接続する言葉の制限や文末の制限などについての文法的
な性質についても知る必要がある。執筆者らは、それぞれの現場の経験から、学習者のわ
かりにくいところや間違いやすいところを押さえて、できるだけ簡単明めい瞭りょうに文
法的性質を解説しようと試みた。
[例文]
各文法形式について3~5つの例文を載せた。まず、典型的な例文を紹介し、ほかに、
接続する品詞・時制・使われる場面・話題などが偏らないように、可能なかぎりさまざま
なものを提示できるように試みた。各例文は基本的に普通体の書き言葉のものを主とした
が、当然ながら書き言葉には丁寧体のものもあるので、手紙・テレビなどのニュース報
道・スピーチ・会議の報告などに使われるものも丁寧体の書き言葉として取り入れてあ
る。
[「知っていますか」「使えますか」(各課の最初)と「練習問題」(各課の最後)]
各課に入る前にその課で学ぶべきことをどの程度知っているかを試してみる「知ってい
ますか」と「使えますか」を設けた。その課にまとめられた意味・機能を持つ文法形式を
どのくらい知っているか、知っているだけでなく適切に使えるかを試す性質のものであ
る。問題は★3、★2程度のものだけに限定して作ってある。「知っていますか」はそれら
の文法形式を知っているかどうかのチェックであり、「使えますか」は適切な使い方がで
きるかどうかのチェックである。さらに、その課で学習したことの確認のために、本文の
終わりに練習問題を付けた。その課で学んだ文法形式が適当なところで使えるか・その文
法形式を使って短文完成ができるか・文法的な性質についての知識が身に付いたか・ある
まとまりのある文章(談話)の中でその文法形式が使えるか、などを確認するためのもの
である。
[その他]
文法の力を養うための学習書であるから、説明の文の語彙はなるべく学習者の負担にな
らないようにした。漢字の提出については、漢字圏の学習者が本書の内容を容易に理解で
きるようにするため、また、非漢字圏の学習者にはなるべく漢字に慣れる機会を提供する
意味もあり、レベルに合わせて読み仮名を付けた。
2 各課の構成
•「知っていますか」「使えますか」
その課にまとめられた文法形式について、どの程度の基礎知識があるかを問うもの。
(答えはポップアップで表示)
•文法形式一覧 その課で学習する文法形式一覧。レベル別に分けて提示。レベルごとに学
習しやすいと思われる順に提示した。
•本文 見出し語
その言い換え………………【 】
使われる場面について…… W F S
例文…………………………① ② ③~
接続………………………… 接続
文法的性質と意味的特徴………▶
•練習 その課で学習したことをチェックするためのもの。レベル順に段階的に並べてあ
る。問題の種類はいろいろで、談話単位の中でどう使われるかという点を確認する問題も
取り入れた。(答えはポップアップで表示)