子育て幽霊
昔 々むかし、ある村むらに、一軒いっけんのアメ屋やがありました。ある年 としの夏なつの事 こと、夜 よるも遅 おそくなったので、アメ屋 やさんがそろそろ店 みせを閉 しめようかと思 おもっていると、トントントントンと、戸 とを叩 たたく音 おとがしました 。
「はて、こんな遅おそくに誰だれだろう?」と、アメ屋やさんが戸とを開あけてみますと、一人ひとりの女おんなの人ひとが立たっていました。「あの、アメをくださいな。」「あっ、はい。少々しょうしょうお待まちを。」アメ屋やさんは女おんなの人ひとが持もってきた器うつわに、壺つぼから水みずアメを掬すくって入いれました。「へい。一文いちもんいただきます。」「ありがとう。」女おんなの人ひとはお金かねを払はらうと、消きえるように行いってしまいました。
その次つぎの日ひ。今日きょうもアメ屋やさんが戸締とじまりをし [1] ようと思おもっていると、また戸とを叩たたく音おとがします。「あの、アメをくださいな。」やはりあの女おんなの人ひとでした。女おんなの人ひとは昨日きのうと同おなじようにアメを買かうと、スーッと、どこかへ帰かえって行いきます。
それから毎晩まいばん、女おんなの人ひとは夜深よふけ [2] になるとアメを買かいに来きました。次つぎの日ひも、その次つぎの日ひも、決きまって夜深よふけに現あらわれては、アメを買かって行いくのです。
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さて、ある雨あめの夜よる。この日ひは隣村りんそんのアメ屋やさんが訪たずねて来きて、色々いろいろと話はなし込こん [3] でいたのですが。「あの、アメをくださいな。」と、いつものように現あらわれた女おんなの人ひとを見みて、隣村りんそんのアメ屋やさんはガタガタ震ふるえ出だしたのです。「あ、あ、あの女おんなは、ひと月つきほど前まえに死しんだ松吉まつよしのかかあにちげえねえ。」「えっ!」二人ふたりは顔かおを見合みあわせました [4] 。死しんだはずの女おんなの人ひとが、夜よるな夜よるなアメを買かいに来くるはずはありません。しかし隣村りんそんのアメ屋やは、間違まちがいないと言いいます。そこで二人ふたりは、女おんなの後あとをつけてみることにしました。
アメを買かった女おんなの人ひとは林はやしを抜ぬけ、隣村りんそんへと歩あるいていきます。その場所ばしょは、「はっ、墓はかだ!」女おんなの人ひとは墓場はかばの中に入はいっていくと、スーッと煙けむりのように消きえてしまったのです。
「お、お化ばけだー!」二人ふたりはお寺てらに駆かけ込こむ [5] と、和尚おしょうさんにこれまでの事ことを話はなしました。しかし、和尚おしょうさんは「そんな馬鹿ばかな事ことがあるものか。きっと、何なにかの見間違みまちがいじゃろう」と言いいましたが、二人ふたりがあまりにも真剣しんけんなので、仕方しかたなく二人ふたりと一緒いっしょに墓場はかばへ行いってみることにしました。
すると、ァ◇ギャー、ァ◇ギャーと、微かすかに赤あかん坊ぼうの泣なき声ごえが聞きこえてきます。声こえのする方ほうへ行いってみると、「あっ、人間にんげんの赤あかん坊ぼうじゃないか!どうしてこんな所ところに?」和尚おしょうさんが提灯ちょうちんの明あかりを照てらしてみると、傍そばに手紙てがみが添そえられています。それによると、赤あかん坊ぼうは捨すて子ごでした。「手紙てがみによると、捨すてられたのは数日前すうじつまえ。それから何日なんにちも経たつのに、どうして生いきられたんじゃ?」
ふと見みると、あの女おんなの人ひとが毎晩まいばんアメを買かって行いった器うつわが、赤あかん坊ぼうの横よこに転ころがっていたのです。そして、赤あかん坊ぼうが捨すてられた傍そばの墓はかを見みると。「おお、これはこの前まえに死しんだ松吉まつよしの女房にょうぼうの墓はかじゃ!」何なんと幽霊ゆうれいが、人間にんげんの子こどもを育そだてていたのです。「なるほど、それでアメを買かいに来きたんだな。それも自分じぶんの村むらでは顔かおを知しられているので、わざわざ隣村りんそんまで。」きっと、自分 じぶんの墓 はかのそばに捨 すてられた赤 あかん坊 ぼうを、見 みるに見 みかねた [6] にちがいありません 。
和尚おしょうさんは心こころを打うたれて、松吉まつよしの女房にょうぼうの墓はかに手てを合あわせました。「優やさしい仏様ほとけさまじゃ。この子こは、わしが育そだてるに、安心あんしんしてくだされよ。」こうしてお墓はかに捨すてられた赤あかん坊ぼうは、和尚おしょうさんに引ひき取とられました。それからあの女おんなの人ひとがアメ屋やさんに現あらわれる事ことは、もう二度にどとなかったそうです。
[1] 「戸締りをする」,锁门。
[2] 「夜ふけ」,名词。深夜。
[3] 「話し込む」,动词。只顾谈话,谈得融洽。
[4] 「顔を見合わせる」,面面相觑。
[5] 「駆け込む」,动词。跑进。
[6] 「見るに見かねる」,不忍坐视不管。
育婴女鬼
很 久以前,某个村子里有一家糖果店。故事发生在某一年的夏天,天色已晚,卖糖果的心想该到时候打烊了,正要关门时,他听到“咚!咚!咚”的敲门声。
卖糖果的心想:“咦?这么晚了是谁啊?”他打开门一看,只见一个女人站在门外。“请给我一些糖吧。”那女人说。“好的,请稍等。”说着,卖糖果的从壶里舀了一些糖稀放进了那女人带来的容器里。“嗯,总共一文钱。”卖糖果的说。“谢谢你!”女人给了钱,很快就消失了。
第二天,同样当卖糖果的正要打烊时,又听到了敲门声。“请给我一些糖吧。”卖糖果的一看,还是昨天那个女人。她跟昨天一样又买了一些糖,然后“嗖!”地一下子又不知去向。
从那以后,那女人每天都在深夜来买糖。第三天、第四天,她一定会在深夜现身来买糖。
这是一个下着雨的夜晚。这天,隔壁村卖糖果的老板来此拜访,当他俩聊得起劲时,那女人像往常一样又来了。“请给我一些糖吧。”看到那个经常出现的女人,隔壁村卖糖果的老板 吓 得 浑 身 哆 嗦 说:“那、 那、 那 个 女 人, 不 就 是 一 个 月 前 死 去 的 松 吉 的 老 婆吗。”“啊?”他俩面面相觑。已经死了的女人,不可能每天深夜都来买糖啊。可是隔壁村卖糖果的老板说一定没错,肯定就是那个女的。于是,他俩决定跟在那女人后面想看个究竟。
那女人买了糖,穿过树林,往隔壁村走去。他俩紧随其后,到了那里一看,他们惊叫起来:“啊!是坟墓。”只见那女人走进了墓地,“忽”地像烟一样消失了。
“啊呀!是鬼啊!”他俩慌慌张张地跑进了寺院,将刚才发生的一切都告诉了老和尚。然而,老和尚说:“怎么会有如此荒唐的事儿呢?一定是你们看错了吧?”可是看到他俩如此认真的样子,无奈决定跟他俩一起去墓地看个究竟。
来到了墓地,他们隐隐约约地听到有“呱哇!呱哇!”婴儿的啼哭声,他们循着哭声走去一看,“啊?这不是婴儿吗?怎么会在这种地方呢?”老和尚拿着灯笼一照,只见婴儿旁边放着一封信。由此判断,这孩子是一个弃婴。“从这封信来看,这婴儿已经被遗弃好几天了。
可过了这么些天,他怎么还活着呢?”他们三人百思不得其解。
忽然,他们发现了那女人每天用来买糖的器皿就放在婴儿的身边,他们又看了看弃婴旁边的坟墓。“快看!这不就是不久前死去的松吉老婆的坟墓吗?”他们惊叫起来,你一言我一语的。哎呀!原来是女鬼抚养着这个婴儿啊!“哦,原来如此。她特意走到隔壁村去买糖,就是因为怕被同村的人认出来啊!”她一定是不忍心看到被遗弃在自己坟旁的婴儿挨饿,才这么做的吧。
老和尚见此情况深受感动,在松吉老婆的坟前合掌道:“慈悲的神仙啊!请您放心吧。我一定会抚养这个孩子的。”就这样,老和尚把遗弃在坟墓的婴儿带了回去。据说从那以后,那个女鬼就再也没有出现在糖果店了。
语法详解
(1)動詞の終止形+と(接続助詞)
表示前后两件事紧密衔接,几乎同时发生。相当于“一……就……”
* トンネルを抜けると、雪国だった。
一穿过隧道,就到雪国了。
* ドアが開くとどっと客は入り込んだ。
一开门客人们就挤了进来。
* 山の上から見下ろすと町が人目に見渡せる。
从山上往下一看,一眼就可以看到整个市镇。
(2)動詞連用形+かねる
表示主观上或感情上难以做到,这样做困难、不可能等。相当于“不能……”“难以……”“不好意思……”
* そのことは納得しかねる。
这件事难以理解。
* ちょっと断りかねる。
有些不好意思拒绝。
* お引き受けいたしかねますね。
难以承担。
小知识
提灯
江戸時代以前は、上流階級において宗教的な祭礼や儀式に使われた。江戸時代以降は蝋燭が普及したため、庶民も照明器具として使うようになった。今は主に祭りなどのイベントや看板として使用されることが多い。たとえば、「盆提灯」「看板提灯」「緑提灯」(地場·国産食材をカロリーベースで50%以上使用している飲食店や宿泊施設などが掲げている)など。「ちょうちんで餅をつく」「ちょうちんに釣鐘」などの諺がある。提灯お化けは古い提灯が上下に割れ、その割れた部分から長い舌か手が飛び出し、提灯の上半分には一つ目ないし二つの目がある妖怪。
灯笼
在江户时代以前,主要用于上流社会的宗教祭奠或仪式中。江户时代以后,随着蜡烛的普及,灯笼也开始作为照明器具在一般民众中普及开来。
现在主要用于节日庆典或是作为招牌使用。例如有“盂兰盆灯笼”“招牌灯笼”“绿灯笼(以卡路里为计算标准,所用食材中超过50%使用当地或国产食材的餐饮店或宾馆等地所悬挂的灯笼)”等。与灯笼相关的谚语有:“用灯笼捣年糕(事与愿违,干着急,事情没有进展)”“灯笼和挂钟(相差悬殊,极不相称)”等。而灯笼怪则是指旧灯笼裂成上下两段,从中间伸出一条长舌头或者一只手,而上面是一只或两只眼睛的妖怪。