日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 黑柳彻子 » 正文

トットチャンネル(50)

时间: 2018-05-30    进入日语论坛
核心提示:競馬 トットの今日したこと、といえば、結果的に考えてみて、あまり人に言えることでは、なかった。それにしても、トットがNH
(单词翻译:双击或拖选)
 競馬
 
 トットの今日したこと、といえば、結果的に考えてみて、あまり人に言えることでは、なかった。それにしても、トットがNHKの養成所に通っていた頃《ころ》から、気になっていることが、一つあった。それは、新橋駅の、NHKに行くほうの改札口《かいさつぐち》を出たところが、広場になってるんだけど、そこに、何やら大きなステージのような、家のような、そそり立つ木の壁《かべ》のような、不思議な建物が、あることだった。そして、いつも沢山《たくさん》の人が、そこに集っていた。最近では、その広場に、街頭テレビ、という、とても大きなテレビジョンが置かれたので、なおさら、人が集っていた。相変らず、テレビジョンのセットは、高くて手が出せないので、一般《いつぱん》大衆は、テレビを見たい時、こういう街頭テレビか、喫茶店《きつさてん》などで、見ていた。この街頭テレビは、NHKより半年あとに開局したNTVが、方々に置いたもの、という話だった。それにしても、前からある、あの不思議な建物は、一体なんだろう。
 トットは、丁度、ラジオの一スタの前で、大岡先生に逢《あ》ったので、聞いてみることにした。逢った、といっても、もう、その日も、大岡先生とは、五度くらい、エレベーターの前や、トイレの前で逢っていた。そして、そのたびに大岡先生は、例の、靴《くつ》を少しひきずり、体を半身にした、横ばい風の奇妙《きみよう》な歩きかたで近よると、手の甲《こう》で口をかくすようにしながら、聞くのだった。
「トットさま、どちらへ?」
 いま一スタから出て、トイレに行って帰って来たのだもの、答えは、「一スタ」に決まっていた。でも大岡先生は、何度でも、逢うたびに同じことを聞いた。トットは、段々と、それは、大岡先生が寂《さび》しいから聞いているのだ、とわかって来た。トット達《たち》、五期生の受持ちの先生、責任者としての役目は、養成が終り、トット達が仕事を始めると、ほとんど、なくなってしまった。だから、偶然《ぐうぜん》に逢うように見えるけど、それだって、大岡先生一流の、誰《だれ》も真似《まね》の出来ない独特の方法で、バッタリ逢うように、仕組んでいるのかも、知れなかった。それでいて、自分の聞きたいことだけ聞くと、本当に、あっ! という間に、姿を消してしまうのだった。大岡先生が、自分に近よって来る姿は、すぐ目に浮《う》かぶトットだけど、去って行く姿は、一度も見たことが無いように思えた。大岡先生は、自分の後姿《うしろすがた》を、絶対に見せない人だった。大岡老人と呼ばれても、聞こえないふり[#「ふり」に傍点]をする人だった。こういう大岡先生の、孤独《こどく》でもあり、また、トット達の受持ちになって、何回目かの青春を味わっているような、複雑な状態がわかってきたから、トットは、どんなに大岡先生に頻繁《ひんぱん》に逢い、同じことを質問されても、茶化したり、笑ったりすることは、しなかった。何度でも、
「一スタです」とか、「トイレです」
 とか、答えていた。でも、今日は、大岡先生に聞くことがあったので、トットは、うれしかった。
「新橋の駅の前の広場の、人が沢山、集って来るところにある建物、あれ、なんですか?」
 大岡先生の、丸い眼鏡の奥《おく》の目が、さも、大変なことを語るように、生き生きとした。
「トットさま、あれは、でございますね、競馬の馬券を売る所でございます。私は買いませんのですけれど、局のかたで、お買いになる方《かた》も、いらっしゃるようで、ございますよ」
(競馬か!)
 トットは、物凄《ものすご》く、びっくりすると同時に、うれしくなった。早く聞いておけば、よかった。でも、広場の周りは、小さい飲み屋さんが、長屋のように並《なら》んでいて、焼酎《しようちゆう》や、カストリ焼酎とか言うものを飲ませるんだと、みんなが話していたので、トット達は、近よったことが、なかったのだった。
 競馬とわかった二、三日後の今日、トットが、お昼頃、改札口を出ると、もう、人が沢山、集っていた。トットは、すっかり、うれしくなった。トットは、深呼吸をして、勇気を出すと、人々の間をかきわけて、建物の近くに寄ってみた。ほとんど男の人で一杯《いつぱい》だった。中には、どういうわけか、新聞紙を地面に敷《し》いて、寝《ね》てる男の人もいた。近づいてみると、本当に小さい窓が沢山あって、その窓には、2—3とか、2—4とか、看板が出ていた。そして、それぞれの窓口の中に、女の人の居るのが、見えた。トットは、
(やっぱり、馬券売場って、本当なんだ!)
 と、感激《かんげき》した。それからトットは、人混《ひとご》みを抜《ぬ》けると、ステージの上に、そびえ立っている木の壁《かべ》の後ろのほうに、ぐるりと廻《まわ》ってみた。
 馬を探すためだった。トットは、そこで競馬をやっているんだ! と、思ったから。
 ところが、後ろに廻ってみると、そこは、ゴチャゴチャとした、小さいカウンターつきの、飲み屋さんと、道路があるだけで、競馬をやってる風には、見えなかった。それでもトットは、念のために、二度くらい、グルグルとまわりを廻ってみた。
 どこにも馬は、いなかった。
 すっかり、がっかりしたトットは、馬券売場の窓口の、空《す》いていそうな所に近よると、中のお姉さんに聞いた。
「すいませんけど、馬、どこにいるんですか?」
 ソロバンかなんか、いじってたお姉さんは、顔を上げると、つっけんどんに、いった。
「なんですか?」
 トットは、少し、どぎまぎしながら、聞いた。
「あの……馬……。ここで競馬、やってないんですか?」
 お姉さんは、あきれたような顔に、なって、いった。
「ここに馬なんか、いませんよ」
 トットは、まだ思い切れなくて、恐縮《きようしゆく》しながらも、追及《ついきゆう》した。
「じゃ、馬、どこにいるんですか?」
 お姉さんが、トットのことを、どう思ったかは、わからないけど、もう、ソロバンのほうに、指も目も、行っていた。そして、口の中で、ブツブツと、
「中山に、居るんじゃない?……」
 といって、もう、とりつく島のない、風情《ふぜい》だった。
「中山って、どこですか?」
 なおも、しつっこくトットが聞くと、
「買わない人は、そこ、どいて!」
 と、いった。トットは、もう、どくほか、なかった。
 NHKで、この話をしたら、みんな、ドッ!! と、笑った。中には、かなり、トットのことを、馬鹿《ばか》だ! と思った人も、いたようだった。やさしい人は、
「君は、馬鹿、というよりは、空間的な感覚が、欠けてるんだよね……」
 と、なぐさめてくれた。
 でも、トットは、あの、そびえてるステージの上の壁の向う側には、広々とした空間があるもの、と、思いこんでいたのだった。そして、若々しく元気な馬が、何頭も、そこを走っているように思ったのだった。考えてみると、新橋の烏森《からすもり》に、馬が走ってるわけは、ないのに……。
「場外馬券」というシステムを、トットは知らなかったから、こんな風に考えてしまったのだった。
 でも、真相がわかってからでも、トットは、なんだか、あの壁のむこうには、やっぱり馬が走っているように思えて、ならなかった。だから、雨の日なんか、馬が濡《ぬ》れてないか、と、ふと心配したりしてしまうのだった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%