[書き下し文]子曰く、邦(くに)道あるときは言(げん)を危しく(はげしく)し、行いを危しくす。邦道無きときは行いを危しくし、言は孫う(したがう)。
[口語訳]先生が言われた。『国家に道徳に従った政治が行われている時は、正直に発言して正直に行動する。しかし、国家に道徳が実践されていない時は、正直に行動すべきだが、発言は控え目にすべきである。』
[解説]孔子のリアリズムに基づいた処世訓を示した章であり、権謀術数が渦巻く政治の世界では、正直にありのままの意見を述べて良い場合とそうではない場合があるという。国家に正しい政治が行われている時には、正直な発言と行動をしても身に危険はないが、国家が道理を見失って奸臣に独裁されている時には、正しい発言をすると自らの生命を失う恐れもある。しかし、孔子は高潔な理想を実現するために、『言葉の上での牽制(消極的な保身)』を用いても『行動の上での迎合(悪しき政治への協力)』は用いるべきではないと説いている。