[書き下し文]子曰く、徳ある者は必ず言あり、言ある者は必ずしも徳あらず。仁者は必ず勇あり、勇者は必ずしも仁あらず。
[口語訳]先生が言われた。『徳のある人は必ず優れた言葉を話すが、優れた言葉を話す人が必ずしも徳があるというわけではない。仁者は必ず勇気があるが、勇者は必ずしも仁徳を備えているとは限らない。』
[解説]孔子の仁者にまつわる論理学的な説明であり、仁者と雄弁家の違い、仁者と勇者の違いを論理的に簡潔に述べている。仁者はあらゆる側面において卓越した資質を発揮するが、中身のない雄弁家や勇者(豪傑)の場合には、人間を人間足らしめる重要な徳である『仁』が欠けている恐れがある。一つの才能や技芸に抜きん出ている人物であっても、必ずしも仁徳者であるというわけではないという当然の話を形式論理的に語っている。