[書き下し文](孔子曰く、誠に富を以てせず、亦祇(ただ)異なれりを以てす)斉の景公、馬千駟(せんし)あり。死せる日、民徳として称すること無し。伯夷?叔斉(はくい?しゅくせい)首陽(しゅよう)の下(もと)に餓う。民今に到るまでこれを称す。それ斯れ(これ)をこれ謂うか。
[口語訳]孔先生が言われた。『詩経には「人の評価は、裕福な富にはよらず、ただ富とは異なるものによる」とある。斉の景公は四千頭もの馬を持っていたが、死んだときには、人民は誰も景公の徳を褒めなかった。伯夷?叔斉は首陽山のふもとで飢え死にしたが、人民は今日までもその徳を褒めている。詩経の言葉は、こういうことを言うのだろう。』
[解説]後世に語り伝えられるような『人間の真の価値』は、経済的な裕福さ(富)ではなく、それ以外の人民が敬意を抱く『徳』にあるということを示した章。主君への忠誠を最後まで尽くして、敵国からの粟(食糧)を貰わずに首陽山で餓死した伯夷?叔斉の事例を引いて解説している。