ある春の日の事、お日さまがヒバリにお金を貸してくれと頼みました。
「ヒバリさん。すまないが、お金を十両ばかり貸してくれないか。夏には返すから」
「はい、いいですよ。その代わりに返すときは、十一両ですよ」
「わかった。助かるよ」
お日さまはヒバリから十両を借りると、喜んで帰って行きました。
やがて、夏になりました。
夏はヒバリにお金を返す約束ですが、お日さまはカンカンと照っているだけで、お金を返しに来ません。
そこでヒバリはお金を返してもらおうと、お日さまのところへ飛んで行きました。
「お日さま、もう夏ですよ。そろそろ、お金を返してくださいよ」
「・・・・・・・」
お日さまは何も答えず、強い日差しをますます強くしました。
「わあ、まぶしい! それに暑い!」
ヒバリは目がくらんで、それ以上は近づけませんでした。
そのうちに、涼しい秋になりました。
カンカンと照っていたお日さまの光も、だんだんに弱くなりました。
それでヒバリは空高く飛んで行くと、お日さまに叫びました。
「お日さま! 約束の夏は、もう終わってしまいました。早く、お金を返してください!」
すると、お日さまは、
「ああ、また今度来てくれないか。今は忙しいんだ」
と、言って、雲(くも)に隠れてしまったのです。
そこでしばらくしてからヒバリがお日さまのところへ行くと、お日さまは雨雲に頼んで大雨を降らせました。
「わあ、すごい大雨だ!」
かわいそうにヒバリは、ずぶ濡れで帰って行きました。
そんな事をしているうちに、冬になりました。
ヒバリは何度も何度もお日さまのところへ行きましたが、そのたびにお日さまは北風や雪雲に頼んで冷たい風や大雪を降らせたりするので、お日さまに会う事は出来ませんでした。
やがて、お正月になりました。
毎年ヒバリは、お正月にはたくさんのおもちを買うのですが、お日さまがお金を返してくれないので、今年はお正月のおもちを買う事が出来ません。
「ああ、おもちが食べたいな。
こんなにさみしいお正月になったのは、全部お日さまのせいだ!」
怒ったヒバリは春になると、お日さまに文句を言いました。
「お日さま! 今日こそは、お金を返してください! 本当に、返してください! 絶対に、返してください!」
「・・・・・・」
お日さまは知らん顔で、雲に隠れてしまいます。
「返せ! 貸したお金を返せ! 返せったら、返せ!」
お日さまは今でも、ヒバリにお金を返していません。
だからヒバリは今でも春になると、高い空の上で一生懸命に叫ぶのです。
「お金を返せ!(♪ピーチュクリーチュル) お金を返せ!