その欲張り男がとなりの家から、産み立てのたまごを三つもらいました。
欲張り男はとても喜んで、そのたまごを指でいじりながら考えました。
(さあ、このたまごをヒヨコにかえして、ニワトリに育てよう。
するとそのニワトリが、たまごを産むだろう。
一羽が十個のたまごを産んだとして、あわせて三十個だ。
それをまたヒヨコにかえしてニワトリに育てる。
そうやってどんどんニワトリをふやしたら、今度はそのたまごを町へ売りに行こう。
毎日毎日、荷車にたまごを山のようにつんで町へ売りに行くんだ。
するとお金がどんどんもうかって、おれは村一番の金持ちだ。
うっししし。
さて、金持ちになったら何をしようか?
そうそう、まずはおいしい物をたくさん食べよう。
それから大きな牛を何頭も買うんだ。
牛を育てるためには、たくさんの草がいるから、広い田んぼや畑も買わなくちゃな。
でも、一人で牛を育てたり、田んぼや畑をたがやすことは出来ないから、大勢の人をやとうとしよう。
それには、こんなちっぽけな家じゃ駄目だ。
うーんと広い家をたてなくちゃな。
そうなれば、もうおれは長者さまだ)
欲張り男は、すっかり長者になった気分で、みんなをどうやって働かそうかと考えました。
(まず、なまけ者は許さないぞ。
仕事もしないで遊んでいるやつは、こうやって首をしめて、
『しっかり働かないと、ひねりつぶしてしまうぞ。』
と、おどかしてやろう)
欲張り男は手に持っていた三つのたまごを、思わず握りしめました。
そのとたん、
グシャ!
と、いう音がして、大切なたまごが割れてしまいました。
欲張り男は泣きそうな顔になり、
「しまった。長者さまになりそこなった」
と、言ったそうです。