その一休さんが、大人になってからのお話です。
一休さんが近江の国(おうみのくに→滋賀県)のあるお寺にいた時の事、左目が悪い老人が夢の中に現れて言いました。
「わたしは、三年前に死んだ喜介(きすけ)と申します。
隣村に住む角助(かくすけ)の父親で、今はキジに生まれ変わっています。
何日かすると、この地で役人がタカ狩りをします。
タカに追われたわたしは、このお寺へ逃げ込んできます。
そしたらどうか、わたしをかくまってください。
わたしは人間だった時に、左目をけがで失いました。
キジに生まれ変わった今でも、左目は見えません」
老人は泣きながら、そう語りました。
何日かたつと、お寺のある山里で役人たちがタカ狩りを始めました。
するとタカに追われたキジが、お寺の庭に逃げ込んできました。
そのキジの左目を見ると、病気なのか真っ白です。
それを見た一休さんは、夢の話を思い出しました。
「これは、夢に出て来た喜介」
一休さんはそのキジをかかえると、お寺の土間(どま)のお釜(かま)に入れて隠しました。
そしてタカ狩りが終わると一休さんはキジを連れて、隣村の角助の家をたずねていきました。
そして夢の話を、くわしく聞かせました。
話を聞いた角助は、目に涙を浮かべると、
「そう言えば親父は、生まれ変わるならキジに生まれ変わって空を飛びたいと申していました」
と、言って、一休さんから父親の生まれ変わりのキジをもらい受けると、一生大切にしたという事です。