「観音さま。おれは何をやっても運にめぐまれず、失敗ばかりです。どうかおれにも、幸運を授けてください」
すると満願の前夜、夢枕に観音さまが現れて、ありがたいお告げをしてくれました。
「お前はよくよく運のない男だが、実に正直に生きておる。
そのほうびに、一つだけ運をさずけよう。
明朝、お堂から飛び降りてみよ」
「えっ、飛び降りるのですか?」
男が目を覚ますと、ちょうど夜明けでした。
「もしかすると、おれは死ぬかも知れない。
しかし、観音さまのお告げだ。
このまま不運続きで、生きていくよりは、・・・ええい!」
男がお堂から飛び降りると、その拍子に目玉が二つ抜け落ちてしまいました。
「ああっ、これは大変だ!」
男があわてて目玉を拾うとすぐにはめたのですが、そのはめた目玉の片方は、前後ろが反対だったのです。
しかしそのおかげで、男は腹の中が手に取るように見えるのです。
「なるほど、なるほど、体の中は、こうなっていたのか」
その後、男は医者になって大もうけしたということです。