息子は毎日ご飯をたらふく食べて、あとはグウグウ寝てばかりです。
「お前も寝てばかりいないで、少しは働いておくれよ」
「・・・・グー」
お母さんが頼んでも、息子はいびきで返事をするだけです。
息子が少しも働かないので、この家はとても貧乏でした。
そして寝てばかりいるこの息子を、みんなは『寝太郎』とよびました。
そんなある日、寝太郎が突然ガバッと起きあがると、お母さんに言いました。
「白い着物と、えぼし(→むかしのボウシ)を買っておくれ」
寝てばかりの寝太郎が突然しゃべり出したので、ビックリしたお母さんはあわてて町へ行って白い着物とえぼしを買ってきました。
寝太郎は白い着物を着てえぼしをかぶると、隣の長者(ちょうじゃ)のところへ出かけていきました。
そして長者の家の広い庭に生えている高いスギの木にスルスルと登ると、長者に低い声で言いました。
「これこれ、長者どん」
木の上の白い着物の寝太郎を見て、長者はてっきり神さまだと思いました。
「へへっー。これは神さま」
ペコペコと頭を下げる長者に、寝太郎は言いました。
「そうじゃ、わしは神さまじゃ。これから言うことを、良く聞くのだ。この家の娘を、隣の寝太郎の嫁にするのじゃ、言う通りにしないと、天バツが下るぞ!」
長者は頭を地面にこすりつけて、あわてて返事をしました。
「ははーっ。神さまの言う通りにいたします」
やがて長者の娘はお金をたくさん持って、寝太郎の家へ嫁に来ました。
それから寝太郎と嫁さんとお母さんの三人は、持ってきたお金で幸せに暮らしました。