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一、竹青荘の住人たち(7)

时间: 2025-06-27    进入日语论坛
核心提示:湯気とともに、黒人が脱衣所に出てくる。予期せぬことが重なってたじろぎ、走は背後の洗濯機に尻をぶつけた。黒人は、「おや」と
(单词翻译:双击或拖选)

  湯気とともに、黒人が脱衣所に出てくる。予期せぬことが重なってたじろぎ、走は背後

の洗濯機に尻をぶつけた。黒人は、「おや」というように走たちのほうを見た。タオルで

体を拭きながら、

「こんばんは、ハイジさん」

  と、まったく訛なまりのないアクセントで清瀬に挨拶する。「そちらは?」

「新入りの蔵原走だよ。走、彼は留学生のムサ・カマラ。二〇三号室の住人で、理工学部

の二年生だ」

「よろしく、走」

  ムサは全裸のまま、洗練された動作で手を差しのべてきた。握手するという習慣のない

走は、ややぎこちなくムサの手を握った。

  ムサの上背は走と同じぐらいで、思慮深そうな静かな目をしている。それまで会った住

人たちが騒がしかっただけに、走はようやく常識的な穏やかさを持つ人間と知りあえて、

少しホッとした。しかし気になることもある。

「どうして、電気をつけずに風呂に入ってたんですか?」

  走の問いかけに、ムサは明るい笑みをひらめかせた。

「自分を鍛えるためです」

  と、ムサは言った。「暗い場所で水に入ることは、私たちに大きな不安をもたらしま

す。しかし私は、あえてそうすることによって、自分を見つめようと心がけています。走

もチャレンジしてみてはどうですか」

  ムサの日本語には崩れがないだけに、話し言葉としては堅苦しく響き、珍妙なおかしみ

があった。

「やってみます」

  そう答えながら、ここにもまた変人がいた、と走は思った。

  清瀬とムサが脱衣所から出ていき、走はようやく一人になって息を吐いた。

  服を脱ぎ、浴室の電気をつけて洗い場で体をこする。しばらく銭湯にも行けなかったの

で、ちゃんと体を洗うのはひさしぶりだった。走は体を洗い終えると、思い立って電気を

消してみた。

  ムサが言うとおり、暗いなかで湯に入るのは、なんとなく心もとない気分になる行為

だった。しかも、走にとってははじめて来た家の風呂だ。勝手がわからなくて、湯船の内

部にあった段差に脛すねをぶつけた。高齢の大家のために、足台として一段設けられてい

るのだろう。

  走は手探りで腰を落ち着け、ぬるくなりかけた湯のなかに足をのばした。暗闇だと、水

が重く感じられる。体を動かすたびに風呂場に反響する水音も、心なしか大きく聞こえる

ような気がした。

  走は目を閉じた。新しい生活がはじまることへの恐れと不安が、走と一緒に湯に浮いて

いる。「金は振り込むから好きにしろ」と、投げやりな調子で言った両親の失望にあふれ

た顔。毎日毎日走りつづけた楕円のトラックから見える家並み。あからさまな侮ぶ蔑べつ

を浮かべ、チームメイトが乱暴に閉めたロッカーの音。そういうものが胸をよぎって、走

は鼻のうえまで湯に浸かった。

  だんだん息苦しくなってくる。それでも走は空気を求めず、いつもの癖で自分の心音を

数えた。走っていて、これよりも苦しいときはいっぱいあった。肺が充血しきって、喉も

とまで血の味がこみあげてくるようなときが、たくさんあったのだ。それでも走ったのは

なぜだったのか。走ることに快楽を見いだしていたからだろうか。だれにも、自分自身に

も、負けたくなかったからだろうか。

  位置がはっきりわかるほど、心臓が激しく鼓動しはじめる。濡れた手で耳をふさいで

も、うるさいほど体中に響く。走はとうとう、湯から顔を出して空気を吸いこんだ。同時

に、つぶっていた目も開ける。

  薄暗い浴室の窓から、母屋の隣にある竹青荘がぼんやりと見えた。先ほどよりも、明か

りのついた窓が増えていた。光は闇に沈んだ庭に、柔らかく窓の輪郭を落とす。

  ムサさんはもしかしたら、この光景を見ながら風呂に入るのが好きなのかもしれない

な、と走は思った。

  あてがわれたばかりの竹青荘の自室に戻ると、清瀬の毛布が置いてあった。

  部屋のあちこちで家鳴りがしている。特に天井付近の軋みがひどい。ひっきりなしに、

枯れ枝を折るような音がする。

  これからここが、俺の居場所になる。

  走は毛布をかぶって横たわった。鼻先に畳のにおいを感じた。家鳴りはつづいていた

が、野宿する夜に比べて心は安らかだった。

  目を閉じると、眠りはすぐに訪れた。

  ムサ・カマラは竹青荘の玄関で清瀬と別れ、自室に戻るために二階に上がった。

  ここに来たばかりの去年の春は、木でできた家というのがどうにも不安で、廊下を歩く

のもおっかなびっくりだった。故郷にあるムサの家族が住む家は、コロニアル風の石造り

の洋館だ。隣室の話し声が聞こえてくる薄い壁や、すれ違うのにも苦労するほど狭い廊下

など、想像もできなかった。

  だがいまでは、ムサは竹青荘という建物自体も、そこに住む同年代の住人たちのこと

も、とても好きになっていた。

  ムサは、母屋の風呂場で紹介された走のことを考えた。走ともうまくやっていけるとい

い。なにかスポーツをやっているらしき俊敏な動作と、少し戸惑ったようにムサを見た、

意志の強そうな目が思い起こされる。たぶん、とムサは思った。たぶん、走もすぐにここ

に馴な染じめるでしょう。

  ムサの部屋のひとつ手前、廊下の左側に三室並ぶうちの、真ん中にある二〇二号室のド

アが少し開いていた。ムサは通りがかりに、なかを覗きこむ。その部屋の住人である社会

学部四年の坂さか口ぐち洋よう平へいと、ムサの部屋の向かいの二〇五号室に住む商学部

三年の杉すぎ山やま高たか志しが、一緒にテレビを眺めていた。

「こんばんは」

  だれかと話したい気分だったので、ムサは声をかけた。部屋にいた二人は振り返り、

「おう、入れよ」と気楽に勧めてきた。

  水滴のついた缶ビールが差しだされ、ムサは畳のうえに正座する。

「キングさんは、またクイズ番組を見ているのですか」

  ブラウン管のなかで早押しする芸能人たちを眺め、ムサは少しあきれた。二〇二号室の

坂口は、ビデオに録画してまで、すべてのクイズ番組を見ることを趣味としていた。竹青

荘では若干の揶や揄ゆとともに、キングと呼ばれている。「クイズ王」の意だ。

「当たり前だろ」

  と言いながら、キングは手元に置いてあったティッシュペーパーの箱を猛然と叩いた。

そして、

「カラカラ帝の公衆浴場!」

  と、出題されたクイズの答えをテレビに向かって大声で叫ぶ。ティッシュの箱が、早押

しボタンの代わりなのだ。

「キングさんとクイズ見てると、飽きがこないよ」

  杉山が、ビールを飲むようにムサに手で勧めながら笑った。「すごいリアクションをす

るから」

  杉山は「神童」というあだ名だ。ムサは最初、こんなに物静かな話しかたをするひと

が、どうして「震動」なのかといぶかしく感じた。神童はすぐに、「それはちがうよ」と

教えてくれた。

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