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三、練習始動(2)

时间: 2025-06-27    进入日语论坛
核心提示:清瀬は、これを見越していたのだろうか。神童とムサは、基礎体力が充分にあるようだし、双子とキングは、サッカーをやっていたら
(单词翻译:双击或拖选)

  清瀬は、これを見越していたのだろうか。神童とムサは、基礎体力が充分にあるようだ

し、双子とキングは、サッカーをやっていたらしい。サッカーならば、練習にロードワー

クも組みこまれていただろうし、走ることに慣れているはずだ。ユキがしていたという剣

道でも、走りこみはするし、重い筋肉がつかないから長距離に応用が利く。

  すぐに音ねを上げると思っていたけれど、案外いいところまで行くかもしれない。走り

終えた面々を見て、走は少し考えを改めた。もちろん、すべてはこれからの練習次第だ

が、清瀬が言うとおり、可能性を秘めていることはたしかだ。「適当に合わせておけばい

い」などと嘯うそぶいて、放っておくことはできない気分になってきた。

「走り終わったら、体をほぐすようにしないといけません」

  走はユキを揺すり起こした。「土手をゆっくりと往復して走ってください。呼吸が整っ

たらストレッチして、座って休憩するのはそれからです」

  じっとしているのは苦手だし、今朝はまだ走りたりない気がする。走はストレッチのや

りかたを教え、ジョータに腕時計を預けると、まだ河原にたどりつかないニコチャンと王

子と清瀬を迎えにいくことにした。

  堤防を下りて道に出たところで、早速ニコチャンと行きあった。

「おう、走」

  ニコチャンは、ぜえぜえ喘ぎながら必死に走っていた。「体は重いし、肺は苦しいし

で、どうにもだめだ」

  陸上競技から長く離れているあいだに、ニコチャンの体は走りを忘れてしまったよう

だった。

「まずは禁煙とダイエットだなあ」

  と、河原を目指しながらニコチャンは言う。ニコチャンと別れ、走は来た道をさらに

戻った。

  丘の住宅街の裾野あたりで、王子が行き倒れていた。清瀬がスポーツドリンクのペット

ボトルを持ってかたわらにしゃがみ、王子を介抱してやっている。

「みんなはもう着いたか?」

  清瀬に問われ、走はうなずく。

「ニコチャン先輩とは、さっきすれ違いました」

「遅いな」

「禁煙とダイエットをするらしいです」

「いい心がけだ。あとのやつらは?」

「一キロを五分弱ってところでしたね」

「彼らの走りをどう思った?」

「まだ余裕がありそうです。本格的に走ったことがないわりには、フォームのバランスも

いいし」

  うん、と清瀬は満足そうだ。しかし懸案もある。いま、道ばたでぐったりしている王子

の存在だ。

「あの、王子さんは大丈夫なんですか」

「大丈夫なもんか」

  と王子本人が答えた。「もう、立つのもいやだ。走、アオタケまで背負っていってよ」

  長い距離を走ることならいくらでもできるが、重いものを持つのは自信がない。走が

困っていると、清瀬が「駄目だ」と首を振った。

「歩いてもいいから、河原まで行こう。自分の足で、五キロという距離を体感するのが大

切なんだ」

  清瀬の我慢強さを、走は意外に感じた。走りはじめるまでは、強権を発動したり、夕飯

のメニューで圧力をかけてきたりと、竹青荘の独裁者ぶりを発揮していたのに。走りだし

てからは、清瀬は各自のペースを尊重する方針のようだ。自分の力で最後まで走り抜くさ

まを、黙ってそばで見守ろうとしている。

  ハイジさんは、俺がいままで知りあった監督やコーチとは、ちょっとちがう。走はふい

に、落ち着かない気分になった。それが胸に芽生えた期待のためなのだとは、そのときに

は気づかなかった。走は「気の合う指導者」というものに会ったことがなかったので、無

意識のうちに期待を押し殺すようになっていたのだ。

「せめて、帰りは電車でもいいことにしない?」

  王子の提案を、清瀬は無言で却下した。

「歩いていれば、そのうち走りだしたくなりますよ」

  自分のなかに起こった揺らぎをすぐに忘れ、走は王子に言った。走自身は、ちんたら歩

くのが子どものころから苦手だった。足を動かすうちに、いつのまにか走ってしまってい

る。そのほうが目的地に早くたどりつけるし、肌に感じる風と高まる鼓動が心地いいから

だ。

「運動が嫌いな人間だっているんだよ」

  やれやれというように、王子は立ちあがった。「あ、ちょうちょ」

  王子の視線を追って振り返ると、白い花びらのような蝶が、走と清瀬の背後をふわふわ

と横切るところだった。朝の太陽がちょうど、薄くなめらかな日差しを角の家の軒先から

投げかけた。

  三人はしばらく、光の帯を渡る蝶を眺めた。

「あせらず歩こう。そうすればきっと、走れるようになるから」

  清瀬が言った。王子に対してであると同時に、自分自身に言いきかせているような口調

でもあった。

  蝶が風に乗って舞うように、ひとは地面を蹴って走る。走にしてみれば、呼吸するより

も自然で当たり前の流れだが、そうではないひともいるのだ。不思議だな、と走は思っ

た。

  これまでほとんど、陸上を志している人間としか、走はつきあいがなかった。生活の大

部分が練習で占められ、友人も教師も陸上関係者が多かった。

  だから知らなかった。滅多に走ることがなく、少し走っただけでも苦痛を訴えるひとが

いることを。走りたいと願っても、なんらかの事情によって思う存分走れずにいるひとが

いることを。

  俺はいままで、なにも考えず、なにも感じずにいたんだ、と走は思った。「速く長く走

れる」という同じ特性を持った人々が、ひとつの目標のもとに集う部活動。その狭い人間

関係のなかで生きることに必死だったからだ。

  素人が箱根駅伝を目指す。途方もなく無謀な挑戦の、練習第一日目の朝から、すでにし

て走は驚きに打たれていた。走れる力がありそうなのに、走ることにまったく興味を示さ

ずに生きてきた、双子をはじめとする人々。故障やブランクによって、思うように走れず

にいる清瀬とニコチャン。脚のある動物にとっての基本行為とも言えるのに、走ることが

いやでいやでたまらないらしい王子。

  俺が考えていたより、世界はずっと複雑なものだったんだ。でも、俺を混乱させるよう

な、いやな感じの複雑さじゃない。

  走はそんなことを思いながら、水辺を目指し飛んでいく蝶を目で追った。

  その日の夕方、走が大学から戻ると、竹青荘の庭に住人たちが並んで立っていた。帰宅

したところを、待ち受けていた清瀬に次々と捕獲されたらしい。

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