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八、冬がまた来る(13)

时间: 2025-06-27    进入日语论坛
核心提示:「褒めすぎですよ、走」とムサは照れたが、満場一致で二区を走ることが決定した。三区と四区を走る双子についても、反対意見は出
(单词翻译:双击或拖选)

「褒めすぎですよ、走」

  とムサは照れたが、満場一致で二区を走ることが決定した。

  三区と四区を走る双子についても、反対意見は出なかったし、当人たちも乗り気だっ

た。

「三区って、海沿いを走る道でしょ。景色がいいよな」

  とジョータ。

「小田原でカマボコ買っていい?」

  とジョージ。

  五区は神童でいいとして、問題は六区、山下りのユキだ。

「なんで俺を六区にする」

  と、ユキは清瀬に説明を求めた。

「このあいだの試走で、きみは姿勢が安定していた。ふつうは、あれだけの急斜面を駆け

下りると、へっぴり腰になるものなんだが」

  清瀬はちらりと、あぐらをかいたユキの脚を見た。「それにきみは……脚が太い」

「なに?」

「いや、褒めてるんだ。とにかく足腰が丈夫じゃないと、六区は話にならないから」

「頑丈だけが取り柄みたいに。そんなこと言って、俺が怪我でもしたらどうするんだ」

「いいじゃないか。きみは司法試験に合格済みだ。卒業後に、本気で陸上をやる機会もな

いだろう」

  ニコチャンが、「おいおい、そんな無責任で残酷なこと……」と口を出したが、ユキは

案外平然と、「それもそうか」と清瀬の言葉を受け入れた。理にかなっていれば、どんな

冷徹な意見も飲みこんでみせる。ユキの性格を見事に把握した説得法だ。走は改めて、清

瀬の人間操縦術を畏怖した。

「七区のニコチャン先輩と、八区のキングだが」

  と、清瀬は話を進めた。「復路のこのあたりまで来ると、選手がばらけて、一人きりで

走る局面も出てくると思う。まえにも後ろにも、ほかのチームの選手が見えない。そうい

うときでも、ニコチャン先輩とキングなら、あせらず油断せず、確実に自分のペースで走

れるだろう。シード権争いも激しくなってくるから、地味だが重要な区間だ」

「シード権、獲とるつもりなの?」

  ジョージがおずおずと尋ねた。

「当然だ」

  と、清瀬は断じた。「さて、裏の二区、復路のエース区間とも言われる九区には、走を

エントリーする。アンカーの十区は、箱根駅伝に出ると言いだし、きみたちを巻きこんだ

俺が、責任をもって締める」

  清瀬は、自分と走については、簡単な説明にとどめた。だが走は、箱根駅伝にかける清

瀬の思いを、充分に感じ取っていた。九区と十区で、自分たちがどんな走りを見せなけれ

ばならないのかも。

  走は清瀬を見た。清瀬は黙って、走にうなずきかけた。

「以上。なにか疑問や意見のあるものは?」

  挙手するものはだれもいなかった。清瀬の確信に引きずられる形で、全員が、箱根駅伝

をいよいよ具体的なものとして考え、闘志を湧き立たせていた。

「よし。二十九日の区間エントリー発表まで、いま話したことはもちろん部外秘だ。それ

ぞれ自分でイメージトレーニングし、走る区間をよく研究しておいてほしい」

  清瀬は酒の入ったコップを手に取り、さて飲もう、と言った。「俺たちなら、絶対にう

まくいく。双子」

  呼びかけられて、ジョータとジョージは顔をあげた。

「頂点を見せてあげるよ。いや、一緒に味わうんだ。楽しみにしてろ」

  清瀬は恐れを知らぬ王様のように微笑んだ。

  飲み会が佳境に突入してから、走は清瀬にそっと近づいた。

「ハイジさん、脚の調子がよくないんじゃないですか」

「なぜ?」

  清瀬は穏やかに問い返し、コップに手酌で酒をついだ。走は言葉に詰まった。清瀬が弱

音を吐くわけがない。だが、走の胸には疑念が渦巻いていた。

  ハイジさんはユキ先輩に、「卒業後に、本気で陸上をやる機会もないだろう」と言っ

た。あれは本当は、自分のことじゃないんですか?  あなたは、もう走れなくなってもい

い覚悟で、今回の箱根駅伝に臨もうとしてるんじゃありませんか?

  想像するだけで、怖かった。走れなくなるのは、走にとって死ぬのと同じだ。清瀬に

とっても、そうだと思う。それなのに清瀬は、

「きみが心配するようなことは、なにもないよ」

  と笑ってみせるのだ。「ほら、走も飲め」

  走はなにも言えず、清瀬がついでくれた酒を、不安ごと一息に飲み干した。清瀬は、袖

口のほつれたドテラを羽織っていた。もうすぐ、すべての季節を竹青荘の住人たちととも

に過ごしたことになる。

  清瀬とはじめて会った夜を、走は思い出す。なにもかもがはじまった夜を。

  懐かしいような、待ち遠しいような、不思議な感覚が胸にきざした。

  竹青荘の住人たちは、十二月に入ってからもひたすら練習をつづけ、ボロアパートで全

員そろって、静かな年越しをした。

  大晦日には近所の神社に除夜の鐘をつきにいき、元旦には清瀬の作った雑煮を食べた。

  緊張は刻一刻と高まっていったが、それさえも心地よかった。一人ではなかったから

だ。竹青荘にいれば、ずっと一緒に練習し、生活してきたものの気配を、感じることがで

きた。

  一人ではない。走りだすまでは。

  走りはじめるのを、走り終えて帰ってくるのを、いつでも、いつまでも、待っていてく

れる仲間がいる。

  駅伝とは、そういう競技だ。

  そして、一月二日。

  箱根駅伝がはじまった。

  それは、十人で挑んだ一年間の戦いの、終着点だった。同時に、箱根駅伝があるかぎり

語りつがれる十人の、最初で最後の、激しい戦いのはじまりだった。

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