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十、流星(7)

时间: 2025-06-27    进入日语论坛
核心提示:「ユキ先輩のお母さんって、若くて美人だね」伊達巻きをまるごとかじっていたジョータは言った。「ところで、このままだとユキ先
(单词翻译:双击或拖选)

「ユキ先輩のお母さんって、若くて美人だね」

  伊達巻きをまるごとかじっていたジョータは言った。「ところで、このままだとユキ先

輩、区間賞を取っちゃうんじゃない?」

「ユキはその事実に気づいてなさそうだがな。真中大のやつも、ユキと同じぐらいいい

ペースだから、微妙なところだろう」

「あー、やきもきする!  ユキ先輩に、タイムを教えてあげたいよ」

「どうやって」

「念力でもなんでも使ってさ」

  食べかけの伊達巻きをスポーツバッグにしまい、ジョータは真剣に携帯を眺めはじめ

た。「あと二十分もしないうちに、ニコチャン先輩の出番だね」

  画面にはトップの房総大と、ほぼ一分半の差を追う六道大の選手が映った。いよいよ山

下りを終え、箱根湯本駅へ向かうところだ。区間賞を狙う真中大の選手は、順位を上げて

八位につけていた。ペースは依然、落ちていない。

「ユキはどうだ」

「映らないなあ。箱根湯本まで出ないと、下位チームはあんまり映してもらえそうにない

よ」

  真中大のタイムに気をつけるようジョータに言い、ニコチャンは最後の調整に入った。

駐車場のなかを軽く走り、体をほぐす。

  午前九時。房総大の選手が、トップで中継所に入ってきた。タイムは六十分四十六秒。

つづいて六道、大和の順に、襷が受け渡された。ニコチャンは急いで、中継地ライン近く

にいるジョータのところへ戻った。

「すごいよ!」

  ジョータは興奮していた。「平地に入っても、スピードが衰えてない。頑張ってるよ、

ユキ先輩!」

  携帯の画面には、箱根新道とのわかれ道あたりで、帝東大の選手をかわすユキの姿が

映っていた。十四番目を走る寛政大は、前方に東体大をしっかりととらえていた。

「よし、いいぞ!」

  ニコチャンはジャージを脱いだ。あとは、ユキが区間賞を取れるかどうかだ。

「真中大は」

「もうすぐ肉眼で見える」

  ジョータは携帯から顔を上げ、「来た!」と叫んだ。

  線路沿いを走ってきた真中大の赤いユニフォームが、いままさに道をそれて中継所に

入ってくるところだった。区間賞候補なのはわかっているから、歓声がひときわ高まる。

真中大の襷が受け渡された。

「記録は!」

「六十分二十四秒」

  携帯に映しだされるテレビ画面の表示を、ジョータが読みあげる。雪道だったわりに

は、いいタイムと言えるだろう。十キロのタイムが二十八分台の、六道大の田村ですら六

十分四十八秒かかっている。

  中継所では、各校が次々に襷リレーしていく。テレビ画面には、すぐそこまで来たユキ

が映っている。

  ユキ、もう少しだ。係員に呼ばれ、ニコチャンは中継ラインに立った。あとはもう時間

との戦いだ。横で東体大の選手が襷を受け取り、走りだしていく。ユキのタイムを腕時計

で計る、ジョータの声が聞こえる。

「六十分十七秒、十八、十九」

  ユキが中継所に入ってきた。歯を食いしばり、はずした襷を右手に持っている。沿道の

見物客から、真中大の選手のタイムを教えられたのかもしれない。最後の直線で全力を振

り絞ろうとしていた。

「ユキー!」

  ニコチャンは吠えた。ジョータが悲鳴のように、「六十分二十四秒」と言った。見物客

からどよめきが起こる。襷はまだニコチャンの手に渡っていない。ユキは区間賞に一歩及

ばなかった。

  だがニコチャンはそのとき、タイムの存在を忘れた。ユキの目が、まっすぐにニコチャ

ンを見ていたからだ。ユキは、区間賞のことなど考えていなかった。ただ、少しでも早く

襷をニコチャンに渡す。それだけを考えて、平坦なラスト三キロを乗り越えたのだ。ニコ

チャンには、それがわかった。襷を渡されたときに触れた、寒風にさらされつづけたにも

かかわらず熱く湿ったユキの指先が、それを教えていた。

「よくやった」

  とニコチャンは囁いた。

「疲れた。あとは任せます」

  ユキはニコチャンの背中を叩き、震える足をなんとか踏みしめて、倒れるのを防いだ。

「ユキ先輩!」

  係員から毛布を奪い取ったジョータが、駆け寄っていってユキを支えた。「惜しかった

けど、すごかったよ!」

「惜しい?  なにが?」

  ユキはペットボトルの水を飲み、やっとのことで声を出す。

「区間賞だよ。ユキ先輩のタイムは、六十分二十六秒。あと二秒速かったら、区間賞とタ

イだったのに」

「そうか」

  二秒。ユキは笑った。たったの二秒。一呼吸するうちに過ぎていくような、わずかな時

間。そんな僅差で、俺はこの区間の一番になりそこねたのか。

「まあいい」

  とユキは言った。「その二秒は、俺にとっては一時間ぐらいある」

  ジョータは、シューズを脱いだユキの足裏を見て泣きそうになった。親指のつけ根にで

きたマメが、べろりと けて血がにじんでいる。この一年間で、足の裏はすっかり皮が厚

くなっていたのに。箱根の山を駆け下りるのがどれだけ大変なことか、まざまざと知った

思いがした。

「もちろん、充分だよ。ユキ先輩はかっこよかった」

  涙声になったジョータの頭をなでてやり、ユキは小田原の町へつづく道を見やった。

  任せましたよ、ニコチャン先輩。

  最前、小田原中継所にいるときに清瀬がかけてきた電話の内容を、ニコチャンは走りな

がら思い起こしていた。清瀬はふだんと変わらず淡々と、

「調子はどうですか、ニコチャン先輩」

  と言った。

「いつもどおりだなあ」

「それはなにより。今日はいつもどおり走ってください」

「俺には期待してねえってことか?」

「まさか。ユキが予想以上に走ってくれてますが、それに引きずられないでください、と

いうことです」

  ニコチャンは「ふん」と鼻を鳴らした。ユキの力走に感激し、自分の実力を見失うほど

熱しやすくはないつもりだ。

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