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十、流星(26)

时间: 2025-06-27    进入日语论坛
核心提示:関係者しか入れないとはいえ、ゴール地点もひとがひしめきあっている。居場所を求めて、走たちはビルの壁のくぼみに収まった。ニ
(单词翻译:双击或拖选)

  関係者しか入れないとはいえ、ゴール地点もひとがひしめきあっている。居場所を求め

て、走たちはビルの壁のくぼみに収まった。ニラはさっきから、葉菜子に抱えられて震え

ている。尻尾は後ろ足のあいだに隠れ、耳は情けなくへたったままだ。

  中型犬だから、ずっと抱いているのは疲れるだろう。走は、「俺が」と言いかけ、紙袋

を持っていたことを思い出した。袋を地面に置き、改めて申し出ようと身を起こす。とこ

ろがジョータも同じタイミングで、葉菜子の状況に気づいたらしい。

「俺に貸して」

  と、葉菜子からニラを抱き取った。「けっこう重い。葉菜ちゃん、力持ちだね」

「野菜を運んでるから」

  葉菜子は少し恥ずかしそうに笑う。走は行き場をなくした両手を、ジャージのポケット

につっこんだ。ニコチャンとユキはにやにやし、神童とムサは見て見ぬふりをし、王子は

スポーツバッグから出した漫画を読んでいた。葉菜子が、「あ、それ私も読んでます。お

もしろいですよね」と王子と話しはじめたのを見計らい、走はジョータに近づいた。

「ジョージが、勝田さんに告白するって言ってた。抜け駆け禁止だって」

  そう囁くと、ジョータは「うそっ」と素っ頓狂な声を上げた。ニラの耳がひくっと動

く。

「じゃあ俺もする!」

  つれションじゃないんだから、と走は思ったが、わくわくしはじめたらしいジョータの

表情を見て、笑ってしまった。

「俺もしようかな」

「なにそれ、どういうこと。え、走もやっぱり葉菜ちゃんを……」

  ニコチャンに呼ばれた走は、騒ぐジョータからさっさと離れた。

「ハイジの走りをどう思う。やっぱり脚が痛むんじゃねえか?」

  ニコチャンが差しだす携帯電話の小さな画面には、十五キロの通過タイムが表示されて

いた。

  十区を走る六道大の一年生は、区間新記録を出すペースで独走中だ。藤岡の悔しさを晴

らしてみせるとばかりに、気迫に満ちた走りだった。房総大は追いつけそうもない。よほ

どのことがないかぎり、六道大が優勝するのはもはや明白だ。

  清瀬の十五キロの通過タイムは、六道大に次いで二番目のペースだ。だが、ずっと近く

で見てきたからこそわかる。画面に映しだされる清瀬は、わずかに苦痛の色を見せてい

た。

「ハイジさんは今朝、医者に痛み止めを打ってもらってました」

「やっぱりな」

  ニコチャンは頭を き、ユキはため息をついた。

「無理をするなと大家さんから伝えてもらっても、無駄だろうね」

「東体大の通過タイムは?」

  と走は聞く。

「三番目のペースで走ってる。途中でちょっとリズムが乱れたが、また持ち直したみてえ

だな」

「向こうも必死だからねえ」

  ニコチャンとユキの言を受け、走は力強く言いきった。

「ハイジさんは大丈夫です」

「その根拠は?」

「大丈夫だと約束してくれました」

  ユキは哀れむように走を見た。

「何度だまされても懲りないな、走は」

  いいんだ。清瀬がやがて来る方角を、走は見やった。いくらでもだましてくれてかまわ

ない。ハイジさんが走ると言うなら、俺は待つ。ハイジさんの渾身の走りを目にする瞬間

を、黙っていつまでも待つだけだ。

  品川駅を過ぎたあたりから、高いビルが目立ちはじめる。十六・六キロ地点の芝五丁目の

交差点を左に折れ、清瀬は第一京浜から日比谷通りへ入った。車線が広がり、いよいよ都

会らしい風景になる。

  両側に隙間なく建つビル群。それでも意外に緑が多いことに、走っていると気づく。芝

の増上寺前を通過。堂々たる山門前でも、見物客が声援を送る。

  交通規制された広い道を、独占して前進する。右脚はいまや、地面を蹴るたびに熱く鋭

い痛みを感じさせるようになっていた。だが、かばっている場合ではない。東体大とのタ

イム差は、どれだけ縮められただろう。開いているということだってありうる。ここでス

ピードをゆるめるわけにはいかない。

  追っているのに追われるように、清瀬は必死だった。チーターに狙いをつけられたシマ

ウマだって、これほど走りはしないだろう。そう思うほどに、痛みをおして加速した。

  前方に車が見えた。真中大の選手についた監督車だ。みるみるうちに距離を狭める清瀬

に気づき、あわてて隣の車線に移動する。無防備にさらされた選手の背中を見据え、清瀬

は右側から抜きにかかった。

  真中大の選手も引かなかった。粘って食いついてくる。そのまま二百メートルほど併走

した。どちらのものかわからない、荒い呼吸が耳を打つ。左 に、様子をうかがう真中大

の選手の視線を感じたが、清瀬は相手を振り向きはしなかった。まえだけを見て走る。

  日比谷公園を過ぎ、左手が開けた。皇居の堀端に出たのだ。馬場先門の交差点を右折。

ここだ、と直感の光が清瀬の全身を貫いた。角を曲がるときに内側に立ったのを利用し

て、清瀬は一気に真中大を引き離す。心身を極限まで削り、数々の試合や競技会に挑みつ

づけてきたからこそわかる、仕掛けどころだった。

  意志の力を受けて、体がしなやかに加速をつける。真中大の選手が、水に沈むように背

後から遠ざかっていくのがわかる。清瀬はうめきを み殺した。加速に耐えかね、右脚が

軋んだ。痛みが神経を直接つかんだのかと思うほどの衝撃だった。

  すごく大きな虫歯が、右の脛にできたみたいだ。腰から脳髄まで響く痛みに、清瀬は笑

いたくなった。骨も歯もカルシウムの塊だから、似たようなものか。笑わなければ、やっ

ていられない。

  ガードをくぐり、東京駅の八重洲側に抜ける。寒さをまったく感じないのに、吐く息が

白い。

  二十キロ地点で、大家のマイクがハウリングした。

「メーデー、メーデー」

  と大家はマイクの調子をたしかめる。そんなことを言うひとが、まだいたとは。清瀬は

苦笑しつつ、与えられる情報を聞き取ろうとした。雷雨のような沿道からの声で、かき消

されてしまいそうだ。

「ユキの試算を伝える。このままだと、東体大のタイムに六秒及ばないそうだ」

  くそ。こんなに走ってもだめなのか?  清瀬は奥歯を みしめる。

  いや、まだだ。まだ三キロある。諦めるな。走れ。全力で走れ。ここで諦めたら、俺は

今度こそ本当に、大切ななにかを失ってしまう。せっかく取り戻せたものを、また幻にす

るわけにはいかない。

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