八重むぐら しげれる宿のさびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり
恵慶法師
【歌意】 雑草が幾重にも生い茂ったこの寂しい邸には、誰一人尋ねてこないけれど、秋だけは今年もまたいつものようにやって来てくれた。
【作者】 (えぎょうほうし) 10世紀後半の人。播磨国(兵庫県)の国分寺の僧侶。
【説明】 源融(みなもとのとおる)の邸宅だった河原院。風流をきわめたとされる河原院も、融の死後は荒れ果て、今は訪れる人もいなくなってしまったが、秋だけはきちんとやって来る、という。『源氏物語』の夕顔の巻の、荒廃した邸「某(なにがし)の院」のモデルともされている。