世の中は 常にもがもな 渚(なぎさ)こぐ あまの小舟(をぶね)の 綱手(つなで)かなしも
鎌倉右大臣
【歌意】 世の中が、ずっとこのままであってほしい。渚を漕いでいく漁師の小舟の、引き綱を引いている光景は何とも心に染みて趣深い。
【作者】 (かまくらのうだいじん) 1192~1219年 鎌倉幕府の3代将軍?源実朝(みなもとのさねとも)。家集『金槐和歌集』がある。
【説明】 漁夫の小舟を見ながら、人の世の無常を思う。この歌は、「川の上のゆつ岩群に草生さず常にもがな常処女にて」(『万葉集』巻1-22)と、「陸奥はいづくはあれど塩釜の浦こぐ舟の綱手かなしも」(『古今集』巻20-1088)を本歌取りしたもの。