平安時代の物語文学(1巻)で、9世紀後半の成立とされる。『源氏物語』に「物語の出(い)で来はじめの祖(おや)」とあって、現存する最も古い物語。作者は不明ながら、文体・用語・思想傾向などから漢籍や仏典にくわしい男性知識人と推測される。
竹取りの老人が竹の中に見つけた小さな女の子は、やがて成長して光り輝く美女となる。かぐや姫と名づけられた彼女のもとには多くの求婚者が訪れるが、熱心な5人の公達や帝の求婚をも退け、ついには8月15日の夜に月の国へと帰るというストーリー。
登場人物については、かぐや姫・老夫婦・帝などは架空の人物だが、実在の人物が登場していることも本作品の特徴である。5人の公達のうち、安倍御主人、大伴御行、石上麻呂は実在の人物である。また、車持皇子のモデルは藤原不比等、石作皇子のモデルは多治比嶋だっただろうと推定されている。この5人はいずれも壬申の乱の功臣で天武天皇・持統天皇に仕えた人物であることから、奈良時代初期が物語の舞台に設定されたとされている。
なお、チベットにもこれとよく似た話があり『竹取物語』の原型かと注目されたが、大正ごろに日本から輸入されたとの説もある。