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第一章 汝夜歩くなかれ--明かずの窓(1)_夜歩く(夜行)_横沟正史_日本名家名篇_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:明かずの窓「お茶番よ、なあ、いまから考えるとおかしくなる。しかし、あのときは笑いごとじゃなかったぜ。おやじが躓つまずかな
(单词翻译:双击或拖选)

明かずの窓

「お茶番よ、なあ、いまから考えるとおかしくなる。しかし、あのときは笑いごとじゃな

かったぜ。おやじが躓つまずかなかったら、あのときおりゃア、真まっ向こう唐竹割りに

なっているんだ。なあ、仙石、そうじゃなかったかい」

 直記はだまって答えなかったが、さすがに暗いかおをしている。私もあの刹那の戦せん

慄りつを思い出して、思わずゾクリと肩をすぼめた。

「おりゃアまさかあのおやじに、あんな兇暴な発作があろうたア夢にも知らなかった。

知ってたら、ああまでしつこくからみつくんじゃなかったンだ。おれだって命は惜しいや

ね。ところで、ここの屋敷の連中は、みんなおやじに、ああいう兇暴な発作のあることは

知ってる筈はずだ。それだのに、なぜおれをとめてくれなかったんだ」

「とめたわよ。とめたけれどそれでとまるあなたじゃなかったじゃないの。意え怙こ地じ

になって、ますます図に乗って……」

「だけど、酒乱のことはおれも知らなかった」

「そう、そこまではいわなかったわ。だってあたしあんなとこに刀があるなんて事、夢に

も知らなかったし、少しゃアあなたも思い知るがいいと思ったもんだから、わざと黙って

いてやった」

「あっはっは、有難い仕合わせさ。しかし、あの刀だ。あの刀はどうしてあそこにあった

んだ。たとえにもいうとおりなんとかに刃物だ。誰があんなところへ刀を……」

「ひょっとすると、おじさんが自分で見付けて、こっそりかくしておいたんじゃ……」

「いや、そんな筈はない。おやじはあれで自分の酒乱を気にやんでいるんだ。あの刀をか

くしておくように頼んだのもおやじ自身だ。よしんばかくしどころを見付けたところで、

自分の手て許もとへ持って来るようなことはない」

「そうだ、それに……あのときのおやじの顔色がそのことを物語っているぜ。おやじめ、

だしぬけに盃さかずきを投げつけやアがった。それから立ち上がって、口から泡をふきな

がらけだもののように座敷の中を歩きまわっていたが、やがて押入の襖ふすまをひらいた

んだ。するとそこにあの刀があった。それを見つけたときのおやじの顔色は……まるで、

世にも意外なものを発見したように、大きく眼を見張り、ブルブル肩をふるわせていやア

がったぜ。おやじ自身、そんなところに刀があることは、夢にも知っていなかったんだ」

「しかし、ねえ、蜂屋君」

 誰も口をひらくものがなかったので、私はふと思いついたままのことを口に出した。

「誰がそこへ刀を持っていったにしろ、そいつはきょう、こんな事態が持ち上がろうと、

予測することは出来なかった筈じゃないか。君がからんで仙石のおやじさんの酒乱が爆発

する。そんなこと、誰だって、あらかじめ勘定に入れとくわけにはいかないじゃないか」

 蜂屋は不敵なせせらわらいをうかべた。

「フフフ、また屋代の得意の論法がはじまったな。理り窟くつをいえばそうさ。しかし、

なあ、実際にきょうああいう事態が起こったんだぜ。しかも、危うくその犠牲者になろう

としたのがこのおれさ。思い出してもぞッとすらア。すってんころりとひっくりかえり

の、ざあッと風を切って白はく刃じんをふりおろされて。……おらア首筋がひやッとし

た。理窟なんかどうでもいいんだ。誰があそこへ刀を持っていったのか、それを調べあげ

なきゃアおかないんだ」

「仙石、その刀はどこにかくしてあったんだ」

 私の質問に直記がなにかこたえようとしたときである。廊下のドアがひらいて、妙な男

が顔を出した。

 その男、年は四十から四十五までのあいだであろう。ずんぐりと肉付きのよい体をして

羽は織おり袴はかま、着ているものは悪くはない。頭は丸坊主にしているが、男振りも悪

くはなかった。それでいて、どこかこの男には冴さえないところがある。第一、眼付きが

どろんとしている。口くち許もとにしまりがない。肉付きのよい顔は、子供のようにつや

つやとして脂あぶらぎっているが、意味もなくニヤニヤとわらいながら、一座の顔を見み

廻まわす口許からは、今にも涎よだれがたれそうであった。

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