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阿势登场 二(1)

时间: 2022-04-03    进入日语论坛
核心提示:二 子供達は、いつまでも子供部屋の中にじっとしていなかった。鬼ごっこか何かを始めたと見えて部屋から部屋へ走り廻(まわ)る物
(单词翻译:双击或拖选)


 子供達は、いつまでも子供部屋の中にじっとしていなかった。鬼ごっこか何かを始めたと見えて部屋から部屋へ走り(まわ)る物音や、女中がそれを制する声などが、格太郎の部屋まで聞えて来た。中には戸惑いをして、彼のうしろの(ふすま)を開ける子供さえあった。
「アッ、おじさんがいらあ」
 彼等は格太郎の顔を見ると、きまり悪相(わるそう)にそんなことを叫んで、向うへ逃げて行った。しまいには正一までが彼の部屋へ闖入(ちんにゅう)した。そして、「ここへ隠れるんだ」などと云いながら、父親の机の下へ身をひそめたりした。
 それらの光景を見ていると、格太郎はたのもしい感じで、心が一杯になった。そして、ふと、今日は植木いじりをよして、子供らの仲間入りをして遊んで見ようかという気になった。
「坊や、そんなにあばれるのはよしにして、パパが面白いお(はなし)をして上げるから、(みんな)を呼んどいで」
「やあ、嬉しい」
 それを聞くと、正一はいきなり机の下から飛び出して、駈けて行った。
「パパは、とてもお噺が上手なんだよ」
 やがて正一は、そんなこまっちゃくれた紹介をしながら、同勢(どうぜい)(ひき)つれた恰好(かっこう)で、格太郎の部屋へ入って来た。
「サア、お噺しとくれ。(こわ)いお噺がいいんだよ」
 子供達は、目白押しにそこへ坐って、好奇の目を輝かしながら、あるものは恥しそうに、おずおずして、格太郎の顔を眺めるのであった。彼等は格太郎の病気のことなど知らなかったし、知っていても子供のことだから、大人の訪問客の様に、いやに用心深い態度など見せなかった。格太郎にはそれも嬉しいのである。
 彼はそこで、此頃になく元気づいて、子供達の喜び相なお噺を思い出しながら、「昔ある国によくの深い王様があったのだよ」と始めるのであった。一つのお噺を終っても、子供達は「もっともっと」といって()かなかった。彼は望まれるままに、二つ三つとお噺の数を重ねて行った。そうして子供達と一緒にお(とぎ)噺の世界をさまよっている内に、彼は益々(ますます)上機嫌になって来るのだった。
「じゃ、お噺はよして、今度は隠れん坊をして遊ぼうか。おじさんも入るのだよ」
 しまいに、彼はそんなことを云い出した。
「ウン、隠れん坊がいいや」
 子供達は我意(わがい)を得たと云わぬばかりに、立処(たちどころ)に賛成した。
「じゃね、ここの家中(うちじゅう)で隠れるのだよ。いいかい。さあ、ジャンケン」
 ジャンケンポンと、彼は子供の様にはしゃぎ始めるのだった。それは病気のさせる(わざ)であったかも知れない。それとも又、細君の不行(ふぎょうせき)に対する、それとなき虚勢であったかも知れない。いずれにしろ、彼の挙動に、一種の自棄気味(やけぎみ)の混っていることは事実だった。

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