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阿势登场 六

时间: 2022-04-04    进入日语论坛
核心提示:六 格太郎の葬式を済ませると、第一におせいの演じたお芝居は、無論上(うわ)べだけではあるが、不義の恋人と、切れることであっ
(单词翻译:双击或拖选)


 格太郎の葬式を済ませると、第一におせいの演じたお芝居は、無論(うわ)べだけではあるが、不義の恋人と、切れることであった。そして、(たぐい)なき技巧を以て、格二郎の疑念をはらすことに専念した。しかも、それはある程度まで成功した。仮令一時だったとはいえ、格二郎はまんまと妖婦の欺瞞(ぎまん)(おちい)ったのである。
 かくておせいは、予期以上の分配金に預り、息子の正一と共に、住みなれた(やしき)を売って、次から次と住所を変え、得意のお芝居の助けをかりて、いつとも知れず、親族達の監視から遠ざかって行くのだった。
 問題の長持は、おせいが()いて貰い受けて、彼女から(ひそか)に古道具屋に売払われた。その長持は今何人(なんぴと)の手に納められたことであろう。あの掻き(きず)と不気味な仮名(かな)文字とが、新しい持主の好奇心を刺戟(しげき)する様なことはなかったであろうか。彼は掻き傷にこもる恐しい妄執にふと心(おのの)くことはなかったか。そして又、「オセイ」という不可思議なる三字に、彼は果して如何なる女性を想像したであろう。ともすれば、それは世の醜さを知り()めぬ、無垢(むく)乙女(おとめ)の姿であったかも知れないのだが。


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