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一本の銀の針(3)

时间: 2022-09-01    进入日语论坛
核心提示:三 真まっ白しろな帆ほが、でき上あがって、それが船ふねに張はられたのです。そして、ある朝あさ、若者わかものは、妹いもうと
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三


 真まっ白しろな帆ほが、でき上あがって、それが船ふねに張はられたのです。そして、ある朝あさ、若者わかものは、妹いもうとや、おじいさんに見送みおくられて、この海岸かいがんから沖おきをさして船出ふなでしたのであります。
 だんだん沖おきへ、沖おきへ出でると、そこはものすごい景色けしきでありました。白しろい波なみは、いままで自分じぶんたちばかりの遊あそび狂くるうところだと思おもっていたのに、真まっ白しろな帆ほをかけた船ふねが、中なかへ割わり込こんできたものだから、びっくりしました。
「この世界せかいは、おれたちの世界せかいだ。それだのに、おれたちよりもっと白しろい大おおきなものが、頭あたまの上うえを平気へいきで踏ふんでゆくとはけしからん。」といって、波なみは騒さわぎたてました。
 いくら波なみが騒さわいでも、昔むかし、海うみの王おうさまといわれた、おじいさんの孫まごの乗のっている船ふねは平気へいきでありました。波なみの上うえを越こして、もっと沖おきへ、沖おきへとこいでゆきました。
「あちらの島しまに着ついて、金色きんいろの卵たまご、夜よるになるとおもしろい唄うたをうたう貝かいを拾ひろってきて、妹いもうとへの土産みやげにしよう。自分じぶんがこの航海こうかいを無事ぶじに終おえたら、もうりっぱな船乗ふなのりだ。いつか、海うみの王おうさまの後継あとつぎだという評判ひょうばんがたつであろう。」と、若者わかものは、そう思おもわずにいられなかったのです。
 波なみは、いくら騒さわいでも、どうすることもできませんでした。そのとき、空そらを風かぜが通とおりかかった。波なみは、日ひごろはあまり仲なかはよくなかったけれど、こんなときは味方みかたになってもらおうと思おもいましたから、風かぜを呼よび止とめて、
「あんな小ちいさい船ふねのぶんざいで、私わたしたちの世界せかいをかってに乗のりまわすなんて生意気なまいきじゃありませんか。沈しずめてしまおうと思おもうんですが、私わたしたちの力ちからばかりではだめですから、ひとつ助たすけてください。」と頼たのみました。
 風かぜは、そういって頼たのまれると、いやだとはいえなかった。それに、自分じぶんがひとあばれしてみたいと思おもっていたやさきでありましたから、
「よろしい、大おおいにあばれてみましょう!」と、ただちに受うけ合あうと、もう、高たかく怒いかり声こえをたて、白しろい帆ほを張はった小船こぶねに向むかってぶつかりました。小船こぶねは、木この葉はのように波なみの上うえでほんろうされていました。
 若者わかものは、おじいさんもかつて、こうしためにあって、それに戦たたかってきたことを思おもいました。またお父とうさんは、やはりこんなめにあって、船ふねがこわれて沈しずんでしまったのであろうと考かんがえました。彼かれは、いまこそ自分じぶんの力ちからを試ためすときだと思おもって、力ちからいっぱい風かぜと波なみとに戦たたかったのであります。
 しかし、風かぜの助たすけを得えて、波なみはますます高たかくなりました。そして、白しろい帆ほの上うえを越こすようになりました。
 若者わかものは、せっかくここまできながら、望のぞみの島しまに着つくこともできず、空むなしく海底かいていのもくずになってしまうのかと残念ざんねんがりました。また岩いわの上うえに降おりていたたくさんの白しろい鳥とりは、波なみに足場あしばをさらわれてしまって、あらしの叫さけぶ空そらの中なかで、しきりに悲かなしんで鳴ないていました。そのうちに、日ひが暮くれてしまった。
 夜よるになっても、風かぜは、静しずまりませんでした。波なみは、はやく船ふねを沈しずめてしまわなければならぬと、四方ほうから打うち寄よせてきました。若者わかものは、おじいさんのことを思おもい、また妹いもうとのことを思おもい出だしました。
 おじいさんの造つくってくださった帆ほは、この風かぜにも裂さけませんでした。若者わかものは、どこへなりと風かぜの吹ふく方向ほうこうへ押おし流ながされてゆこうと、運命うんめいに身みを委まかせてしまったのです。
 あたかも、暗くらい雲くもを破やぶって月つきが照てらしました。月つきは、海うみの上うえをくまなく、ほんのりと明あかるくしました。そのとき、白しろい帆ほの端はしで、異様いような輝かがやきを放はなったものがあります。船ふねの中なかで頭あたまを抱かかえていた若者わかものには、それがわからなかったけれど、目めざとい風かぜはすぐにそれを見みつけました。妹いもうとが、兄にいさんの無事ぶじを祈いのるために、盲目めくらのおばあさんからもらった銀ぎんの針はりを、だれも気きのつかないところに刺さしておいた、それに月つきが映うつったのであります。
 風かぜは、その光ひかりを見みてびっくりしました。その光ひかりの中なかに、あの怖おそろしい盲目めくらのおばあさんが、じっとしてすわっていたからでした。
 盲目めくらで、白髪はくはつのおばあさんは、北極ほっきょくの氷こおりの上うえにいるおばあさんです。波なみでも、風かぜでも、おばあさんの住すんでいる国くにへいったものは、おばあさんの機嫌きげんしだいで、すぐにも息いきの音ねを止とめられたり、また凍こおらせられたりするのでした。
 あらしは、おばあさんを見みると、ぴたりとやんで、こそこそとどこへか逃にげてゆきました。波なみもまた静しずかになってしまいました。こうして、若者わかものは無事ぶじに島しまを探検たんけんして帰かえると、はたして、みんなから、第だい二の海うみの王おうさまと呼よばれたのでした。
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