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青い石とメダル

时间: 2022-09-06    进入日语论坛
核心提示:青い石とメダル小川未明 犬(いぬ)ころしが、はいってくるというので、犬(いぬ)を飼(か)っている家(うち)では、かわいい犬(いぬ)
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 青い石とメダル

小川未明

 


 (いぬ)ころしが、はいってくるというので、(いぬ)()っている(うち)では、かわいい(いぬ)()られてはたいへんだといって、畜犬票(ちくけんひょう)をもらってきてつけてやりました。
 しかし、かわいそうなのは、宿(やど)なしの(いぬ)でありました。(さむ)(ばん)も、あたたかい小舎(こや)があるのでないから、軒下(のきした)や、(もり)(なか)で、(ねむ)らなければなりません。また、だれも、畜犬票(ちくけんひょう)などをもらってきて、つけてくれるものがなかったのです。
 (ゆう)ちゃんは、(そと)(ある)いているとき、いろいろの(いぬ)()ました。首輪(くびわ)に、(ふだ)のついているのは、どこを(ある)いていても、安心(あんしん)だから、べつになんとも(おも)わなかったけれど、なかには、首輪(くびわ)のないもの、また、首輪(くびわ)はあっても、(ふだ)のついていないものがありました。それらの(いぬ)たちは、()てられたか、(もり)や、()()(なか)()まれたかして、まったく()(ぬし)のないものでありました。
 しっかりした人間(にんげん)(たす)けを()けているものと、なんの(たす)けもないものと、どちらがしあわせでありましょう?
(いぬ)ころしに()つかったら、いつ(つか)まえられてしまうかしれない。」と、(ゆう)ちゃんは、(ふだ)のない(いぬ)()るとあわれに(おも)いました。そして、そのたびに、クロのことが、心配(しんぱい)でならなかったのでした。
 (ゆう)ちゃんの、かわいがっているクロは、やはり、宿無(やどな)(いぬ)であります。(もり)(なか)()まれて、(もり)(なか)(おお)きくなったので、めったの(ひと)にはなつきませんでしたが、(ゆう)ちゃんは、自分(じぶん)のもらったお菓子(かし)()けてやったり、また、(さかな)(ほね)があれば、わざわざ()っていってやったり、平常(ふだん)から、クロをかわいがっていましたので、クロは、だれよりも、いちばん(ゆう)ちゃんになついていました。
 ほかの(ひと)が、クロを()ぶと、すぐ(ちか)くまできて、()()るけれど、けっして、(あたま)をなでようとしても、そばへはきませんでした。そして、注意深(ちゅういぶか)く、相手(あいて)顔色(かおいろ)をうかがっていました。(ゆう)ちゃんが()ぶと、(ゆう)ちゃんだけには、安心(あんしん)しているとみえて、そばへ()り、(あし)もとへからだをすりつけました。そして、(あたま)をなでてやると、()(ほそ)くして、クン、クンといって(よろこ)びました。だから、(ゆう)ちゃんが、クロをかわいがるのも無理(むり)はありません。
「ねえ、お(かあ)さん、クロを(うち)(いぬ)にしてくださいませんか。」と、(ゆう)ちゃんは、たびたび、(たの)んだのであります。
 いつも、お(かあ)さんは、こころよい返事(へんじ)をしてくださいませんでした。
()きものを()うのは、めんどうです。しまいには、その世話(せわ)(わたし)がしなければなりませんから……。」と、おっしゃいました。
「いいえ、お(かあ)さん! (ぼく)が、(いぬ)世話(せわ)をします。」と、(ゆう)ちゃんは、いいましたけれど、お(かあ)さんは、なかなかそれをお(しん)じになりませんでした。
 また、あるときは、(ゆう)ちゃんがしつこく(たの)むと、お(かあ)さんは、
「いつかも、おまえがそういって、小鳥(ことり)()ったことがあるが、その世話(せわ)は、みんなお(かあ)さんがしなければならなかったじゃありませんか? 小鳥(ことり)とちがって、(いぬ)世話(せわ)は、(わたし)にはできませんから。」と、おっしゃいました。
 (ゆう)ちゃんは、お(かあ)さんに(たの)んでも、(のぞ)みがないと(おも)いましたから、こんど、お(とう)さんにお(ねが)いしてみようと(かんが)えました。そして、お(とう)さんが、承知(しょうち)してくだされたなら、そのときは、お(かあ)さんだって、(ゆる)してくださるにちがいないと(おも)ったのでした。
「よう、お(とう)さん! クロをうちの(いぬ)にしてください。」
 (ゆう)ちゃんは、役所(やくしょ)からお(かえ)りになった、お(とう)さんの(くび)ったまにすがりついてねだりました。さすがにお(とう)さんは、自分(じぶん)子供(こども)時分(じぶん)(いぬ)や、ねこや、小鳥(ことり)や、そうした動物(どうぶつ)がすきだったばかりでなく、()ったことの経験(けいけん)があるので、(あたま)からいけないとは、いわれませんでした。そして、クロという(いぬ)は、どんな(いぬ)だと、くわしく、(ゆう)ちゃんから、ようすをおききになりました。
 (ゆう)ちゃんは、()るかぎり、クロのりこうなことを(はな)しました。
「そりゃ、クロという(いぬ)はりこうなんですよ。(ぼく)とならいっしょについてゆきますけれど、ほかの(ひと)には、ついてゆかないのです。(ぼく)といっしょでも、すこし(とお)くへゆくと、さっさ(ひと)りで(かえ)ってしまいます。自分(じぶん)に、鑑札(かんさつ)がないということを()っているんですね。」
 こう、いいますと、お(とう)さんは、うなずきながら、きいていられましたが、
「おまえのいうとおりです。しかし、そのクロばかりでありません。すべて野犬(やけん)はりこうなものです。だれも、保護(ほご)してくれるものがないから、自分(じぶん)()(ゆる)さないのです。そして、()まれから、()(そだ)った(いぬ)は、(うち)へつれてきてもいつくものではないから、うちで()うなどと(かんが)えずに、おまえが、かわいがってやれば、それでいいのです。」と、お(とう)さんは、(さと)されました。
 なるほど、いつかないということが、(ゆう)ちゃんにもわかったから、このうえ無理(むり)にお(とう)さんにお(ねが)いしても、むだだと(さと)ったのでした。
「しかし、(いぬ)ころしに()つかったら、つれていってしまわれるだろう……。」と(おも)うと、どうしたらいいだろうかと()をもんだのでした。
 (ばん)に、(もり)(ほう)(いぬ)のなき(ごえ)がしたり、昼間(ひるま)でも、(いぬ)がやかましくほえて、あたりがなんとなく(さわ)がしく(かん)ぜられると、(いぬ)ころしが、やってきたのでないかしらん、そして、クロが、つかまったのでないかしらんと、(むね)がどきどきしました。(ゆう)ちゃんは、(そと)()()していって、クロの姿(すがた)()るまでは、安心(あんしん)されなかったのであります。
 ある()(ゆう)ちゃんは、(とく)ちゃんが、銅製(どうせい)のメダルを()っているのを()ました。そのメダルは、ちょうど、畜犬票(ちくけんひょう)が、(ふる)くなったような、(おお)きさも、色合(いろあ)いも、そっくりでありましたので、もしこれを(いぬ)首輪(くびわ)にぶらさげておいたら、だれの()にも、畜犬票(ちくけんひょう)()えるであろうと(おも)いました。
(とく)ちゃん、そのメダルを、(ぼく)にくれない?」
と、(ゆう)ちゃんは、いいました。
 (とく)ちゃんは、()をまるくして、(おどろ)いたというようなようすをして、
「これは、(ぼく)、やっと(ひと)からもらった大事(だいじ)なやつなんだぜ。デッドボールの優勝(ゆうしょう)メダルだからな。」と、(とく)ちゃんは、(こた)えました。
「なにかと交換(こうかん)しようよ。」と、(ゆう)ちゃんは、いったのです。
「どんなものと?」
万年筆(まんねんひつ)と……。」
「いつかのかい、あんなものはいやだ。だってプラチナがなくなって、そのうえ、こわれているんじゃないか? あんなもの、()なんか()けやしないもの。」
「じゃ、(ぼく)()っているもので、なんでも、(きみ)()きなものと()えてくれないか。」
 (ゆう)ちゃんが、こういうと、(とく)ちゃんは、メダルを勲章(くんしょう)のように、自分(じぶん)(むね)のあたりにつけるまねをしてみせました。
「いつか、(ぼく)()せた、あの(あお)(いし)となら、()えてもいいよ。」
 ややしばらくしてから、(とく)ちゃんが、こう(こた)えました。
「あの、(ぼく)が、田舎(いなか)から()ってきた、(あお)(いし)かい?」
 こんどは、(ゆう)ちゃんが、()をまるくしたのです。
「ああ、あの(あお)(いし)となら、()えてもいいな。」と、(とく)ちゃんは、(ゆう)ちゃんの(かお)()ました。
「あの、(あお)(いし)は、大事(だいじ)なんだがなあ。」と、(ゆう)ちゃんは、(かんが)えていました。
「あの(いし)でなければ、(ぼく)も、いやだ!」と、(とく)ちゃんが、いいました。
万年筆(まんねんひつ)だといいのだがなあ……。(きみ)万年筆(まんねんひつ)では、だめかい?」
「あんな、(きみ)んちの、(ねえ)さんの()っていた、お(ふる)なんかいやだ。」
「じゃ、(あお)(いし)()えようよ。」と、(ゆう)ちゃんは、メダルがほしいばかりに、つい決心(けっしん)しました。
「ああ、()えよう!」
 (とく)ちゃんは、(あお)(いし)が、(まえ)から、ほしかったので、にっこりしました。(ゆう)ちゃんは、自分(じぶん)(うち)(あお)(いし)()りに()けてゆきました。
 この、(あお)(いし)というのは、(ゆう)ちゃんが、夏休(なつやす)みに、(とお)(きた)のおばあさんのところへいったとき、垣根(かきね)のきわの、(みち)(うえ)(あたま)()していたのです。あまりに、(あお)くて、きれいだったので(ゆう)ちゃんは、(ぼう)きれでいっしょうけんめいに、その(いし)()()しました。そして、()ばらの()里川(さとかわ)で、その(いし)(あら)いました。(いし)(みず)にぬれると、(そら)(いろ)よりも、もっと(あお)(いろ)をしていました。
 (ゆう)ちゃんといっしょに、(あお)(いし)は、(くら)(なが)い、トンネルを汽車(きしゃ)(とお)って、()らない他国(たこく)へきたのでした。そして、()らない(まち)(そら)(した)で、じっと太陽(たいよう)見上(みあ)げました。(いし)は、ものをいいませんが、どんなに心細(こころぼそ)かったかしれません。(ゆう)ちゃんが、この大事(だいじ)(いし)を、(とも)だちに()せると、
「いい(いし)だなあ。」と、(りょう)ちゃんも、(とく)ちゃんも、(ぜん)ちゃんも、ほめたのでした。
 それから、(ゆう)ちゃんは、(いし)をひきだしの(なか)にいれて、ときどきだしてみました。この(いし)()るといつでも、田舎(いなか)のおばあさんの(かお)や、おばあさんの(うち)のいけがきや、(しろ)()ばらの()いている里川(さとかわ)景色(けしき)が、ありありと()かんで()えたのでした。
 しかし、(あお)(いし)よりは、クロの(いのち)のほうが、はるかに大事(だいじ)であったからです。(ゆう)ちゃんは、(いし)()()えたメダルをクロのくびにつけてやりました。そのためか、あるいは、クロがりこうで、用心深(ようじんぶか)かったためか、ほかの野犬(やけん)が、(いく)ひきも(つか)まえられていったのに、クロだけは、無事(ぶじ)でありました。
「あんなに、勇治(ゆうじ)(いぬ)をかわいがるのだから、ほんとうの鑑札(かんさつ)()てやろうか。」と、ある()(ゆう)ちゃんのお(とう)さんは、クロが(よろこ)んで、(ゆう)ちゃんに()びついているようすを()て、こういわれたのであります。

 

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