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赤土へくる子供たち(4)

时间: 2022-09-13    进入日语论坛
核心提示:四 原(はら)っぱのはしの方(ほう)に、小(ちい)さな森(もり)がありました。いろいろの木(き)がしげっていて、風(かぜ)が吹(ふ)く
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四


 原(はら)っぱのはしの方(ほう)に、小(ちい)さな森(もり)がありました。いろいろの木(き)がしげっていて、風(かぜ)が吹(ふ)くと、葉(は)がきらきらと波(なみ)のように、かがやきました。ひるすこしすぎる時分(じぶん)、「カチ、カチ。」という拍子木(ひょうしぎ)の音(おと)が、その方(ほう)からきこえました。紙芝居(かみしばい)のおじさんが、子供(こども)たちを呼(よ)んでいるのです。原(はら)っぱで、ボールをなげているもの、とんぼを追(お)いかけているものが、一人(ひとり)、二人(ふたり)と、その方(ほう)へかけていって、森(もり)の中(なか)へ集(あつ)まりました。
 森(もり)の中(なか)には、小(ちい)さなお稲荷(いなり)さまのほこらがたっています。そのほこらのとりいの前(まえ)は、あちらの町(まち)へつづく、ひろい道(みち)になっていました。おじさんは、とりいのところへ自転車(じてんしゃ)をおいて、みんなのくるのをまっていました。光(みっ)ちゃんととみ子(こ)さんは、石(いし)のさくによりかかっていました。信(しん)一も、勇二(ゆうじ)も、ほかの子供(こども)たちの中(なか)へまじって、ぼんやりと立(た)っていました。
 ちょうど、そこは、すずしい日(ひ)かげになっていて、頭(あたま)の上(うえ)では、せみがジイジイとないています。やがて、「突撃兵(とつげきへい)」という、おじさんのお話(はなし)が、はじまりました。
「ある日(ひ)、召集令(しょうしゅうれい)が、忠(ちゅう)一のもとへまいりました。彼(かれ)は、手(て)に持(も)つ仕事道具(しごとどうぐ)をなげすててすぐに立(た)ちあがった。
『妹(いもうと)よ、あとをよろしくたのんだ。』
『お父(とう)さん、きょうは、ご気分(きぶん)は、いかがですか?』
 兄(あに)のいなくなった後(あと)は、かよわい女(おんな)の身(み)ながら、妹(いもうと)は、はたらいて、よく父親(ちちおや)の看護(かんご)をしていました。
『長(なが)い間(あいだ)、よくめんどうをみてくれたぞ。しかし、もう私(わたし)もいくときがきたんだ。ただ生(い)きているうちに、せがれのてがらをきかずにいくのが、ざんねんだ。』
『お父(とう)さん、そんな心(こころ)ぼそいことをおっしゃっては、いけません。』
『いや、それよりかおまえは、お父(とう)さんがなくなったら一人(ひとり)になってしまう。おまえも日本(にっぽん)の女(おんな)だ。なんなりと、自分(じぶん)の力(ちから)でできることをして日本(にっぽん)のためにつくすんだぞ。』
『お父(とう)さん、よくわかりました。いま日本(にっぽん)の人(ひと)は、男(おとこ)でも女(おんな)でも、年(とし)よりでも子供(こども)でも、一人(ひとり)のこらず、力(ちから)をあわせて、立(た)ちあがらなければならぬときがきたんです。私(わたし)は、女(おんな)ながら、つねにその覚悟(かくご)を持(も)っています。』
『ああ、それで安心(あんしん)した。』
 これが、父親(ちちおや)のわかれのことばでした。
 話(はなし)かわって、こちらは、戦場(せんじょう)であります。敵(てき)は、手(て)ごわくわが軍(ぐん)の前進(ぜんしん)をさまたげている。忠(ちゅう)一の部隊(ぶたい)は、クリークをへだてて、その敵(てき)と向(む)かいあっていました。
 あすの夜明(よあ)けに、敵(てき)のトーチカをくだいてしまえという命令(めいれい)がくだった。忠(ちゅう)一をはじめ一命(めい)を、天皇陛下(てんのうへいか)にささげた勇士(ゆうし)たちは、故郷(こきょう)へ、これがさいごの手紙(てがみ)を書(か)いてねむりにつきました。
 その夜中(よなか)のこと、忠(ちゅう)一一等兵(とうへい)は目(め)をひらくと、国防婦人会(こくぼうふじんかい)の白(しろ)い服(ふく)をきた妹(いもうと)が立(た)っている。おお、どうしてこんなところへきたかと、おどろいた。
『お兄(にい)さんに、知(し)らせにまいりました。』
『なにっ、お父(とう)さんが、なくなられたか。それで、おわかれに、なんとおっしゃられた?』
『はい。』と、妹(いもうと)がなみだぐみながら、
『せがれのてがらを、この世(よ)できかずにいくのがざんねんだと、おっしゃいました。』
 忠(ちゅう)一一等兵(とうへい)は、がばとはね起(お)きました。同時(どうじ)に目(め)がさめたのであります。
『お父(とう)さん、ゆるしてください。じきに私(わたし)もおそばへまいります。』」
 おじさんが、ここまで話(はな)したときに善吉(ぜんきち)と武夫(たけお)が、走(はし)ってきて、
「信(しん)ちゃん、吉川先生(よしかわせんせい)がきたから、早(はや)くおいでよ。」と、いって、ほこらのうしろの方(ほう)へかくれようとしました。おどろいて、信(しん)一と勇二(ゆうじ)は、その後(あと)を追(お)ったのです。紙芝居(かみしばい)のおじさんは、何(なに)ごとがおこったのかと、思(おも)ったのでしょう。
「どうしたのだ、どうしたのだ。」と、ききました。
「学校(がっこう)の先生(せんせい)が、きたんだよ。」
「なに、先生(せんせい)が。ちっともわるいことは、ないじゃないか。」と、おじさんはいばりました。
 学校(がっこう)の先生(せんせい)が、七、八人(にん)、上級(じょうきゅう)の生徒(せいと)をつれて交通整理(こうつうせいり)の見学(けんがく)にとおったのです。先生(せんせい)たちが、いってしまうと、信(しん)一も勇二(ゆうじ)も善吉(ぜんきち)も武夫(たけお)も顔(かお)を見(み)せました。
「みんな、どうしたの?」と、おじさんがいいました。
「ぼくたち、いまとりいの前(まえ)で、べいをしているのを見(み)つかったんだよ。」
「なぜここへきて、話(はなし)をきかなかったの? そんなことをするから、先生(せんせい)が、こわいのだよ。」と、おじさんは笑(わら)いました。
「小山(こやま)くんが、先生(せんせい)に、ぼくたちのことをいいつけたんだ。だから、先生(せんせい)が、ぼくたちのそばまできて、のぞこうとしたんだ。」
「あした、学校(がっこう)へいくとしかられるよ。」と、善吉(ぜんきち)はしょげてしまいました。
「小山(こやま)くん、ひきょうだね。こないだのしかえしをしたんだ。」と、信(しん)一は、いいました。
「ほんとうに、ひきょうだな。」
「おじさん、このお話(はなし)、後(あと)はどうなったの?」と、ほかの小(ちい)さな子供(こども)が、ききました。
「このあとのお話(はなし)は、またあす。これで、きょうはおしまい。」
 子供(こども)たちは、思(おも)い思(おも)いに、ちってしまいました。
「おじさんは、前(まえ)にきた、紙芝居(かみしばい)のおじさんと、お友(とも)だちだってね。」と、信(しん)一がいいました。
「ああ、友(とも)だちさ、ぼくらは、みなが、いい人(ひと)になって、日本(にっぽん)の国(くに)が、ますます強(つよ)くなるようにと、紙芝居(かみしばい)をして歩(ある)いているんだ。」と、おじさんが答(こた)えました。
「じゃ、おじさんは、ほんとうのあめ屋(や)さんじゃないんだね。」と、善吉(ぜんきち)は、おじさんの顔(かお)を、ふしぎそうに見(み)ました。
「あめも売(う)るから、ほんとうのあめ屋(や)さ。だってお話(はなし)ばかりでは、きいてくれないだろう。」
「ぼく、お話(はなし)だけでも、きくよ。」
「じゃ、あしたから、あめを持(も)ってくるのをよそうかな。」
「そして、お金(かね)をとらないの。」
「ほら、ごらん。みなは、お話(はなし)より、あめのほうがいいのだ。」
「お話(はなし)もきいて、あめも、もらいたいのだよ。」
「ぼく、お話(はなし)だけでもいいな。」
「だれだ、えらいぞ。は、は、は。」と、おじさんは笑(わら)いました。

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