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赤土へくる子供たち(5)

时间: 2022-09-13    进入日语论坛
核心提示:五 翌日(よくじつ)、学校(がっこう)のかえりに、善吉(ぜんきち)と武夫(たけお)の二人(ふたり)は、吉川先生(よしかわせんせい)か
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五


 翌日(よくじつ)、学校(がっこう)のかえりに、善吉(ぜんきち)と武夫(たけお)の二人(ふたり)は、吉川先生(よしかわせんせい)からのこされました。
「きっと、善(ぜん)ちゃん、べいごまのことだよ。」と、武夫(たけお)がいいました。
「ああ、それにきまっているさ。だが、なんで、べいをしていけないんだろうね。」と、善吉(ぜんきち)は、まどの外(そと)のかきの木(き)を見上(みあ)げていました。秋(あき)になってから、日(ひ)の光(ひかり)が、夏(なつ)よりもかえって強(つよ)いようです。一つ、一つ、さすように葉(は)の上(うえ)にかがやいていました。
「かきがなっているね、武(たけ)ちゃん、これはしぶいのだろう。」
「あまいのかもしれない。ここから、あの枝(えだ)へは、うつれないかね。」
「とびつけば、とどくけど、落(お)ちたらたいへんだ。」
 二人(ふたり)は、二階(かい)のまどから、かきの木(き)を見(み)ながらいろいろ考(かんが)えつづけていました。そして、早(はや)く家(いえ)へかえって、あそびたいなと思(おも)ったのです。それだけでなく、お母(かあ)さんや、お姉(ねえ)さんが、しんぱいしていられるだろうと思(おも)うと、こうしていることが、くるしかったのです。
「先生(せんせい)、早(はや)くこないかな。」
「忘(わす)れたんだろう。かえろうか、武(たけ)ちゃん。」
 このとき、ろうかを歩(ある)いてくる、くつ音(おと)がしたのでした。二人(ふたり)は、急(きゅう)におぎょうぎをよくしていました。
 先生(せんせい)は、教壇(きょうだん)のいすにこしを下(お)ろして、
「こっちへおいで。」と、善吉(ぜんきち)と武夫(たけお)の二人(ふたり)は前(まえ)へ呼(よ)ばれました。
「きのうは、家(いえ)へかえってから、なにをしてあそんでいたね。」と、先生(せんせい)は二人(ふたり)の顔(かお)をごらんになりました。
 善吉(ぜんきち)は、顔(かお)を上(あ)げて、
「まりをなげたり、べいをしていました。」と、すなおに答(こた)えました。
「べいをしては、いけないというのでなかったかな。」
 善吉(ぜんきち)は、先生(せんせい)にそういわれると、だまってうつむきました。
「君(きみ)は、どう思(おも)うね。」と、先生(せんせい)は、こんどは武夫(たけお)に向(む)かって、おききになりました。
「よくないと思(おも)います。」と、武夫(たけお)は答(こた)えました。
「わるいと思(おも)うものを、なぜやったのだ。」
 先生(せんせい)の顔(かお)は、しだいにおそろしくなりました。
「しまいに勝(か)ったべいを、みんな返(かえ)せばいいと思(おも)いました。」と、善吉(ぜんきち)が、いいました。
 先生(せんせい)は、しばらくだまって、善吉(ぜんきち)のいうことをきいていられましたが、
「君(きみ)たちは、わるいことをして、後(あと)でそれを返(かえ)せばいいと思(おも)うのかね。」と、おっしゃいました。
「先生(せんせい)こまをまわすことは、わるいことですか。」と、武夫(たけお)が、こんど先生(せんせい)の顔(かお)を見(み)ながら、ふしぎそうにたずねたのです。先生(せんせい)は、ちょっと頭(あたま)をかしげて、すぐには、返答(へんとう)をなさいませんでしたが、しばらくしてから、
「こまをまわすことを、いけないというのではない。勝(か)ったり、負(ま)けたりするのに、品物(しなもの)をかけてやることを、いけないというのだ。べいなら、その負(ま)けたこまを、勝(か)ったものが取(と)るというふうに、勝負(しょうぶ)の後(あと)が、品物(しなもの)のやりとりになるからいけないというのだ。」
「先生(せんせい)そんなら、ただ、おたがいがこまをまわして、勝負(しょうぶ)をするぶんなら、いいのですか。」
「ものをかけたりしなければ、わるいことはない、みんなが、ただ一つぎりでな。ぼくも、子供(こども)の時分(じぶん)は、こまをまわすのが大(だい)すきだった。」
「先生(せんせい)も、べいをなさったのですか?」と、二人(ふたり)の子供(こども)は、おどろいた顔(かお)をしました。
「いや、ぼくの子供(こども)の時分(じぶん)には、べいごまなどというようなものは見(み)なかった。もっと大形(おおがた)の木(き)ごまか、鉄胴(てつどう)のはまったこまだった。鉄胴(てつどう)のこまには、木(き)ごまは、どうしてもかなわなかったものだ。そして、こまの合戦(かっせん)は、それは、さかんなものだった。」
 吉川先生(よしかわせんせい)は、自分(じぶん)の子供(こども)の時分(じぶん)を思(おも)い出(だ)して、いまのようにものをかけずに、ただ勝負(しょうぶ)をしただけで、それでもみんなが、満足(まんぞく)したという話(はなし)をなさいました。
「木(き)ごまは、鉄胴(てつどう)にかかると、よく真(ま)二つにわれたものだ。そのわれるのが、またゆかいだった。しかし、つばきの木(き)でつくった木(き)ごまは、たいへんかたくて、なかなかわれぬばかりでなく、うまく火花(ひばな)をちらして、ぶつかって、どぶの中(なか)へ鉄胴(てつどう)をはねとばしてしまうことが、あったものだ。」
「先生(せんせい)、おもしろいですね。」
「おもしろいが、べいなんか、もうよしたまえ。このごろは、みんなでいっしょにたのしんで、そして、勝(か)ち負(ま)けをきめるようなおもしろいあそびが、たくさんあるじゃないか。」と、先生(せんせい)は、おっしゃいました。この時分(じぶん)には、先生(せんせい)のお顔(かお)は、いつものやさしいお顔(かお)になっていました。
「先生(せんせい)よくわかりました。」と、善吉(ぜんきち)が、いいました。
「わかったか。」
「わかりました。けれど先生(せんせい)につげ口(ぐち)するものなんか、もっとひきょうだと思(おも)います。」と、武夫(たけお)が、いいました。
「つげ口(ぐち)されるようなことをしなければいいのだ。では、もうかえるがいい。」
 吉川先生(よしかわせんせい)は、立(た)ち上(あ)がると、さっさと、ろうかの方(ほう)へ歩(ある)いていかれました。
「黒(くろ)めがねの紙(かみ)しばいのおじさんは、ぼく、この話(はなし)をしたら、辰(たっ)ちゃんは、自分(じぶん)がけんかができないので、先生(せんせい)にいうなんてひきょうだといったよ。」と、善吉(ぜんきち)がいいました。
「おじさんは、先生(せんせい)をよく知(し)っているといったね。」
「ああ、おじさんも、日本(にっぽん)の子供(こども)は、そんとか、とくとかいうことなんか、考(かんが)えてはいけない。正(ただ)しいことをしなければならぬといった。」
 二人(ふたり)は、階段(かいだん)を下(お)りて、話(はな)しながら校門(こうもん)の外(そと)へ出(で)たのでありました。
「善(ぜん)ちゃん、あの犬(いぬ)をごらんよ。」
 武夫(たけお)のゆびさした方(ほう)を見(み)ると、白(しろ)い色(いろ)の犬(いぬ)が、まりをくわえて主人(しゅじん)の後(あと)についていきました。ある家(いえ)の門(もん)のところに、茶色(ちゃいろ)の犬(いぬ)がはらばいになっていたが、この犬(いぬ)を見(み)つけると、急(きゅう)におきあがって、ほえはじめました。二ひきの犬(いぬ)のあいだが、だんだん近(ちか)づきました。しかし、まりをくわえた犬(いぬ)は、知(し)らぬ顔(かお)をして、わき見(み)もせずに主人(しゅじん)についていくと、茶色(ちゃいろ)の犬(いぬ)はいまにもとびつこうとしたのでありました。

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