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あほう鳥の鳴く日(2)

时间: 2022-09-19    进入日语论坛
核心提示: 数日後(すうじつご)のこと、若者(わかもの)は、雇(やと)われ口(ぐち)を探(さが)しながら歩(ある)いていますと、先日(せんじつ)
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 数日後(すうじつご)のこと、若者(わかもの)は、雇(やと)われ口(ぐち)を探(さが)しながら歩(ある)いていますと、先日(せんじつ)の汚(きたな)らしいふうをした子供(こども)が、職人体(しょくにんてい)の男(おとこ)にいじめられているのを見(み)ました。
「おまえは、どこから、この町(まち)へなどやってきたのだ。このごろは町(まち)にろくなことがない。火事(かじ)があったり、方々(ほうぼう)でものを盗(ぬす)まれたりする。なんでも、口笛(くちぶえ)を吹(ふ)く子供(こども)があやしいといううわさだが、おまえは口笛(くちぶえ)を吹(ふ)くか? はやく、どこかへいってしまえ。」と、男(おとこ)は子供(こども)をにらみつけて、胸(むね)のあたりを突(つ)いて、あちらへ押(お)しやっていました。
 子供(こども)は、黙(だま)って、うつむいていました。これを見(み)た若者(わかもの)はそばへやってきました。
「かわいそうなことをするものでありません。この子供(こども)は、あなたに悪(わる)いことをしましたか? 口笛(くちぶえ)を吹(ふ)くということが、どうして悪(わる)いのですか?」と、若者(わかもの)は、職人体(しょくにんてい)の男(おとこ)をなじりました。
 職人体(しょくにんてい)の男(おとこ)は、振(ふ)り向(む)いて、
「この子(こ)は、悪魔(あくま)の子(こ)です。この子供(こども)が町(まち)にはいってからというもの、ろくなことがない。」といいました。
「そんな理由(りゆう)のあるはずがありません。私(わたし)は、それを信(しん)ずることができません。」と、若者(わかもの)はいいました。
 職人体(しょくにんてい)の男(おとこ)は、返(かえ)す言葉(ことば)がなく、あちらにいってしまいました。
 まもなく、五、六人(にん)連(づ)れの乱暴者(らんぼうもの)がやってきました。そして、いきなり、汚(きたな)らしいふうをした哀(あわ)れな子供(こども)をなぐりつけました。
「おまえだろう、口笛(くちぶえ)を吹(ふ)いて、夜中(よなか)に、黒(くろ)い鳥(とり)を呼(よ)んだりするのは? 火(ひ)をつけたのも、おまえにちがいない。また、方々(ほうぼう)へ泥棒(どろぼう)にはいったのも、おまえにちがいない。」と、彼(かれ)らは口々(くちぐち)にののしりました。
 このとき、子供(こども)は、なんといって弁解(べんかい)をしても、彼(かれ)らはききいれませんでした。そして、つづけざまにに子供(こども)をなぐりつけました。これを見(み)た若者(わかもの)は、あまりのことに思(おも)って、
「なぐらなくてもいいでしょう。口笛(くちぶえ)を吹(ふ)いて、鳥(とり)を呼(よ)んだことと、火事(かじ)や、泥棒(どろぼう)とが、なんの関係(かんけい)があるのですか? おおぜいで、こんな子供(こども)をいじめるなんてまちがってはいませんか。」と、若者(わかもの)は、彼(かれ)らの乱暴(らんぼう)を止(と)めようとしていいました。
 彼(かれ)らは、これを聞(き)くと、かえってますます怒(おこ)りました。
「なにもおまえの知(し)ったことじゃない。おまえは、この小(ちい)さい悪(わる)い奴(やつ)の仲間(なかま)なのか? 生意気(なまいき)な奴(やつ)だからいっしょになぐってしまえ!」といって、彼(かれ)らは、若者(わかもの)の手(て)や、足(あし)や、顔(かお)や、頭(あたま)を、かまわず思(おも)うぞんぶんになぐりつけました。
 若者(わかもの)の鼻(はな)からは、血(ち)が流(なが)れました。そして、子供(こども)と若者(わかもの)の二人(ふたり)は、これらの乱暴者(らんぼうもの)から、ひどいめにあわされました。彼(かれ)らは、思(おも)うぞんぶんに二人(ふたり)をなぐると、
「さあ、さっさと早(はや)くこの町(まち)から、どこへでもいってしまえ。まごまごしていると、また見(み)つけて、こんどは許(ゆる)しておかないから。」といい残(のこ)して、これらの乱暴者(らんぼうもの)は去(さ)ってしまいました。
 子供(こども)は、若者(わかもの)に二度(ど)助(たす)けられましたので、どんなにか、ありがたく感(かん)じたかしれません。若者(わかもの)が、自分(じぶん)を助(たす)けるために、鼻(はな)から血(ち)を出(だ)したことを知(し)ると、ただすまなく思(おも)って、幾(いく)たびも礼(れい)を申(もう)しました。
「そんなに、お礼(れい)をいわれると困(こま)ります。私(わたし)は、良心(りょうしん)が、不正(ふせい)を許(ゆる)さないために、戦(たたか)いましたばかりです。」と、若者(わかもの)は答(こた)えました。
 二人(ふたり)は、とぼとぼと話(はな)しながら、町(まち)を出(で)はずれて、あちらに歩(ある)いていきました。
「これから、あなたは、どこへおゆきなさいますか。」と、子供(こども)は、若者(わかもの)にたずねました。
「私(わたし)はいままで、ある工場(こうじょう)で働(はたら)いていましたが、病気(びょうき)になったために、その工場(こうじょう)から出(だ)されました。そして行(ゆ)き場(ば)がなく、毎日(まいにち)雇(やと)われ口(ぐち)を探(さが)しているのです。」と、若者(わかもの)は答(こた)えました。
 すると、子供(こども)は、
「私(わたし)は、山(やま)にいたとき、口笛(くちぶえ)を吹(ふ)いて、いろいろな珍(めずら)しい鳥(とり)を、捕(つか)まえることを覚(おぼ)えました。その珍(めずら)しい鳥(とり)の一羽(わ)を持(も)ってあちらのにぎやかな港(みなと)にいって、金(かね)のある人(ひと)たちに売(う)れば、困(こま)らずに暮(く)らしてゆくことができるのです。しかし、鳥(とり)をほんとうにかわいがる人(ひと)は少(すく)ないのです。鳥(とり)がかわいそうでなりませんから、鳥(とり)を捕(と)って売(う)ることはいたしません。私(わたし)は、独(ひと)りでさびしいときには、いままで、いろいろな鳥(とり)を呼(よ)んで、その声(こえ)をきくことを楽(たの)しみにしました。また、私(わたし)は、これから西(にし)にゆきますと、広(ひろ)いりんご畑(ばたけ)があって、そこでは人手(ひとで)のいることを知(し)っています。そのりんご畑(ばたけ)の持(も)ち主(ぬし)を、私(わたし)は、まんざら知(し)らないことはありません、その主人(しゅじん)に、私(わたし)は、あなたを紹介(しょうかい)しましょう。そして、私(わたし)も、あなたといっしょに働(はたら)いてもいいと思(おも)います。これから、二人(ふたり)は、そこへいって働(はたら)こうじゃありませんか。」といいました。
 若者(わかもの)は、これをきいて、たいそう喜(よろこ)びました。そして、二人(ふたり)は、西(にし)の方(ほう)にあるりんご畑(ばたけ)をさして旅(たび)をいたしました。
 二人(ふたり)は、りんご樹(じゅ)の手入(てい)れをしたり、栽培(さいばい)をしたりして、そこでしばらくいっしょに暮(く)らすことになりました。二人(ふたり)のほかにも、いろいろな人(ひと)が雇(やと)われていました。若者(わかもの)は、金(きん)や、銀(ぎん)に、象眼(ぞうがん)をする術(じゅつ)や、また陶器(とうき)や、いろいろな木箱(きばこ)に、樹木(じゅもく)や、人間(にんげん)の姿(すがた)を焼(や)き付(つ)ける術(じゅつ)を習(なら)いました。
 りんご畑(ばたけ)には、朝晩(あさばん)、鳥(とり)がやってきました。子供(こども)は、よく口笛(くちぶえ)を吹(ふ)いて、いろいろな鳥(とり)を集(あつ)めました。そして、鳥(とり)の性質(せいしつ)について若者(わかもの)に教(おし)えましたから、若者(わかもの)は、人間(にんげん)や、自然(しぜん)を彫刻(ちょうこく)したり、また焼(や)き画(え)に描(えが)いたりしましたが、鳥(とり)の姿(すがた)をいちばんよく技術(ぎじゅつ)に現(あらわ)すことができたのであります。
 しかし、二人(ふたり)は、幾年(いくねん)かの後(のち)に、また別(わか)れなければなりませんでした。子供(こども)は、青年(せいねん)になりました。そして、若者(わかもの)も年(とし)をとりましたから、二人(ふたり)は、もっと広(ひろ)い世(よ)の中(なか)に出(で)ていって、思(おも)った仕事(しごと)をしなければならなかったからです。
「私(わたし)は、汚(きたな)らしいふうをして、町(まち)の中(なか)をうろついていたときに、あなたに助(たす)けられました。あなたは、自分(じぶん)の身(み)を忘(わす)れて、私(わたし)を救(すく)ってくださいました。」と、その時分(じぶん)子供(こども)であった青年(せいねん)はいいました。
「ほんとうに、もう思(おも)い出(だ)せば幾年(いくねん)か前(まえ)のことであります。私(わたし)は、病気(びょうき)をして職(しょく)を失(うしな)っているときに、あなたにあって、このりんご圃(ばたけ)へつれられてきました。そして、ここで幾年(いくねん)か月日(つきひ)を過(す)ごしました。私(わたし)は、ここにきたがためにいろいろの技術(ぎじゅつ)を覚(おぼ)えることができました。これから、また方々(ほうぼう)を渡(わた)って、もっといろいろのことを知(し)ったり、見(み)たいと思(おも)います。」と、当時(とうじ)の若者(わかもの)は、もういい働(はたら)き盛(ざか)りになっていて、こう答(こた)えました。
「おたがいに、この世(よ)の中(なか)から、美(うつく)しい、喜(よろこ)ばしいことを知(し)りましょう。私(わたし)は、あなたが、私(わたし)のために乱暴者(らんぼうもの)からなぐられて、血(ち)を流(なが)されたことを一生(いっしょう)忘(わす)れません。」
「いえ、いつかも、いいましたように、けっしてあなたのためではありません。たとえその人(ひと)があなたでなくても、だれであっても、弱(よわ)いものを、ああして乱暴者(らんぼうもの)がいじめていましたら、私(わたし)は、良心(りょうしん)から、命(いのち)を投(な)げ出(だ)して戦(たたか)ったでしょう。」と、昔(むかし)の若者(わかもの)はいいました。

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