返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 小川未明童話集 » 正文

なくなった人形(1)

时间: 2022-11-29    进入日语论坛
核心提示:なくなった人形小川未明冬ふゆでありましたけれど、その日ひは、風かぜもなく穏おだやかで、日ひの光ひかりが暖あたたかに、門口
(单词翻译:双击或拖选)
 

なくなった人形

小川未明


冬ふゆでありましたけれど、その日ひは、風かぜもなく穏おだやかで、日ひの光ひかりが暖あたたかに、門口かどぐちに当あたっていましたので、おみよは学校がっこうから帰かえりますと、ござを敷しいて、その上うえで、人形にんぎょうや、おもちゃなどを出だしてきて遊あそんでいました。すこし前まえまで、近所きんじょのお友ともだちがきて、いっしょに遊あそんでいたのですが、お友ともだちはちょっと用ようができて家うちへいったので、後あとには、まったくおみよ一人ひとりとなったのでした。けれども、彼女かのじょはすこしもさびしいとは思おもいません。かわいい人形にんぎょうがそばにありますから、それを抱だいたり、下したにすわらせたり、またそれにものをいったり、おもちゃのお膳ぜんや、茶ちゃわんや、さらなどに、こしらえたごちそうを入いれて、供そなえてやったりしていますと、けっしてさびしくもなんともなかったのであります。
その人形にんぎょうは、今年ことしの春はる、田舎いなかから叔父おじさんが出でてこられたときに、叔父おじさんといっしょに、町まちへいって買かってもらった、好すきな、たいせつにしている人形にんぎょうでありました。
日ひは、だんだん西にしの方ほうへまわりましたけれど、まだそこには、暖あたたかな日ひが当あたっていました。
「さあ、こんどはなにをおまえにこしらえてあげようかね。」と、おみよは人形にんぎょうに向むかって、独ひとり言ごとをもらしたのです。
そのとき、あちらのさびしい路みちのほうから、こちらにやってきた、哀あわれなふうをした、七つか八つになったくらいの乞食こじきの女おんなの子こがありました。どこへゆくのでしょうか、ふと、この家いえの前まえを通とおりかかりましたが、乞食こじきの子こは、おみよが、いま人形にんぎょうにごちそうをこしらえてやろうとして、菊きくの花はなや、山茶花さざんかの花弁はなびらを、小ちいさな刃物はもので、小ちいさなまないたの上うえに載のせて刻きざんでいるのを見みて、思おもわず歩あゆみを止とめて、しばらく我われを忘わすれてじっとながめていました。
乞食こじきの子こは、まだ産うまれてから一度ども、そんな美うつくしい人形にんぎょうや、おもちゃ道具どうぐを手てに持もって、遊あそんだことがなかったのです。乞食こじきの子こは、おみよの幸福こうふくな身みの上うえをうらやみました。なんで自分じぶんも、あの方かたのように生うまれてこなかったのだろう。自分じぶんはいつになったら、あんなかわいらしい人形にんぎょうや、おもちゃを持もつことができるだろうと、真しんにおみよの身みの上うえをうらやましく思おもってながめていたのです。
乞食こじきの子こは、いつしか自分じぶんというものを忘わすれてしまって、そのかわいい人形にんぎょうの顔かおや、姿すがたに見みとれてしまったのです。なんというかわいいかわいい人形にんぎょうだろう。まあ、あの人形にんぎょうは私わたしの顔かおを見みて、笑わらっているのじゃないかしらん。あれ、ほんとうに私わたしの顔かおを見みて笑わらっている。私わたしはちょっとのまでいいから、お嬢じょうさんにお願ねがいして、あの人形にんぎょうを抱だかしてもらおうかしらん。ほんのちょっとのまでいいから、あのかわいい人形にんぎょうを手てに取とって、よく顔かおを見みたいものだ、ただ一度どでいいから顔かおを見みたいものだ。それで、もう私わたしはたくさんだから……そういってお嬢じょうさんにお願ねがいしてみようかしらんと、乞食こじきの子こは一人ひとり胸むねのうちで想おもい煩わずらっていましたが、いやいや、なんでこんな汚きたないふうをして、ほかの人々ひとびとから平常ふだん乞食こじきの子こ! 乞食こじきの子こ! と、呼よばれているいるものを、なんで、この家やのお嬢じょうさんが私わたしに人形にんぎょうを抱だかしてくださるものか、かえって、そんなことをいっていやな顔かおをされるより、黙だまって、こうしてここで見みていたほうがいいと、小ちいさな胸むねで想おもい返かえしました。そして、乞食こじきの子こは、いつまでも垣根かきねのきわに立たって、こちらを見みていたのです。
おみよは、人形にんぎょうになにか別べつのごちそうをこしらえてやろうと思おもって、外そとへ青あおい葉はか、色いろの変かわった菊きくの花はなを探さがしてこようと思おもって、ござから立たち上あがりますと、そこの垣根かきねのそばに、哀あわれな乞食こじきの子こがたたずんでこちらを見みていました。まだ年としもゆかないのに、そして、こんな寒空さむぞらなのに、身みには汚よごれた薄うすい着物きものを着きて、どんなに寒さむかろうと思おもいました。おみよは乞食こじきの子こより二つ三つ年上としうえであったのです。
乞食こじきの子こは、いま、お嬢じょうさんがどこへかいかれて、見みえなくなったこのまに、ちょっとそのかわいい人形にんぎょうを抱だいてみようと思おもって、おそるおそる近ちかづいて、なんの深ふかい考かんがえもなしに、人形にんぎょうを手てに取とりあげてつくづくながめますと、それはかわいい人形にんぎょうでありましたから、
「私わたしはいつもいつもお友ともだちもなくて、ただ一人ひとりでさびしくてならないの。私わたしといっしょに遊あそんでくれないの。そして、私わたしの仲なかのよいお友ともだちになってくれないの。」といって、乞食こじきの子こは人形にんぎょうの顔かおをのぞきました。すると、人形にんぎょうは優やさしく微笑ほほえんで、
「私わたしはお友ともだちになってあげます。」といったように、乞食こじきの子こには思おもわれました。乞食こじきの子こは喜よろこんで、かわいい人形にんぎょうのほおに接吻せっぷんいたしました。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: