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野菊の花(2)

时间: 2022-12-04    进入日语论坛
核心提示:二白しろいシャツに、白しろい帽子ぼうしをかぶって、青あおい車くるまを引ひいた青年せいねんが、あちらから走はしってきました
(单词翻译:双击或拖选)
 

二


白しろいシャツに、白しろい帽子ぼうしをかぶって、青あおい車くるまを引ひいた青年せいねんが、あちらから走はしってきました。日ひの当あたる道みちには、ほかに人影ひとかげもなかったのです。
「あっ、牛乳屋ぎゅうにゅうやさんだ。」
「牛乳ぎゅうにゅう売うってくれるかしらん。」
二人ふたりは、その方ほうをじっと見みながら、さきやきました。
「牛乳屋ぎゅうにゅうやさん!」と、清吉せいきちは、走はしって近ちかづきました。
「お乳ちちをちっとばかし、売うってくれない?」
「なににするんだい。」
「犬いぬにやるんだよ。あすこの原はらっぱに、生うまれたばかりの犬いぬころが、お腹なかがすいて泣ないているのだ。」
「ちっとばかしでいいんだねえ。」と、勇ゆうちゃんは清吉せいきちの顔かおを見みながら、おさらを牛乳屋ぎゅうにゅうやさんの前まえへ差さし出だしました。
かじ棒ぼうを握にぎったまま、二人ふたりを見みていた青年せいねんは、
「ここには、余分よぶんがないから、お店みせへいってきいてごらん。」と、答こたえました。
「お店みせってどこなの。」
「ここを曲まがって、ずっといくと火ひの見みやぐらがあるだろう。その前まえの花屋はなやの横よこを入はいったところだ。」
牛乳屋ぎゅうにゅうやさんはいそがしそうに、いい残のこして、また威勢いせいよく走はしっていきました。小石こいしの上うえを箱はこがおどるようです。ふり向むくと、ほこりが風かぜに吹ふかれていました。
二人ふたりは教おしえられた牛乳店ぎゅうにゅうてんへいきましたが、店みせさきに、西日にしびが当あたってテーブルの上うえには、新聞しんぶんが拡ひろげられていました。そして片方かたほうのたなには空あきびんがずらりと並ならんでいました。
「牛乳ぎゅうにゅうを五銭せんくださいませんか。」と、清吉せいきちがいいました。
店みせにいた、おかみさんが、
「いま、ちっともないのですが。」といって、断ことわりました。
二人ふたりは、たぶんそんなことだろうというような気きもしたので、格別かくべつ驚おどろきも、力落ちからおとしもしませんでした。
「僕ぼく、帰かえったら、赤あかちゃんにやるのを、ちっとばかし分わけてもらってくるよ。」と、勇ゆうちゃんが、いいました。
「この五銭せんで、ビスケットを買かってやろうか。」と、清吉せいきちは、あたりの店みせを見みながら、歩あるきました。
そのころ、牛乳ぎゅうにゅうを配達はいたつする箱車はこぐるまを引ひいた青年せいねんは、白しろのことを思おもい出だしていました。
彼かれが少年しょうねんで、まだ田舎いなかにいるとき、村むらに白しろという宿無やどなし犬いぬがいました。やせたあまり大おおきくないめす犬いぬであったが、宿無やどなし犬いぬというので、その犬いぬがお勝手かってもとへくると、どこの家いえでも水みずをかけたり、石いしを投なげつけたりしました。やさしい顔かおでもして、犬いぬがいつくのを怖おそれたからです。つえをつかなければ歩あるけないようなばあさんまでが、妙みょうなかっこうをして、そのつえで犬いぬをたたこうとしました。また外そとで仕事しごとをしているじいさんでさえ、「こいつめ。」とか、なんとかいって、石いしを拾ひろって投なげつけました。
あるとき、その犬いぬが、どこかの物置ものおきで子供こどもを生うむと、その家いえの人ひとたちは、みんなその子こを川かわへ流ながしてしまいました。
白しろは、人間にんげんの無慈悲むじひにとうとう気きが狂くるって、ようすの変かわった人ひとを見みると、かみつくようになり、夜よごとに子供こどもを思おもい出だしては、悲かなしい声こえで泣なき叫さけびました。
その傷いたましかった光景こうけいが、少年時分しょうねんじぶんの彼かれの心こころに刻きざみつけられて、いまでも忘わすれないのであります。
青年せいねんは、二人ふたりの子供こどもが、子犬こいぬのために牛乳ぎゅうにゅうを探さがしている、やさしい心こころをいじらしく思おもわずにはいられませんでした。
「おや、まだ、みんみんが、鳴ないているね。」
このあいだのあらしの夜よる、まったくきかれなくなったので、勇ゆうちゃんは、顔かおを上あげて、原はらっぱの空そらを見みまわしていました。
「きっとおそく生うまれたんだよ。お友ともだちがいなくてさびしいだろうな。」と、年としちゃんが、おそくこの世よに出でたみんみんに同情どうじょうしました。
「あっちの森もりの方ほうだな。」
そういったきりで、またみんなの目めは、小犬こいぬの上うえに止とまりました。小犬こいぬは、清吉せいきちと勇ゆうちゃんの持もってきたビスケットを尾おをふりながら食たべていました。その姿すがたは、正直しょうじきな清きよらかな心こころの少年しょうねんたちを動うごかして、いっそうかわいそうなものに思おもわせたのです。
「どれ、どんな犬いぬだい。」
そこへ、牛乳ぎゅうにゅうのびんを持もってやってきたのは、先刻さっき車くるまを引ひいていた青年せいねんでした。
「ポインターのまじりだね。さあ、これをやろう。」
青年せいねんはしゃがんで、さらの中なかへ、白しろいとろとろとしたおいしそうな乳ちちをびんからうつしました。雑草ざっそうの間あいだに、一輪りん紫色むらさきいろの野菊のぎくが咲さいていたが、その清きよらかな目めで、これを見守みまもっているように思おもわれました。
 
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