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はたらく二少年(2)

时间: 2022-12-04    进入日语论坛
核心提示:だまってKケーの話はなしをきいていたNエヌは、たばこの火ひがきえたのも知しらなかった。「だれにも、にたような話はなしはあ
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だまってKケーの話はなしをきいていたNエヌは、たばこの火ひがきえたのも知しらなかった。
「だれにも、にたような話はなしはあるのかな。それで、苦くるしい世よの中なかと思おもっても、なお生いきようとするのは、いつか、いい人間にんげんにめぐりあえるような気きがして、美うつくしいゆめがもてるからですね。」
Nエヌは、こう答こたえて、上着うわぎのかくしから、なにかとりだしました。それは、手てぬぐいにつつんだ鏡かがみのかけらでした。
「きみ、それは、どうしたの。」と、Kケーがきいた。
「あすこで、ひろったのです。Kケーさん、この町まちはわたしに思おもい出でがふかいんです。」と、こんどはNエヌが、そのわけをKケーに話はなしてきかせたのです。

わたしは、おふくろがなくなった後のち、どうすることもできず、おなじ長屋ながやにすんでいた、あんまさんのところで、せわになりました。わたしの仕事しごとというのは毎日まいにち親方おやかたの手てを引ひいて、あの町まちかどのところへくることでした。そして、親方おやかたが、尺しゃく八をふく間あいだついていて、通とおりかかる人ひとが、お金かねをくれるのをもらったのでした。戦争前せんそうまえは、あすこに大おおきくてりっぱなカフェーがありました。
夏なつの日ひの午後ごごのこと、きゅうに空そらがくらくなって雷かみなりがなり、雨あめがふりだしました。
「夕立ゆうだちだから、じき、はれるだろう。」と、親方おやかたはいって、二人ふたりはカフェーの、のき下したへはいり、たたずんでいました。すると、ぴかりぴかり、いなずまのするたび黒くろい森もりや、でこぼこの屋根やねが、うきあがって見みえるかと思おもうと、地球ちきゅうをひきさくようなすさまじい、雷かみなりの音おとがして、わたしはふるえながら、親方おやかたの手てをひっぱって、もっとドアに近ちかく身みをよせようとしました。そうすればたきのようにふる雨あめが、かろうじてよけられるからです。
このとき、とつぜんドアがあきました。見みると、うすべに色いろの長ながいたもとの着物きものをきた女給じょきゅうさんが、ぱっちりした目めをこちらへむけ、二人ふたりを見みながら、
「そこではぬれますから、早はやく中なかへおはいんなさい。」と、いってくれました。
頭あたまから顔かおまでぬらしながら、親方おやかたは、ただもじもじしていると、そのねえさんは、わたしの手てをとらんばかりにすすめたので、二人ふたりは、つい、すいこまれるごとく、ドアの中なかにはいりました。そして、わたしは生うまれてはじめて、こんなに美うつくしく、かざりたてられた、たてものの中なかを見みたのです。ふだんは、風かぜのふきすさぶたてものの外そとに立たって、五色しきにかがやくネオンをながめながら、中なかからもれる、たのしそうな音楽おんがくや心こころのうきたつような歌うたにききほれるだけで、煉瓦れんがのかべをへだてて、そこには、どんな世界せかいがあるのか、想像そうぞうすることもできなかったのでした。
「すこし、おかけなさいな。」と、ねえさんがいってくれたので、二人ふたりは、かたすみのほうにあった、テーブルのわきへ、こしをかけました。
まだ、たくさんの美うつくしいおねえさんたちが、立たったりかけたりしていました。わたしは、どこから、こんなうつくしい人ひとばかりあつまってきたのかと、ふしぎに思おもいました。わたしが、目めをみはっていると、また、さっきのおねえさんが、きて、
「わたしにも、ちょうど、あんたぐらいの弟おとうとがあるのよ。さあ、ひとつですけれど、おあがんなさい。」と、いって、紙かみにのせて、おかしをくれました。親方おやかたは尺しゃく八をにぎりうなだれていたが、それに気きづくと、わたしにかわって、礼れいをいってくれました。
しばらくすると、雷かみなりも雨あめも、わすれたようにやみました。二人ふたりが、外そとへ出でるころは、だんだん、客きゃくがたてこんで、あちらでも、こちらでも、笑わらい声ごえがきこえ、それとまじって、グラスのふれあう音おとがしました。
あのときから、何年なんねんたったであろうか、戦時中せんじちゅう、空襲くうしゅうで、このあたりは焼やけ野原のはらになってしまいました。きょう、カフェーのあとで、この鏡かがみのかけらを見みつけて、ひろいあげると、おりから空そらにあらわれた赤あかい雲くもがうつって、わたしは、おねえさんのすがたを思おもいだしたので、記念きねんにしようとポケットに入いれたが、考かんがえれば、やはりつまらんことですね。

と、Nエヌはいって、そのかけらを道みちばたになげすてました。
Kケーはこの話はなしをきくと、なんとなくNエヌを、他人たにんのような気きがしなくなった。そして、早はやくから親おやをなくした子こというものは、すこしかわいがってくれるものがあれば、こんなにも恋こいしく思おもうものかと、つくづく感かんじたのでした。
「そうさ。むかしのゆめなんか、なんにもならんよ。ふきとばして、希望きぼうをいだいて強つよく生いきぬこうぜ。ぼくたちは、もうはたらける年としになったんだもの、だれからも、ばかにされない。これから、おたがいに力ちからになろうよ。」と、NエヌをはげますようにKケーはいいました。
「ああ、ゆかいだ。きみと、どこへでも、いっしょにいきましょう。」と、NエヌがKケーの手てをにぎると、Kケーもまたかたくにぎりかえしました。

かれこれ、休やすみ時間じかんが、きれたとみえます。あちらから、トロッコの走はしってくる音おとがしました。すると、一同どうが立たちあがった。二人ふたりも、また、元気げんきにシャベルをもちました。
 
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