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日の当たる門(2)

时间: 2022-12-07    进入日语论坛
核心提示:その翌日あくるひもいい天気てんきでした。この門もんのところには、朝早あさはやくから日ひが当あたっていたのです。炭屋すみや
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その翌日あくるひもいい天気てんきでした。この門もんのところには、朝早あさはやくから日ひが当あたっていたのです。
炭屋すみやの小僧こぞうさんが、塀へいによりかかって、ぼんやりとひなたぼっこをしていました。夜よるの間あいだに降おりた霜柱しもばしらが、日ひの光ひかりをうけて、しだいにとけています。敷石しきいしの上うえは乾かわいているが、土つちの上うえをふむと足あしの跡あとがつきました。
「もう、得意とくいをまわったのか、早はやいなあ。」と、そこへやってきたのは、同おなじ年としごろの酒屋さかやの小僧こぞうさんでありました。
「寒さむくてしようがないや。」
「そんなに肥ふとっていても寒さむいかなあ。」
「ばかいっていらあ、おまえは寒さむくないか。」と、炭屋すみやの小僧こぞうさんが、いいました。
「相撲すもうとろうか、おまえは強つよそうだな。」と、酒屋さかやの小僧こぞうさんが、いいました。
「おまえとなら、負まけやしない。」
「じゃ、こい!」
「よしきた。」
二人ふたりの小僧こぞうさんは、日ひの当あたる前まえの石畳いしだたみの上うえで、たがいに押おしあい、もみ合あいしていました。うん、うん、といううなり声ごえがきこえたのです。梅うめの盆栽ぼんさいを縁側えんがわにおいて、ながめていたおじいさんは、小僧こぞうさんたちのうなり声ごえをきいて、なんだろうと思おもいました。
「また、うちの門もんのところで騒さわいでいる。あすこは、よく日ひが当あたるものだから、いいことにして、みんなあすこへきて、塀へいによりかかって、きれいにしておく石いしの上うえをよごしてしまう。どれ、ひとつどなってやろうか。」
おじいさんは、わざと勝手かってもとから、門もんの方ほうへまわりました。そして、塀へいについている節穴ふしあなから、外そとのようすをのぞいて見みました。すると、いま二人ふたりの小僧こぞうさんが顔かおを真まっ赤かにして、たがいに負まけまいとして取とり組くんでいる最中さいちゅうでした。
「ははあ、やっているぞ。」と、おじいさんは、しかることを忘わすれてしまって、じっと、どちらが勝かつか、負まけるか、見みとれていました。
「そうだ、そうだ、もうひと押おしだ。」と、おじいさんは、自分じぶんでも力りきんでいました。そして、心こころに、五十年ねんも昔むかしに友ともだちと相撲すもうをとったことを思おもい起おこしたのです。
「そうだ、そうだ、うん、どちらもなかなか強つよいぞ。」と、口くちの中なかで、おじいさんは、いっていました。
二人ふたりの小僧こぞうさんは、どちらも力ちからがあって、いい勝負しょうぶだったが、炭屋すみやの小僧こぞうさんのほうが肥ふとっているだけに体力たいりょくがつづくとみえて、酒屋さかやの小僧こぞうさんはへとへとになって、石畳いしだたみの上うえへ倒たおれてしまいました。
「やっぱり、おれは弱よわいなあ。」と、酒屋さかやの小僧こぞうさんはため息いきをつきながら、悲観ひかんしました。おじいさんは、
「なんだ、そんないくじがないことでどうする。もう一番ばんやってみろ。」と、心こころの中なかで、叫さけびました。
「どれ、もう一度どやろうか。」と、酒屋さかやの小僧こぞうさんは、立たち上あがりました。けれど、こんどは、なんの苦くもなく、炭屋すみやの小僧こぞうさんに、たたきつけられてしまいました。
「おまえなんか、いくらかかってもだめさ。」と、炭屋すみやの小僧こぞうさんは、威張いばりました。酒屋さかやの小僧こぞうさんは、いかにもくやしそうです。これから、毎朝まいあさ道みちであっても、炭屋すみやの小僧こぞうさんに頭あたまが上あがらないと思おもうと、残念ざんねんでたまりません。
「おい、もう一度どやろう、今度こんど負まけたら、降参こうさんするよ。」と、酒屋さかやの小僧こぞうさんは、いいました。おじいさんは、
「そうだ、その意気いきだ、しっかりやれ。」と、心こころの中なかで、酒屋さかやの小僧こぞうさんに応援おうえんしながら、塀へいの節穴ふしあなから目めをはなしませんでした。
「いいか、今度こんど負まけたら降参こうさんするんだぜ。」
「いいとも。」
二人ふたりは、たがいににらみあって、白しろい息いきをはあはあやっていましたが、酒屋さかやの小僧こぞうさんは、弾丸だんがんのように、相手あいての胸むねへ飛とび込こんでいきました。二人ふたりの顔かおが、たちまち真まっ赤かになりました。さあ、今度こんどこそ大相撲おおずもうです。一人ひとりは肥ふとって力ちからは余あまっているし、一人ひとりは、負まければ恥はじになるだけでなく、いよいよ降参こうさんしなければなりません。どうしても負まけられない一番ばんです。見みているおじいさんまでが、苦くるしくなってきました。
「うん。」
「うーん。」
二人ふたりは、うなりつづけて、組くみ合あったまま押おしたり、押おし返かえしたりして、相手あいてのすきをねらっていました。
「うーん。」と、おじいさんもうなって、自分じぶんまでが相撲すもうをとるような気持きもちでいました。ちょうど、そこへ女中じょちゅうが、
「また、あすこへきて、石畳いしだたみの上うえをよごしている。」と、口くちこごとをいいながら、お勝手かってもとから出でてくると、おじいさんは、手てでこちらへきてはならぬと追おい返かえしました。なんといっても、酒屋さかやの小僧こぞうさんは、いっしょうけんめいです。うん、うん、炭屋すみやの小僧こぞうさんを押おしていましたが、炭屋すみやの小僧こぞうさんは、よくこらえていました。
「もうひと息いき。」と、おじいさんが、いったと同時どうじに、酒屋さかやの小僧こぞうさんがここぞと押おした力ちからに、炭屋すみやの小僧こぞうさんはどっと仰向あおむきに倒たおされて、ミシ、ミシといって、塀へいの板いたはこわれました。酒屋さかやの小僧こぞうさんは、勝かった喜よろこびもどこへやら、急きゅうに顔かおの色いろを変かえて、倒たおれた炭屋すみやの小僧こぞうさんと、こわれた塀へいとを見みくらべましたが、
「よし、よし、塀へいなんか、かまわない。おもしろかったよ。」と、おじいさんが、ふいに門もんの外そとへ出でましたので、二人ふたりの小僧こぞうさんは、二度どびっくりして、おじいさんに、いくたびも頭あたまをペコペコ下さげて、いってしまいました。
「ああ、子供こどもは元気げんきでいいなあ。」と、おじいさんは、空そらを見上みあげました。そのおじいさんの顔かおを見みて、太陽たいようは、にっこりと笑わらいました。それからおじいさんは、子供こどもが家いえの前まえへきて遊あそんでも、しからなくなったのであります。
 
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