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海からきた使い(2)

时间: 2022-10-17    进入日语论坛
核心提示: 木枯(こが)らしの吹(ふ)く夜(よる)のことです。地(ち)の上(うえ)には、二、三日(にち)前(まえ)に降(ふ)った大雪(おおゆき)がま
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 木枯(こが)らしの()(よる)のことです。()(うえ)には、二、三(にち)(まえ)()った大雪(おおゆき)がまだ()えずに(のこ)っていました。(そら)には、きらきらと(ほし)が、すごい雲間(くもま)(かがや)いていました。
 ここに(あわ)れな(とし)とった按摩(あんま)がありました。毎晩(まいばん)のように、つえをついて、(ふえ)()らしながら、(まち)(なか)(ある)いたのでした。按摩(あんま)は、(さか)にかかって、()(こお)っているものですから、(あし)をすべらしました。そのはずみに、懐中(ふところ)財布(さいふ)()とすと、(くち)()いて、銀貨(ぎんか)や、銅貨(どうか)がみんなあたりにころがってしまったのでした。
「あ、しまった!」と、按摩(あんま)はあわてて両手(りょうて)地面(じめん)(さが)しはじめました。
 (ゆび)のさきは、(さむ)さと、(つめ)たさのために(いた)んで、(いし)ころであるか、(つち)であるか、それとも、銅貨(どうか)であるかさえ判断(はんだん)がつかなかったのでした。(とお)(ひと)たちは、わき()もせずに、みんな(さむ)いので(いえ)(ほう)(いそ)いでいました。また、(とお)りがかりに、この()(さま)()(ひと)(なか)には、(ひろ)ってやって、相手(あいて)盲目(めくら)だから、かえって(うたが)われるようなことがあってはつまらないと(おも)ったり、また、(なか)には、自分(じぶん)(あと)からきて(ぜに)(ひろ)ってやろうと、よくない(かんが)えを(いだ)いたような小僧(こぞう)などもありました。
 ちょうどこのとき、やさしい少女(しょうじょ)(とお)りかかったのです。
「なんという、人間(にんげん)は、(あさ)ましい(こころ)をもっているのでしょうか。天国(てんごく)には、こんな(かんが)えをもっているようなものや、薄情(はくじょう)なものは一人(ひとり)もないのに!」と(おも)いました。
「おじいさん、わたしが、(ひろ)ってあげます。」と、少女(しょうじょ)はいって、銀貨(ぎんか)や、銅貨(どうか)(ひろ)って、按摩(あんま)財布(さいふ)(なか)にいれてやりました。
 (とし)とった按摩(あんま)は、たいへんに(よろこ)びました。
今夜(こんや)は、(みち)(こお)ってすべりますから、()まいかと(かんが)えましたのを、()たのでこんなめにあいました。まことにありがとうございます。」といって、(いく)たびとなく(れい)()べました。
 やさしい少女(しょうじょ)は、按摩(あんま)()をひいて、(うち)へつれていってやりました。
 (うち)では、おばあさんが、こんなに(さむ)く、(みち)がすべるからけがでもなければいいがと心配(しんぱい)していました。そこへ、按摩(あんま)のおじいさんは、少女(しょうじょ)()をひかれて(かえ)ってきました。
 おばあさんは、おじいさんから、今夜(こんや)少女(しょうじょ)(たす)けられた(はなし)をきくと、たいそう感心(かんしん)して(あつ)くお(れい)(もう)しました。二人(ふたり)は、少女(しょうじょ)に、どうか()がってくれといって、(うち)へいれて、()をたいて(あたた)かにして少女(しょうじょ)をいたわりました。
「お(じょう)さんは、この(まち)(ひと)ではないようですが、お(うち)はどこでいらっしゃいますか。」と、おばあさんはたずねました。
 少女(しょうじょ)は、(きゅう)に、さびしそうな(かお)つきをしました。
「この世界(せかい)には、わたしの(いえ)というものはないのでございます。わたしは、まったくの(ひと)りぼっちで、今日(きょう)はこの(まち)明日(あす)はあちらの(むら)というふうに(ある)いています……。」と、少女(しょうじょ)(こた)えました。
 すると、おばあさんも、おじいさんもあきれた(かお)つきをしました。
「まあ、そんなら、お(かあ)さんも、お(とう)さんもおありなさらぬのですか?」と、二人(ふたり)はたずねました。
「わたしのお(かあ)さんも、お(とう)さんも、ここから(とお)い、(とお)い、(ある)いてはゆかれないところにいらっしゃいます。」と、少女(しょうじょ)(こた)えました。
 おばあさんは、うなずきました。
二人(ふたり)とも、おなくなりなさったので……あなたは、孤児(みなしご)なんですね。」といって、(ひと)りでそうきめてしまいました。
 盲目(めくら)のおじいさんは、おばあさんのそでをひきました。
「やさしい()でもあるし、両親(りょうしん)がないというのだから、(さいわ)い、(うち)()にしてはどうだな?」と、(かお)をおばあさんの(ほう)()けて、(ちい)さな(こえ)でいいました。
 おばあさんは、じろじろと少女(しょうじょ)のようすを()て、孤児(みなしご)にしては、あまりきれいで、どことなく上品(じょうひん)なので、なんらかふに()ちないように()くびを(かたむ)けていました。
「そう、おまえさんのように、やすやすときめていいものですか……。」と、(いか)(ごえ)()していいました。
「おばあさん、よく(かんが)えてみるがいい。こんな子供(こども)があったら、どれほど、(うち)(やく)にたつかしれないぜ。」と、按摩(あんま)はいいました。
 おばあさんは、なるほどとうなずきました。そこで、(きゅう)に、(こえ)をやさしくして、少女(しょうじょ)()かって、
「どこのお(じょう)さんですか、()りませんが、いまのお(はなし)のような()(うえ)でしたら、(わたし)(うち)()になってくださいませんか。じつは、(わたし)たちは、二人(ふたり)ぎりでさびしくてしかたがないのですから。」と、おばあさんは(たの)みました。
 少女(しょうじょ)は、(とお)い、(そら)のかなたのふるさとを(おも)()しました。いつも、ふるさとのことを(おも)うと(かな)しくなりました。
「わたしは、ここの(うち)()になってしまうことができませんけれど、すこしの(あいだ)でよければ、おてつだいをしてあげます。」と、少女(しょうじょ)(こた)えました。
「そんなら、すこしの(あいだ)でもいいから、てつだいをしてください。」と、二人(ふたり)(たの)みました。
 やさしい少女(しょうじょ)は、この()から、おばあさんやおじいさんのてつだいをしてしんせつに、二人(ふたり)のためにつくしたのです。
 老人夫婦(ろうじんふうふ)は、けっして、(こころ)(わる)(ひと)ではありませんでしたから、少女(しょうじょ)は、つらいことがあっても我慢(がまん)をいたしました。そして、(よる)は、按摩(あんま)のおじいさんの()()いて(まち)へもゆきました。
「おじいさん、(さむ)(ばん)ですこと。」と、少女(しょうじょ)は、(ある)きながら、おじいさんに()かって(はな)しました。
「ああ、(はや)く、(はる)になって、(あたた)かになってくれるといい。」と、おじいさんはいいました。
 木枯(こが)らしが()いていました。そして、(ほし)(ひかり)が、ぴかぴかと、いまにも()びそうに(そら)(ひか)っていました。少女(しょうじょ)は、じっと、(ほし)(ひかり)をながめて、ふるさとを(おも)()していたのであります。
 (はる)になりました。(うみ)(うえ)(おだ)やかに、(やま)には、木々(きぎ)(はな)()いて、野原(のはら)には、緑色(みどりいろ)(くさ)()ぐみました。ある()のこと、(まち)人々(ひとびと)は、(うみ)(うえ)に、不思議(ふしぎ)景色(けしき)()えるとうわさしました。それは、蜃気楼(しんきろう)なのであります。
「おばあさん、(うみ)(うえ)に、不思議(ふしぎ)景色(けしき)()えるといいますから、いってみましょう……。」と、少女(しょうじょ)は、おばあさんにいいました。
「ああ、いいお天気(てんき)だから、おまえだけいってみておいでなさい。(わたし)年寄(としよ)りだから、(ある)くのがたいそうです。」と、おばあさんは(こた)えました。
 少女(しょうじょ)は、(ひと)りで、(うみ)へいってみたのであります。かぎりもなく、海原(うなばら)は、青々(あおあお)としてかすんでいました。太陽(たいよう)(ひかり)は、うららかに、(なみ)(うえ)()らしていました。(まち)人々(ひとびと)は、たくさん海辺(うみべ)()(おき)(ほう)をながめていました。そのうちに、もうろうとして(ゆめ)のように、(かげ)のように、どこの景色(けしき)とも()らない、(やま)や、野原(のはら)や、紫色(むらさきいろ)屋根(やね)などが()かんで()えたのであります。
「ああ、わたしのふるさとの景色(けしき)だこと。」といって、少女(しょうじょ)()()がりました。天国(てんごく)から、下界(げかい)へきてはや三(ねん)月日(つきひ)がたったのであります。その(あいだ)にいろいろの人間(にんげん)生活(せいかつ)()れてみました。しかし、いまやふるさとに(かえ)るときがきたのであります。
 (まち)人々(ひとびと)は、不思議(ふしぎ)景色(けしき)()えなくなると、(いえ)(ほう)(かえ)りましたが、少女(しょうじょ)だけは、(いわ)(うえ)()って、(おき)(ほう)をいっしんに(のぞ)んでいました。そのうちに、一そうの(あか)(ふね)が、こちらをさしてこいできたのです。少女(しょうじょ)(むか)えにきたのでした。少女(しょうじょ)は、それに()ると、ふたたび天国(てんごく)をさして()りました。このやさしい天使(てんし)は、永久(えいきゅう)に、この下界(げかい)(わか)れを()げたのでした。
 天国(てんごく)には、やさしい天使(てんし)のお(かあ)さんが、()()(かえ)るのを()っていられました。三(ねん)(あいだ)下界(げかい)(くる)しんできた子供(こども)に、なんの()わりもなければいいがと心配(しんぱい)していられました。(ちい)さな天使(てんし)無事(ぶじ)に、ふたたびなつかしいお(かあ)さんを()ることができました。お(かあ)さんは、やはり、(こころ)(うつく)しい、(けが)れない()()であるとお()りなさると、ほんとうにお(よろこ)びになりました。
 (あね)天使(てんし)も、(おとうと)天使(てんし)も、みんなが下界(げかい)()(さま)()ろうと、このやさしい天使(てんし)()(かこ)んでお(はなし)(うかが)いました。(ちい)さなやさしい天使(てんし)は、下界(げかい)()たことと()ったことを(かた)りました。そして、正直(しょうじき)な、(あわ)れな(ひと)たちに、幸福(こうふく)(あた)えてやりたいと(こた)えたのであります。

――一九二四・一〇作――

 

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