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雪の降った日(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网

时间: 2024-10-24    作者: destoon    进入日语论坛
核心提示:雪の降った日小川未明雪ゆきが降ふりそうな寒さむい空合そらあいでした。日ひも射ささなければ、風かぜも吹ふかずに、灰色はいい
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雪の降った日

小川未明


 

雪ゆきが降ふりそうな寒さむい空合そらあいでした。日ひも射ささなければ、風かぜも吹ふかずに、灰色はいいろの雲くもが、林はやしの上うえにじっとしていました。葉はのついていないけやきの細ほそい枝えだが煙けむって見みえるので、雲くもと木きの区別くべつがちょっとわからないのでありました。
「泣なき出だしそうな空そらね。」と、かよ子こちゃんがいいました。
「ほんとうだわ。私わたし、こんな日ひがきらいよ。」と、ふところ手でをした竹子たけこさんも、いいました。男おとこの子こたちとはなれて、二人ふたりは、並ならんで空そらをながめていました。
「もっとなにか持もっておいでよ。火ひがなくなってしまうじゃないか。」
重しげちゃんの兄にいさんが、棒ぼうの先さきで、たき火びをつついていました。青あおい煙けむりが自分じぶんの方ほうへ流ながれるので、顔かおをしかめています。
年としちゃんは、走はしっていって、どこからか米俵こめだわらの空あいたのを下さげてきました。原はらに捨すててあったとみえて、俵たわらは霜しもでぬれていました。
「待まった、待まった。そんなのを入いれると、すぐ火ひが消きえてしまう。よくここで、乾かわかしてからでないとな。」と、ブリキ屋やのおじいさんがいいました。おじいさんは、自分じぶんで木きくずを拾ひろってきました。このあいだまで大工だいくたちが、ここで他所よそへ建たてる家いえの材木ざいもくを切きり込こんでいたのでした。ここは、町裏まちうらの原はらっぱであります。
まだ、お正月しょうがつなので、子供こどもたちは、ここへきて、たこを上あげたり、羽根はねをついたりして遊あそんでいました。
「ごらんよ、女おんながあんなことをしている。乞食こじきなんだね。」と、先さきに気きのついた年としちゃんが、いったので、たき火びにあたっているものが、みんなその方ほうを向むきました。一人ひとりの女おんなが、長ながいはしのようなもので、ごみ捨すて場ばをかき返かえして、落おちている菜なっ葉ぱや、新聞紙しんぶんしのようなものを地ちの上うえへひろげて、撰えり分わけていました。
「ああ、乞食こじきだね。」と、義よしちゃんが、いいました。
「いや、乞食こじきじゃない。あちらに車くるまが置おいてある。」と、おじいさんが、いいました。なるほど、手車てぐるまが置おいてあって、その車くるまの上うえにかごが乗のっていました。
「なんなの、おじいさん。」
「そうだな。あれは、貧乏びんぼうのくず屋やさんだ。」
年としちゃんは、車くるまのそばに五つか六つの男おとこの子こが、ぼんやりと立たっているのを見みました。その子供こどもは、くつ下したもはかずに、ぼろぐつをはいていました。そして、母親ははおやのところへはいこうとせずに、空そらに舞まっていたとびを見みているようであります。
「なにをさがしているんだろうか。」
「あれは、紙かみや、金かなくずや、こわれたびんのようなものを撰えり分わけているのさ。」
「あんな菜なっ葉ぱも、持もっていくのかしらん。」
「きっと、家いえへ持もっていって食たべるんだよ。」
「汚きたないなあ。」
「おじいさん、あんなごみなんかお金かねになるの。」と、年としちゃんが、ききました。
「いま、鉄てつくずでも、紙かみくずでも、値ねになるのだよ。あの紙かみは、またすき直なおして、おまえたちの使つかっているような鼻紙はながみや、もっとりっぱな紙かみになるのだし、鉄てつくずは、溶とかして、またいい鉄てつになるのだ。」と、おじいさんは、答こたえました。
重しげちゃんは、石いしを拾ひろって、女おんなの方ほうへ向むかって投なげようとしたのを、兄にいさんが、
「およしよ。そんなことをして、あぶないじゃないか。」といって、しかりました。
「ねえ、おじいさん、あんなくず屋やが、くつなんかをかっぱらうのだろう。人ひとが見みていないとねえ。」と、重しげちゃんがいいました。
「そういうことをする悪わるいものもいるが、そんなことをしない、いい人ひともたくさんある。」と、おじいさんは、さっきのぬれた俵たわらが、もう燃もえそうになったので、お話はなしよりもそのほうに気きを取とられていました。俵たわらが燃もえはじめると、おじいさんは脊中せなかをあたためたり、前まえの方ほうをあぶったり、体からだをぐるぐるといろいろにまわして、すこしでもよく暖あたたまろうとしていました。
「あんな菜なっ葉ぱをみんなかごの中なかへ入いれてしまったよ。きっと、家いえへいって洗あらって食たべるのだね。」
年としちゃんは、そんな生活せいかつをするものをさげすむようにいいました。小ちいさな子供こどもは、母親ははおやが、車くるまのところへもどってきたので、喜よろこんで飛とび上あがっていました。年としちゃんは、きっと子供こどもが、おまえはここに待まっておいでといわれたので、母親ははおやのそばへいけずに長ながい間あいだ、車くるまのあるところに立たたされていたのだと思おもいました。
「そうすると、かわいそうだな。」と、心こころの中なかで、思おもっていると、
「おまえたちは、みんな、まだ困こまった人ひとのことは、わからないだろうからな。」と、おじいさんが、いいました。
「雪ゆきや、こんこん、あられや、こんこん、降ふっておくれ。」
「雪ゆきが降ふってきたわ。」
かよ子こちゃんと、竹子たけこさんが、かけ出だしました。
「さあ、お家うちへ入はいろう。」と、おじいさんが、まずたき火びのそばからはなれると、重しげちゃんの兄にいさんが、つづいて去さり、みんながばらばらになって、お家うちの方ほうへ走はしり出だしました。はや、原はらっぱの上うえは白しろくなっていました。
年としちゃんは、晩ばんに、お母かあさんや、お姉ねえさんと、かるたをとっていました。
「きよがいると、おもしろいのだがなあ。」と、思おもいました。女中じょちゅうのきよは、母親ははおやが病気びょうきで田舎いなかへ帰かえったのです。
「お母かあさん、きよは、いつくるの?」
「母親ははおやがよくならなければわかりませんね。あの子こも、かわいそうです。いろいろ心配しんぱいして。」と、お母かあさんは、おっしゃいました。
このあいだは、弟おとうとに、送おくってやる為替かわせを手紙てがみといっしょに落おとしたのです。その後ご、母親ははおやが病気びょうきという知しらせがきたので、きよは、驚おどろいて田舎いなかへたったのでした。
しかし、こちらへきてから二年ねんの間あいだに、自分じぶんの力ちからでこしらえた着物きものや、羽織はおりをきて、きちんとして帰かえっていくときのようすは、はじめて田舎いなかから、行李こうりを負おってきたときの姿すがたとは、まったく別人べつじんのようでありましたので、
「どこのお嬢じょうさんかと思おもわれますよ。」と、お母かあさんが、からかいなさると、きよは、さすがに顔かおを赤あかくしましたが、それでも、うれしそうでありました。
「お母かあさん、おめかしをしては、いけませんねえ。」と、そのとき、年としちゃんは、いったのです。すると、お母かあさんは、
「いいえ、きよは、よく勤つとめて、お父とうさんにも、お金かねを送おくっていますし、なかなか感心かんしんな子こですよ。自分じぶんの力ちからでみなりをつくることは、わるいことではありません。」
また、きよに向むかっては、
「よく、おっかさんの看病かんびょうをしておあげなさい。」と、おっしゃいました。
夜行やこうでたった、きよからは、着つくとすぐに手紙てがみがまいりました。
「母ははの病気びょうきは、たいしたことがありませんからご安心あんしんください。早はやく帰かえりたいと思おもっています。そのときは、坊ぼっちゃんに、弟おとうとが秋あきのころ、山やまで拾ひろったしばぐりをもってまいります。」と、書かいてありました。
かるたの後あとで、お母かあさんは、おしるこをこしらえてくださいました。
「きよが帰かえるころには、もうおもちが、なくなってしまいますね。」と、お姉ねえさんが、いいました。
「きよに、おしるこを食たべさせてやりたいな。」と、年としちゃんがいいました。
これをおききなさると、お母かあさんは、二人ふたりの子供こどもが、ほかの人ひとにもやさしいのを、さもお喜よろこびなされるように、子供こどもらの顔かおを見みていらっしゃいましたが、
「きよは、田舎いなかで、おもちをたくさん食たべてきますよ。」と、おっしゃいました。
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