朝鮮への海上交通の要衝「ゆき」の島
長崎県壱岐市にある「壱岐島」。島の周囲には、五つの有人島と一六の無人島が存在し
ている。『古事記』の国生み神話の「伊伎嶋」、またの名を「天あめ比ひ登と都つ柱はし
らの神の島」という。
古くから、対馬島とともに日本と朝鮮のあいだの海上交通の要衝として重視されてき
た。
別名は「天一つ柱」で、海中の孤島の神格化ともされている。
古書の表記では、「伊伎」「伊吉」「由ゆ吉き能の之し麻ま」「壱岐」「壱伎」など、
かなりバラバラだ。
読み方も一定せずに「いき」「ゆき」に分かれていた。
また、鎌倉期にも「ゆき対馬」と記され、豊臣秀吉の書状にも「ゆき」とあるらしい。
「ゆきのしま」と呼ばれることが多かったのは、海上交通の要となっていたことなどによ
り、「往きの島」という意味があるからではないかという説が有力だ。
なお、この他にもかなりたくさんの説があって、『古事記』の「伊伎」から神かん嘗な
めの斎いも居いを語源とするという説や、柱材を「支き」と数えることから島の形を一本
の丸太に見立てたとする説、そして、このあたりの荒い潮の泡ほう沫まつが「雪」のよう
に見えたからという説まで、じつにバラエティに富んでいる。