入間(いるま) (埼玉県)
太陽に化けた魔物を矢で射た天子様の「射留魔伝説」
埼玉県の「入間郡」「入間川」「入間」という地名には、魔物にまつわる伝説が関わっている。
ある日、突然、空に太陽が二つ昇り、昼となく夜となく世界を照らしはじめた。
草木が枯れ、田畑の作物もとれなくなって人々が困っていると、天子様(人々を治める者)が「天に太陽が二つあるわけはない。どちらかが魔物なのだから、誰か、この矢で退治してしまえ」と言った。
そこで、弓の名手が、太陽を追って武蔵国までやってきた。ちょうど見晴らしのよい入間川の小高い丘から、怪しいと思うほうの太陽を見事射落とした。魔物はたちまち光を失い、黒い雲とともに三本足の烏になって落ちてきたという。
そして、この魔物が落ちたところがある真東小学校のあたりを「天てん倒とう山」、魔物の血で川ができて「逆さかさ川」、太陽を討ったことから「日につ討とう」(川越市日東)など、いくつかの地名もできた。
この伝説は、魔物を矢で射落とすことで終わるので、このあたり一帯を「射留魔」(現在の表記は入間)と呼ぶようになったという。