ちゃんちゃら
ジャラジャラ
ジャンジャン
軽快で明るくてうるさい私の性格のような音楽が聴こえてきた。
町外れにある田舎のパチンコ屋も、
都会の真ん中にあるそれも切り取ったように同じ、
すてきにうるさい。
軍艦マーチを聞くと、わたしは父のことを考える。
ギャンブル好きで、競艇で家を失くした爺さんとは違って、
私の父はまったくギャンブルをしない。
多趣味でそこまで手が回らない、そんな所だろう。
父として100点。
友達にも自慢で何歳になっても、かっこよくなる、私の父。
そんな父に8歳の私が放った一言。
「なんでお父さんいるのさぁ」
それは私の誕生会。友達もきて、なんだか浮ついていた私。
父も家にいた。
口が勝手に言ってしまった。
気づいたら誕生会も終わった夕方。
父の姿はどこにもない。
少しづづ心配になった私は母に聞く。
どうやら普段はしないパチンコなぞに行ってしまったらしい。
一向に帰ってこない。
父娘の立場が逆転して父の帰りを家で待つ私。
なんだか一生帰ってこないような気がしてしまうくらい。
少し遅くなって父が玄関から入ってくる。
「どこ行ってたのよ!」
娘がまるで大人のような言い方で、
真ん丸の顔に三角の目をのっけてそんなことを言うので父は笑っていた。
ちゃんちゃん
ちゃんちゃら
ジャラジャラ
ジャンジャン
あの音を聞くと、胸がきゅっとなる。
お父さん、あの時はごめんね。
ちゃんちゃん
ちゃんちゃら
ジャラジャラ
ジャンジャン